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江戸の侍、団子屋とともに異世界を救う  作者: ハルあき
一章 江戸転移
2/6

はじまりはじまり

豊臣秀吉の死後、徳川家康が勢力をのばした。


徳川家康は、領地を出身地である東海地方から関東地方に移り、徳川家康は江戸を拠点にしていた。


豊臣側の石田三成などは、豊臣秀頼の政権を守ろうとして、三成と家康が対立した。現代の岐阜で1600年に起こった関ヶ原の戦いで、徳川家康は勝利し、1603年に朝廷により徳川家康が征夷大将軍に任命され、江戸幕府を開いた。




「あー、暇でしょうがねぇ」

「そんなこと言う前に仕事見つけろ」


時は江戸時代。

争いは過ぎ去り、平穏な日々。

庶民は各々の思う幸せな日々を過ごしていた。


陽色ヒイロ程の刀の腕がありゃあ、

仕事ぐらい見つかりそうなもんなのによぉ」

「バカ言うな、俺は役人には向いてねぇ」


『陽色』と呼ばれた男の横には一本の刀が店のカウンターに掛けるようにおいてある。

丁寧に磨かれているようだが、

かなり年季が入っているのか、傷が少し目立つ。


男は仕事をして居ないにもかかわらず、

男の手にはだんごが握られている。

赤い髪はボサボサに伸びきっていて、来ている服もボロボロだ。

金がないってひとめでわかる。

だが彼の手には団子だ。


「金は払えや」

「悪りぃな永助エイスケ、そりゃ無理」


ここはとある茶屋。

永助と呼ばれた男が経営している茶屋だ。

城へと続く山道の途中にある。

商人などがよく通るので

そこそこ繁盛しているようだ。

しかし現在店に客はおらずとても静かだ。


永助はまげにねじり鉢巻といういかにも、って感じの男だ。


「今日は客が少ねぇな」

「余計なお世話でえ、金払う客が来て欲しいもんだね!」


いつか払うさと小言をつぶやく。


その静かな空間にカランカランという下駄の音が。


「あ、陽色さん!今日も来てるんですね!」

「お?雪ちゃんか、元気してるかい?」

「ええ、とっても元気です!」


歳は10代前半ぐらいだろうか。

後ろでくくった長い黒髪を揺らしながら暖簾のれんをくぐり店内へ入ってくる。

雪と呼ばれた少女は手をグーにし

自分の元気さをアピールしている。


「あんま俺の妹にちょっかいかけんでくれや、

あんたの病気が移ったらどうすんだい」

「無職は病気じゃないんだよ」

「えっ、そうなんですか?」

「雪ちゃん、永助に何教えられたんだ.....」


陽色は頭を抱えうなだれた。

雪は本当にそう思っていたのか、

頭を傾げ、疑問に思っているようだ。


「そろそろ行くとするかい」

「え!どこ行くんですか?仕事もしてないのに」

「痛いとこ突くなぁ雪ちゃん.....」

「陽色、金は!?」

「あ、悪りぃな」


刀を持ち扉を開け、

そのまま逃げるようにして去って行った。


「おい!バカヤロウ!」

「先払いにしなよ」


深いため息をつき、

雪の言った正論に頭を抱えながら俯いた。

雪は陽色の居た席の片づけをしている。


その瞬間。






「あぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」




突然店の外から声が聞こえる。

さっき外に出た陽色の声だろうか。

とても正気とは思えない叫び声だ。


「人斬りにでもあったか?」

「お兄ちゃん冗談言ってる場合!?行くよ!」


雪は手に待っていたふきんを投げ捨て

店の扉を開け出ていった。






「あぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」




次に聞こえたのは雪の叫び声。


「ふざけてんだったらやめとけよぉ」


永助は食器を洗っていた手を止め、

ふきんで手を拭きながら裏口から出る。

扉に手をかけ目の前にはさっき店を出た2人が。


「お前さんら何叫んでんだい?人斬りか?」


口を開け呆然としていた2人と同じ方向へ向かう。


「あぶね!崖じゃあねぇか!おーい?どこみてんでい?」


顔の前で手を振るが反応しない。


「一体何を見たんでい?」


そこには。









「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんじゃぁぁぁこりゃぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」





3人が驚くのも無理はない。


空を覆い隠せるのではないかという巨大な翼。



森を焼き尽くさんばかりに火を吐く大きな口。



全てを噛み砕く、人一人分よりもおおきい牙。



踏み潰したモノを無へと還す、大木のような足。



空間を切り裂き、天を貫かんばかりの巨大な爪。



受ける全てを跳ね返し、聖剣をも通さぬ鉄の鱗。



全てを薙ぎ払い、全てを叩き潰す、巨大な尻尾。



紅く怪しく輝き、見るものを恐怖へと堕とす瞳。



その巨体の放つ咆哮は空間を震わす。




それはドラゴン


かつての中国から伝わった龍とは違い、

蛇のような見た目ではない。

それは西洋の竜であり、

4つの足を持っている。

畏怖の象徴でありながら、

人間の誇りの象徴でもあるその姿。


しかしその巨大な生物は無意味に叫んでいるわけではない。目の前には5人の人間が。

大きさを比べるとまるで豆粒のようにも感じる。



「おいおいおい!これは一体どうなってんだ!」

「ちょっと!お兄!どうなってんの!」

「オイラに聞くな!陽色!どうなったんでい!」

「俺にも聞くなよ!雪ちゃん!?」

「えぇ!?結局!?」



テンパった3人はぐるぐると同じ会話を繰り返す。

陽色は竜を見て驚いていたかと思うと、竜の前で倒れている3人の人間と今にも倒れそうな2人を見る。

彼の性格のせいだろう。

いてもたってもいられず、その歩を進める。


「それよりあの5人だ!ちょっと行ってくる!」

「おい!陽色!どうすんでい!」

「陽色さん!?」


藁の草履をすり減らしながら崖を滑り降りる。

風に揺られ赤い髪が流れる。

5人に近づいた時、陽色のみに声が届いた。


「アイラ!お前だけでも逃げろ!」

「いやよ!最後まで僧侶としての役目を果たすわ!」


瀕死の状況の中イチャイチャする2人に竜の鉤爪が襲う。

剣士は僧侶に向かって逃げろと叫ぶ。

僧侶は剣士に向かって一緒に死ぬと叫ぶ。

2人は愛を叫びあっていた。




いや2人とも逃げろよ。

そう誰もが思っていた時。



そこに現れるは1人の侍。


「あんたら2人とも逃げろい!」


人々の声を代弁する侍が現れた。

腰から刀を抜く。


陽の光に照らされた刀は剣士のそれの何倍よりも輝きが強く、刃も鋭い。

その刀が太陽を完全に写し、輝きを放つ。


侍は2人の前に立ち、頭上に刀を構えた。

竜の鉤爪を受けてもその刀はひび1つ入ることはなかった。




「グォォォォォォァァァァォォ!!!!!!」

「てやんでぇい!!!!」


刀ではなく地面にひびが入る。

衝撃で地面が揺れる。

普通の人間では耐えられないであろうその一撃に侍は刀一本で耐えた。

腕の血管が浮き出る。

今にもはち切れそうだ。

剣士と僧侶はそれをただただ見ていることしかできなかった。


お互いの力が互角にぶつかり合っていた。

光と闇。調和することはない秩序による均衡。

お互いに覆ることのない状況。




しかし。




その均衡を崩したのは侍の方だった。





「ウォォォオォオォラァァァァ!!!!」





竜の咆哮のように侍は吼えた。

まるで人のものとは思えないほど巨大な咆哮は空間を揺らし、木々が震え、砂埃が舞う。


侍が刀に力を込めると竜の爪を弾いた。

それを受けは後ろへ退く。


ありえない、そう言うように竜が巨大な咆哮で空間を揺らす。

怒りに身を任せた竜の口からは炎が漏れる。


侍の後ろの2人は耳を塞ぐが侍は違う。



ニヤリ。そう笑うだけだった。



「いくぞ!薙無義なぎなぎ!」


侍はその手に持つ刀の名前を叫ぶ。

刀はその輝きを一層増した。


前進。そして跳躍。

一瞬にして竜の目前まで間合いを詰める。

だが竜は怯まない。

今まで幾千という人間を打ち倒してきた竜にとって彼のように自分を倒すあと一歩というところまできたものは何人もいたからだ。


だが所詮あと一歩。


それら全ては無意味に終わる。


この竜の息吹によって。


彼はその巨大な口に炎が集う。

空間が燃えて、陽炎が揺れる。



全てを焼き尽くさんとするその火炎を。




刀は全て吸収する。




竜の息吹は全て無意味で。

刀にその力を奪い取られる。

竜の会心の一撃は放つ前に終わった。


「お天道様が許しても!この俺!陽色様が許さねぇ!お天道様から授かったこの刀!薙無義で!手前の命!頂戴する!」


侍の目が太陽のように煌めく。


刀が赤い光を放つ。

竜の炎を完全に内側へと吸収した。

今にも溢れんと、赤く、メラメラと輝く。

その刃は竜の体を一刀両断する。


真っ二つに割れた竜の巨体が陽炎とともに揺れる。


寂しげな竜の咆哮が空間にこだました。





「あんたら大丈夫かい?」


侍は剣士に話しかける。


「あんた何モンなんだ」


「俺かい?俺は人呼んで」



待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い、侍は剣士に名乗る。




「俺は江戸の侍!人呼んで紅蓮の陽色様だ!」



「ヒ、ヒーロー......!英雄だ......!」




ヒーロー。その名前にふさわしい男は。

2人に向かって再びニヤリと笑いかけた。






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