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童話国物語  作者: 馬論
24/26

白雪姫

 僕の意識は、白雪姫の世界を漂っていた。


この童話は、白雪姫の美しさに嫉妬しっとした王妃が、毒リンゴで殺す話だ。




(ブスをネタにしています)

昔ある王国に、大変美しいお城が有った。

城壁は雪のように純白で、尖塔の屋根はまるで赤い血のような色をしていた。


この美しいお城には、若い王妃様が住んでいらして、大広間に有る魔法の鏡に向かって、質問を投げかけた。


 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番美しくないのはだあれ?」

「世界で一番ブスなのは王妃様です」

「キーッ、美しくないと言いなさい」

王妃様は側に有った花瓶を魔法の鏡向かって投げつけましたが、実体がない魔法で出来ているので花瓶は鏡を通り抜けて、壁に当たって砕けてしまいました。


 王妃様はまだ三十前ですが、生まれた時から老け顔で、皮膚もたるみ気味で、肌に若さの弾力が少しも有りません。

その為、幾ら化粧で誤魔化そうとしても、隠しきれないのでした。


そんな王妃様も、やがて身籠みごもり、ひとりの女の子が生まれて来ます。

 その子は美しい雪のようなお城から、白雪姫と名づけられましたが、王妃様と似た老け顔で、やはり肌に弾力が有りません。




 白雪姫が大きく成長した時、僕は白雪姫へと変身していた。

〈早くも女主人公に変身か、でもこの展開は魔王様、チトひどくないか〉




王妃様は大広間に有る魔法の鏡に向かって、質問を投げかけました。


 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番美しくないのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」

 この魔法の鏡の返事に、王妃様は狂気して喜びました。

 

早速、白雪姫を大広間に呼びつけて、魔法の鏡に質問しました。

 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番ブスなのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」

 

 王妃様は白雪姫を指差して、大きな口を開けて笑っています。

よほど嬉しいのか、目には涙まで溜まっていました。




この魔法の鏡の行事が、三日程続いた後、僕はこのお城を出て行く事にした。

 多分たぶんそうしないと話が進まず、きっと魔法の鏡の行事が続く事に成ると思う。


 白雪姫が城を逃げ出した事を知った王妃様は、家来に捕まえて来るように命じます。

「私よりブスな女を、このまま逃がしてたまるものですか」 


 家来は白雪姫を森の中で見つけましたが、あまりにもブスなので、お城に連れて帰るよりはこの森で暮らす方が良いだろうと、王妃様の心も知らず、逃がしてしまいます。


 家来は白雪姫が森で死んでいたと、嘘の報告をしました。

 それを聞いた王妃様の悲しみが、止まりません。

 「なんで私を残して死んでしまったの、私の白雪姫。

あなたは私の希望だったのに、とてもつらくて悲しいわ」




 僕は森をうろつき周り、やっと小人が住む洞窟を見つけた。

中へと入って行くと、年老いた7人の小人がベッドに横たわっていた。

 「こりゃ驚いた、えらいベッピンさんじゃ」 「そうバッテン、美しかオナゴじゃ」

「そうがすな、ワイも賛成するがす」

 「ほんに、ほんに、よかよか」

「だべー、驚きだべー」

「ホンマかいな、そうかいな、ええオンナ」

「ずらー、ずらー」


白雪姫に変身した僕は、ナゼか美人として小人たちにモテていた。

話を聞いてみると、皆がまだ二十歳前だと云う。

どうやら小人たちの美人の基準が、僕たちとは全く違うようだった。


僕はこの洞窟で、7人の小人たちと一緒に暮らして行く事に成った。

小人たちが仕事に出かけた後に、掃除、洗濯、料理までする事になったのだが、中学生だった僕には、どれも大した経験がない。

そのわずかな経験も、掃除機や洗濯機を使っての話だからあまり意味はない気がする。


洞窟部屋に有ったほうきを持って試しにき出して見たのだが、ほこりが部屋に充満してき込む結果と成っただけだった。


洗濯も試しに少しの洗い物を大きなおけに入れて、近くの井戸へ持って行ったのだが、水をみ上げるだけで、重労働だった。

さらに手揉てもみ洗いもしてみたが、これも凄く力がいる大変な仕事だった。

もしこれが冬の冷たい水ならと、考えただけでもゾッとする。


僕は料理をするまでもなく『昔の女の人は大変だったんだな』と実感していたが、その認識さえも甘かった事を、火起こしで経験する事と成る。


慣れないナイフで野菜の皮を剥き、適当な大きさに切って鍋に入れ、薪にイザ火をけようとして僕は固まってしまった。

「マッチがない」


どこを探してもマッチは見つからなかった。

やはり火打石で火を点けるようだ。

僕は話では知っていたが、実際にはナゼこんな物で火が点くのか、と疑問に思っていた人間だ。

そんな人間に、本当に火が起こせるのだろうか?




 小人たちが洞窟へと帰って来ると、井戸近くの木の枝に何かの布が引っ掛かっていて、その布から水がみ出してポタリポタリと下に落ちていた。


「こりゃ、儂のパンツかいのう」

 「だべー、パンツが泣いているべ」

小人たちが皆で笑う。


洞窟内へ入って行くと、疲れてベッドで寝てしまった白雪姫が居た。

「こりゃまた、なんじゃらホイ」

「なんか前より汚れておらんかいの」

「料理出来てねえずらー」

「ええオンナに無理ゆうたらアカン」


どうやら小人たちにとっての美人の白雪姫は、多少の事は許して貰えるようだ。

美人はやはり、それだけで得するようだ。




ある日、王妃様が大広間の魔法の鏡の前に立って居ました。

白雪姫が死んだと聞いてから、質問するのをずっと止めていたのです。


 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番美しくないのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」

 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番ブスなのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」


王妃様は白雪姫が死んでいないと知って、大喜びで大広間を走り回りました。

 家来を3人呼んで、白雪姫がどこに居るか森の中を探させました。

「王妃様、白雪姫を見つけました」

「どこに居たの?」

「7人の小人が住む洞窟に、一緒に暮らしております」


王妃様は老婆に変装しましたが、見た目はあまり変わりませんでした。

黒いマントに包まれ、白雪姫の様子ようすを探りに森の洞窟へと出かけて行きました。


老婆が洞窟の前に有る草むらの中に隠れて様子をうかがうと、白雪姫が7人の小人と楽しそうに踊っています。

しかも驚いた事に小人たちが、白雪姫の事を世界一の『美人だ』『ベッピンだべ』『ええオンナや』と盛んに褒めまくっているのです。




「魔法の鏡に『世界一のブス』と云われ続け、白雪姫が生まれて初めて私は『世界一のブス』と云われなく成ったのに、なんでアナタは小人たちに『世界一の美人』と呼ばれているの?

それじゃ私があんまりじゃないの」



 +  -  ×  ÷  =  ¥



しばらくして老婆に変装した王妃が、毒リンゴを持って僕の前に現れた。

〈王妃様、バレバレなんですが〉


老婆は何とか僕に毒リンゴを食べさそうと一生懸命に成っている。

「このリンゴはね、特別に取り寄せた物なんだよ。

美味しいよ、ひと口で良いんだよ食べてごらん」

「お婆さんが先に食べてみて」

「わ、わたしゃ歯が悪いんだよ。

リンゴをかじると血が出てしまうんだよ」


僕が毒リンゴを持つお婆さんの手を顔の方へと近付けると、お婆さんはイヤイヤをして顔をそむけている。


そこへ小人たちが帰って来た。

ナゼだか一人多く、8人も居る。

「白雪姫、ワイらの国の王子様を連れて来たで。

ワイらの話を聞いて、結婚したいそうや」

 「今私はいそがしいんです」

 「誰か助けて、この娘が無理矢理ワタシにリンゴを食べさせようとするんです」


 「それなら、ボクが食べるダス」

 僕が止める間もなく、小人の王子が毒リンゴに齧りつき、口から泡を吹いてその場に倒れ込んでしまった。


 7人の小人たちが慌て出してオタオタしているが、老婆に変装していた王妃様はスカートの裾を手でたくし上げ、全速力で森から逃げ出していた。

〈王妃様の逃げ足が異常に速いな〉


 僕は変な所に感心していたが、でもこの話はこれで良いのだろうか?

まあ童話の中にはよく分からない話も多いし、別にかまわないか。


不細工ぶさいくな小人の王子様が、毒リンゴを食べて死にました、ハイ終わり。


何かここで話は終わりそうもないな。

「キスじゃー、白雪姫のキスでワシらの王子様が生き返るんじゃ」

 「そうでんな、ここはキスしかおまへん」

「だべー、だべー」


僕が想像したくなかった展開に、話が転がって進んで行く。

〈キス、それだけはないな〉


僕は不細工な王子の両足を持つと、そのまま持ち上げて上下に揺らした。

すると王子の口から、ポロリと毒リンゴの欠片が落ちて来た。

どうやら毒リンゴの欠片がのどに引っ掛かって、気を失っていたようだ。


「ワイも逆さまが、ええな」

「んだ、んだ」

変な声が聞こえて来るが無視する。


王子は何事もなかったように、あらためて僕に求婚して来た。

 「急にそんな話をされても困ります。

考えてみますので、また1ヶ月後に来てください」

 「そうダスな、いきなりな話で、すまんダス。

そう云う事なら、また1ヶ月後に改めて求婚する事にするダス」


 不細工な王子が白ロバに乗って、名残惜なごりおしそうに自分の国へと帰って行った。

〈1ヶ月もあれば、この話も終わっているだろう。

もし駄目でも、どこかに逃げる事が出来ると思う〉




 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番美しくないのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」

 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番ブスなのは誰?」

「世界で一番ブスなのは白雪姫です」


 「鏡よ鏡、鏡さん。この世で一番のみにくい女は誰?」

「世界で一番醜いのは王妃様です」

 「なんでよ!」


 また魔法の鏡に向って、花瓶が飛びました。


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