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童話国物語  作者: 馬論
23/26

シンデレラ

 僕の意識が、シンデレラの世界を漂う。


この童話は、シンデレラが魔法で王子様と出会い、ガラスの靴で王子と結ばれる話だ。




 昔、お金持ちの屋敷にシンデレラと云う名の娘が住んでいました。


お母さんを病気で亡くしたシンデレラの父は、新しいお母さんと結婚しました。

その新しいお母さんには、二人の娘が居たのです。


やがてその父も、病気で亡くなってしまいました。

シンデレラは意地の悪い義母と二人の義姉によって、狭い薄汚れた地下室へと追いやられてしまいます。


父の死後、毎日朝からひとりで屋敷中を掃除して周り、井戸から水をんで大きなタライで洗濯をし、庭に紐で作った干場に洗濯物を広げて、次から次へと干して行きます。


それだけでは有りません。市場に買い物にも出かけ、美味おいしい食事の用意をしなければ成りません。

少しでも出す食事が不味まずいと、シンデレラの食事が無くなってしまうからです。


さらに義母と二人の義姉は、事ある毎にシンデレラに用事を言いつけ、少しでも不満が有ると文句を言って、シンデレラに酷い仕打ちをして来ます。


ある日、お城で王子様の舞踏会が、開かれる事に成りました。

この舞踏会は王子様のお相手を探す為のものでも有り、国中の年頃の若い娘は必ず出席する事に成っていました。


義母と二人の義姉は、シンデレラに色々言いつけて、舞踏会に出る為の奇麗なドレスに着替えて、さらに着飾って行きます。

やがて鏡の前で満足すると、シンデレラをひとり残して馬車でお城へと出掛けて行きました。


勿論、シンデレラも若い年頃の娘でした。

王子様のお城の舞踏会へ行く必要が有りましたが、シンデレラが着ている服は、ぎだらけで灰を被った古いボロ着でした。


これでは、いくら何でもお城の舞踏会へは、行く事がかないません。夢のまた夢です。

シンデレラは屋敷の畑で、涙を流して悲しんでいました。


そこに一人の太ったオバさんが現れました。

「おや、どうしてこんな所で泣いているんだい?

アナタはお城の舞踏会へは、行かないのかい?」

「私も行きたいんだけど、この格好かっこうじゃきっとお城に入れてもらえないわ」

「なんだ、そんな事かい。

じゃあ、ワタシが魔法で変身させてあげるよ」


オバさんは魔法使いでした。

魔法の杖を取り出すと、呪文を唱えます。

「畑のカボチャよ、黄金の馬車に成れ」


魔法の杖を振ると、シンデレラの前にカボチャ型の黄金の馬車が出現しました。

オバさんが魔法の杖を次々に振り回すと、畑に居た白ネズミが馬車をく白馬に、灰色ネズミが従者に変身したのです。


魔法使いのオバさんはシンデレラを呼ぶと、魔法で古いボロ着を美しく光輝くドレスへと変え、いてるボロ靴もガラスの靴へと変えたのです。

「いいかい、よくお聞きシンデレラ。

この魔法は12時に成ったら解けてしまうからね、それまでに屋敷へ帰るんだよ。

決して忘れるでないよ」

「ありがとう、魔法使いのオバさん」




 シンデレラが黄金の馬車に乗り込むと、舗装された道を白馬が走って、王子様が居るお城へと運んで呉れました。


お城の舞踏会では若い王子様が、大勢の年頃を迎えた娘たちに囲まれて、大騒ぎに成っています。

私こそが王子様に相応ふさわしいと、皆が必死に自分をアピールしています。

少し離れた奥では、娘の親たちも必死で応援していました。


そこへシンデレラが舞踏会場に姿を現しました。

音楽やおしゃべりでにぎわい華やかだった会場が、一瞬で沈黙の色に染められてしまいます。


会場に居る皆が、シンデレラの光輝くその美しい姿に見とれていたからです。

あの義母と二人の義姉も『まあ、どこの令嬢様でしょう』と感心しています。


この時王子様は、抜け目なく娘たちの囲いを上手く抜け出し、シンデレラの元へとやって来て言いました。

「どうかお嬢さん、ボクと一緒に踊ってください」


また音楽の演奏が始まると、王子様とシンデレラはずっと一緒に踊り続けていますが、やがて時計の針が12を指し『ボーン』と12時を知らせる鐘が鳴り響き始めました。


「まあ私、もう帰らなくては」

12時を知らせる鐘が鳴り終われば、シンデレラに掛っている素敵な魔法が全て解けてしまいます。


シンデレラが舞踏会場を、飛び出して行きました。

その逃げ足の早さに呆気あっけに取られたいた王子様も、その後を追って行きましたが、会場から出て見るともうシンデレラの姿がどこにも見えません。


王子様がよく見ると、舞踏会場前の長い階段に片方のガラスの靴が落ちていました。

名も知らないあの美しい娘を、探し出す手掛かりを王子様は見つけました。


王子様は家来たちに云いつけます。

「このガラスの靴を履ける、国に居る全ての娘たちを城に集めるのだ」


次の日、城から使いがやって来て、ガラスの靴を履ける娘が居ないか、家々を探して周っています。


シンデレラが居る屋敷にも勿論もちろんこの使いはやって来ましたが、シンデレラは義母と二人の義姉によって、地下室へと閉じ込められていました。


「私がこのガラスの靴の持ち主よ」

上の義姉がガラスの靴を履こうとしますが、右足が全く入りません。


「ほほほ、間違えてしまったわ。

これは私の左足のガラスの靴なのよ」

上の義姉が左足でまたガラスの靴を履こうとしますが、これも全く入りません。


試すガラスの靴は、右足用の物なのです。

今度は下の義姉がガラスの靴を履こうとしますが、右も左も全く足が入りません。

さらには関係のない義母までガラスの靴を履こうとしますが、全く無駄でした。


「もうこの屋敷に娘はいないのか?」

「ええ、娘はこの二人だけです」

義母がそう答えると、城からの使いはシンデレラを残して屋敷から出て行きました。


結局、国中を探してもこのガラスの靴を履ける娘はひとりも現れませんでした。

このガラスの靴は、大変小さかったからです。




しばらくして国中の若い娘たちに、奇妙な病気が流行り出しました。

なんと右足だけがドンドンと小さく成ってしまうのです。

 不思議な事にシンデレラの義母と二人の義姉だけは、両足とも小さく成ってしまいました。


そうです、あの小さなガラスの靴を履こうとした足だけが、この奇妙な病気に成るのでした。

こんな小さな足では、まともに歩く事も出来ません。


人々は、お城の舞踏会に現れたのは、美しい娘に化けた悪い魔女で、国の若い娘に呪いのガラス靴をワザと残したのだ、と『呪いのガラス靴』として噂していました。


それでお城の王子様は、仕方なく国から嫁を探すのを諦め、他国の娘と結婚する事にしたのです。


王子様の結婚話を聞いたシンデレラは嘆き悲しみました。

ナゼなら『呪いのガラス靴』は、シンデレラが掛けた呪だからです。


オバさんが掛けた魔法は、12時に全て解けてしまいます。

だからシンデレラが履くガラスの靴が、残るはずが有りません。


シンデレラは黄金の馬車でお城へ向う直前に、魔法使いのオバさんに背後から襲い掛かり、首を絞めて殺してしまったのです。

そして魔法の杖を使って死体を畑に埋めると、また魔法の杖を使って『呪いのガラス靴』を用意したのでした。




「母親が自分の子供の方を大切にするのは当たり前の話じゃない。

どうして父は、そんな当たり前の事も分からないの?

私が義母に仕掛けた毒まで、自分で飲んでしまって、どこまで間抜けで愚かな男なの。


それにあの王子もよ、私が地下室に逃れて全ての娘を『呪いのガラス靴』で結婚出来なくしたのに、肝心の私の事をろくに探しもせず、簡単に諦めてしまって、よその国の娘との結婚を決めてしまって……、どうして男ってこんなに愚かなのよ。

これじゃ、私があんまりじゃない」

 


 +  -  ×  ÷  =  ¥



僕はなんと、男に怒れるシンデレラ自身に変身していた。

 〈この話は、シンデレラの悪事がバレて、僕が酷い目に遭う展開なのか?〉


その展開は流石さすが不味まずいと思う。

僕は魔法の杖を掴むと、オバさんに変身して、夜の街へと出掛けて行った。

そして『呪いのガラス靴』で右足が小さく成ってしまった娘たちを、魔法の杖を使って元の右足へと戻して行く。


「わあ、私の右足が元に戻ったわ。

これでまた普通に歩く事が出来るわ」

娘たちの喜ぶ声で、街は溢れ返った。

やがてオバさんの僕は、全ての家々を巡り、ガラス靴の呪いを残らず解いて周った。

〈これで僕が酷い目に遭う事はないだろう〉


 最後に残るのは、義母と二人の義姉が居る屋敷だ。

この3人には、シンデレラの僕に意地悪をすると、また両足が小さく成って歩けなくなる、と云う条件付きで元へと戻したので、イジメはピタッとんでしまった。


僕はイジメが止んだ後でも、屋敷で掃除、洗濯、料理を独りで行っている。

魔法の杖が有るから楽々で出来るので、なんの問題もないからだ。


あの魔法使いのオバさんは、別の場所にお墓を作ってちゃんととむらった。


それにしても、この話に出て来るシンデレラは怖い女だった。

余程よほど、義母と二人の義姉にイジメられていて、それがつらかったのか?




確かにシンデレラが云うように、僕も男にバカな所が有るとは思うが、それは女の場合にも同様に云える事だと思う。

男と女で見る場所が違うし、当然価値観も考え方も異なる。


男の僕には、女の事はあまりよく分からないし、多分女にも男の事はあまりよく分からないと思う。

僕にはオバちゃんが信号を全く見もせずに、赤信号で道路を自転車で横断して行くその思考が、おそらく一生理解出来ないし、また理解したいとも少しも思わない。


男と女が夫婦に成って、この異なるバカさをカバーし合うのか、さらに加速させてバカを大きくして行くのか、これは難しい問題ではないのか?


中学生の僕には、この男女の話はまだちょっと早かったな。



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