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童話国物語  作者: 馬論
12/26

アラジンと魔法のランプ

 僕は今、アラジンと魔法のランプの世界の宙に居た。

この童話は、アラジンが指輪とランプの魔人によって出世する話だ。




昔、アラジンと云う名の怠け者の少年が、母と二人で一緒に住んでいました。

「アラジン、アンタ家でゴロゴロしていないで、外へ行って働きなさい」

「嫌だよ、俺は楽して暮らしたんだから、決して働かないよ」


アラジンは母親の目が届かない時には、家のお金を盗んだり、勝手に家の物を売ったりする最低の人間でした。


ある日、母が仕事で居ない時に、亡くなった父の知人が家にたずねて来ました。

「儂の仕事を手伝って呉れたら、金貨10枚だすぞ。

なあに誰にでも出来る簡単な仕事だ。

地面の穴倉から古いランプを取って来るだけで良いんだ」

「そんな楽な仕事で金貨10枚なら、俺がやるべき仕事だ」


アラジンは父の知人に連れられて、町外れの地下洞窟へとやって来ました。

「この洞窟の中に古いランプが有るから、それだけを持って帰って来るんだぞ。

この指輪を貸してやるから持って行け」

「ランプだけでいいのか?

他の物はらないのか?」

「ランプだけで良いから、早く行って来い。

いいか、開いた扉を出たら、もう二度と扉は開かないからな、注意して必ずランプを持って帰るんだぞ」


男はアラジンを地下洞窟の中へと押し込みました。

松明たいまつに火をつけ真暗な洞窟の中を歩いて行くと、洞窟の奥に不思議な絵が描かれた扉が有りました。


絵を良く見ると、大きな魔人の姿のようにも見えます。

アラジンが扉に手を掛けると、何をせずとも勝手に独りで扉が開いて行きす。


中へ入って行くと驚いた事に、財宝の山がいくつも現れました。

その中に確かにランプも有りましたが、男は『ランプだけで良い』と云ったのです。

と云う事は、他の物全てがアラジンの物だと云う事に成ります。


アラジンは自分が着ている服を脱ぐと、そこに宝物を詰め込み始めました。

ですが宝物が多すぎて、とても入り切りません。

「うーん、一度出てしまうと二度と開かないからな、どうすれば全部持って行けるんだ?」


男が地下洞窟の入口でアラジンの名を呼んでいますが、肝心のアラジンの耳にはその声が届いていません。

男は全然姿を現さないアラジンに腹を立て、魔法の呪文を唱えて、洞窟入口を堅い土で閉じてしまいました。


そんな事も知らずにアラジンは、ずっと宝物をどうやって持って帰るかで悩んでいました。

その内、松明の明かりがとぼしくなって来ました。

アラジンは仕方なく背中に宝物を詰めた服を背負い、両手に宝物を持って、口にはランプの取っ手を咥えて、残りの宝に未練を見せて扉をイヤイヤ出て来ました。


扉がまた勝手に閉まって行きました。

もう二度と開く事は有りません。

足で松明を蹴って洞窟の出口目指して歩いて行きますが、ナゼか出口が見つかりません。

 「おーい、誰か居ないのか?

おかしいな、確かここら辺だったと思ったんだが」


松明が燃えつきて、暗闇が辺りを支配して行きました。

 「誰かー、助けてくれよ。

もし戻れたら、ちゃんと真面目に働くからさ」

祈るつもりで両手を組み合わせた時に、指にはめた指輪が擦れました。

 突如洞窟内が明るく成って、指輪の魔人が目の前に現れました。

「誰だ、俺様を呼んだのは、呼ぶんじゃねえよ」

「助けてくれよ魔人さん」

「お前は誰だよ」

「俺は、お前のご主人さまだぞ」

「ふん、そんなのは俺様が認めねえ」

「認めなくて良いから、ここから出してくれよ」

「自分で出ろよ、他人の力を借りるな」


魔人が消えても、洞窟内はまだ明るく、下を見ると土を掘るツルハシが転がっていました。

アラジンは仕方なく、全ての宝物を下ろすと、ツルハシを持って自分で土を掘り始めました。


数時間も掛ってようやく外へ通じる穴が開いた時に、地面が急に揺れ出して地面が陥没かんぼつし始めました。

アラジンは急いで穴から脱出しましたが、持ち出せたのはあの古いランプひとつだけでした。

仕方なくアラジンは下着1枚で、家へと帰って行くハメに成りました。


アラジンが早速古いランプを売ろうと、布で磨き始めますと、ランプの口から白い煙が立ち昇り、大きな魔人の姿へと変身しました。

「ご主人様、お望みは何でしようか?

何なりと申しつけてください」

「望は、何でも良いのか?」

「はい、何でもかまいません」

「それなら、俺を大きな城に住む、美しい妻がいる大金持ちにして呉れ」

かしこまりました、ご主人様」


白い煙に包まれて、アラジンはどこかへ運ばれ行きました。

煙が薄れて消え去ると、隣には何とも云えぬ美しい女が居て、周りを見渡せば黄金に輝くお城の大広間に、王座のような椅子の上に座って居たのです。

「やった、俺はついに楽して暮らして行ける生活を手に入れたぞ」


それからアラジンは、贅沢三昧ぜいたくざんまいな生活を毎日味わって暮らし続けていました。




ある日、アラジンを洞窟へと閉じ込めたあの男が、ランプ売りに変装して近づいて来ました。

「古いランプはないかいな。

有れば新しいランプと、無料で交換出来ますよ」


アラジンの妻は、何も知らずにお城に有った魔法のランプを、新しいランプと交換に出してしまいました。


次の日、アラジンが新しい望みを叶えようと、布でランプを磨きますが、あの大きな魔人が現れませんし、白い煙も出て来ません。

「ランプが何だかおかしいんだが、お前は何でか知らないかい」

「ああ、あの古いランプなら、新しいランプと交換に出しましたよ」

「えー、マジかよ。

アラジン、ショック」


すると突然、お城も美しい妻も目の前から消えてしまいました。

あの男に全て奪われてしまったのです。

落ち込んで母が居る家まで帰って見ると、そこには誰の姿も見当みあたりません。

「母さんは、どこへ行ったんだよ」


しばらく家でゴロゴロして暮らしていましたが、母が帰って来る様子は有りませんでした。

そんな時、アラジンの耳にある噂が飛び込んで来ました。

自分が前に住んでいた城が、山の近くに有ると云うのです。

「くそー、必ず俺の城を取り返してやるぞ。

でも、どうやれば取り返せるのか?」


アラジンは、指輪の魔人の事を思い出しました。

「アイツに頼もう」


指輪を擦ると、指輪の魔人が現れました。

「俺様を呼ぶなと云っただろう!」

「でもランプの大魔人が、アンタの事をバカにしていたんだよ」

「何だと! 俺様をバカにして良いのは俺様だけだ。

そのランプの奴は、どこに居るんだ?」

「山の近くのお城の中のランプに隠れている」

「よし、見つけ出してトッチメてやる」


アラジンは空飛ぶ指輪魔人の背中に乗って、山のお城目指して飛んで行きました。

しばらく飛んでいると、金色に輝くお城が見えて来ました。

「悪趣味な城だな。

どんなバカが住んでいるんだ」


アラジンは自分の城だ、とは云えませんでした。

城の中へと入って行くと、あの男が妻と一緒に楽しそうにしていました。


「あの男がランプの魔人です」

 アラジンが指差す男を、指輪魔人が魔法でカエルに変えてしまいました。


「ふふふ、なんだ、ランプの魔人なんて全然大した事ないじゃないか。

やはり俺様の方が断然優れているな」

指輪魔人は満足そうに、そのまま消えてしまいました。


アラジンが魔法のランプを手に取って、擦ると白い煙と共に大魔人が現れました。

「ご主人様、お望みは何でしようか?

何なりと申しつけてください」

「俺のお城を元に戻して呉れ」

「畏まりました、ご主人様」


アラジンはまた、黄金に輝くお城の大広間の王座のような椅子に座って、贅沢三昧な生活を毎日楽しむ暮らしに戻っていたのです。

「俺はまた楽して暮らして行ける生活を手に入れたぞ」




そこにアラジンの母と、美しい妻の亡霊ぼうれいが現れました。

「ランプ魔人の魔法は代価交換だからと、自分の願いと母で有る私とを交換しておきながら、私が居なくなった理由さえ忘れてしまい、今度は自分の妻まで代価交換してしまう。


働かぬわ、盗むわ、他人の命さえ自分勝手にするわ。

お前は人間として最低じゃないか!

それじゃ、あんまりじゃないか」



 +  -  ×  ÷  =  ¥



母と妻の亡霊がうらめしそうにアラジンをにらんでいる。

 僕はその最低なアラジンに変身していた。

〈亡霊相手にどうするんだ?〉


僕は追いかけて来る亡霊から何とか逃げ回っていたが、床に転がっている魔法のランプを見つけると、それに飛びついた。


僕が魔法のランプを擦ると、白い煙と共に大魔人が現れた。

「ご主人様、お望みは何でしようか?

何なりと申しつけてください」

「僕の母と妻を、元に戻してください」

「畏まりました、ご主人様」


僕は自分と代価交換して。母と妻を元の姿へ、ランプ魔人に戻して貰った。

それから二人は仲良く、お城で暮らすように成った。


アラジンがあまりにも自分勝手で最低な人間の為、こんな話の終わり方に成ってしまったが、それも仕方がないだろう。




童話には『他人の物を盗んで幸せに成る』と云う話のパターンが結構有り、僕はいつもこの展開に付いて行けなかった。


人が自分で代価を払って得た物を盗るなんて、泥棒は最低の行為だと思う。

盗みで人が幸せに成れるのなら、今頃は世界中が泥棒だらけに成っている。


たぶんこのパターンの童話は、貧しい国の物語だと思う。

貧乏人が大金持ちに成るには、泥棒しか方法がなかった時代の話だと思う。




物事は一方的に得する事はないと、僕は思っている。

何かを得れば例えそれが見えなくとも、何かを代わりに失くしていると思う。

少なくとも誰かが、代価を払う事に成るはずだ。

アラジンのように他人に代価を払わせる人間は、いつかその代償を求められるだろう。


それで物事のバランスが保たれる。

そうでないと、世の中が一方的にかたよって狂ってしまうからだ。



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