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春香る日に舞う桜。  作者: シュヴァリエ
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双子の幼馴染

「お兄ちゃーん。春香ちゃんから手紙来てるよ~」


「ああ、テーブルの上に置いといて」


「は~い」




 俺の名前は朝日一馬、15歳、今年の春から高校に通う新一年生。つまり、青春真っ最中の年代だ。


 そんな俺には、2人の幼馴染が居る。


 名前は杉琴春香すぎことはるか杉琴桜すぎことさくら


 名前で分かる通り、女で姉妹。それも双子の。


 さっき妹の静奈しずなが郵便受けから持って来てくれた手紙は、その幼馴染、双子の姉である杉琴春香から送られて来たものだ。



「2人共、元気でやってるみたいだな」


 テーブルの上に置かれた手紙の封を開け、中身を読んで感傷に浸る。


 春香と桜に出会ったのは、4年近く前の小学校6年生だった時。親の仕事の都合でお互いに他県から転校してきた俺達は、上手くクラスの皆となじめず、同じ環境同士ということもあって、よく3人で集まっていた。


 というより、卒業までの数ヶ月間、殆ど一緒だった。そのせいでよく男子からは揶揄からかわれたりもした。


 今にして思えば、3人でばかりいるからこそ、揶揄われたり、クラスメイトと親しくなれなかったのかもしれないけど。


 まぁ、どうでもいい事だ。あの時の俺は、あいつ等と居ることが1番楽しかったわけだし。


 でも… その楽しかった関係も小学校を卒業するまでで、中学に上がる頃には無くなっていた。


 理由は桜の体調。


 桜は生まれつき心臓が弱く、学校には週に1、2度しか来れていなかった。


 その1、2度も、本人の強い希望で無理をして来ていたと後で知った。


 それが原因って訳じゃないと思うけど、桜の病状がその時、急激に悪化し、入院生活を余儀なくされた。


 そして、春休みが終わる前に、2人は転校した。


 長期の入院生活が必要なため、なるべく自然が多く、綺麗な景色と綺麗な空気を桜に見せてあげたい、与えてあげたいという、両親の想いからの転校だった。


 正直、2人と離れることはとても辛く、寂しかった。


 だけど、それ以上に桜には元気になってもらいたい、毎日、楽しく学校に行ける様になって欲しい、その気持ちの方が何倍も強かった。


 だから俺は、精一杯の強がりの笑顔で


「早く元気になって、また3人で遊ぼうね」


 と、見送った。


 それに対して桜も、


「うん!」


 と、元気に返してくれた。


 俺としては、この時、照れ臭くも桜を良い形で綺麗に見送れた。


 と、思っていたんだが…


 その時に言った、


「それまで浮気とかしたら駄目だからね。桜を泣かせたら私が絶対に許さないんだから!」


 春香のこの一言が、場の空気を和ませつつも、俺と桜を死ぬほど赤面させてくれたのはいい思い出…… かな?


 別に俺と桜が付き合っているとか、好き合っているとかの話は、それまで一切したことは無いし、事実も無い。


 春香なりに、空気を読んでの発言なんだろうけど、


 あの時は本当に恥ずかしかった…

 

 

「ふぅ…」


 手紙を置き、今の2人を想像する。


 あれから3年以上の月日が流れた。何度か2人が住む長野まで足を運び、会いに行ったこともあるが、それも中学2年の時まで、それ以降は部活や高校受験もあり、お互いに忙しく会っていない。


 4月からはあいつ等も同じ高校生、どんな感じに成長しているのだろうか、


 ガサツでお転婆だった姉の春香、大人しく、暗いイメージがあったものの、おしとやかで優しい桜。


 男心としては、せめて1度くらいは制服姿の幼馴染2人を見てみたいものだ。


 春香からの手紙によると、桜の様態も大分良くなり、春休み明けからは退院と共に学校で入学式を迎えられるとの事。


 何時かまた、彼女達に会える日が来たとしたら、イケメン男子高校生とまではいかなくとも、せめて、さわやか系男子に見えるくらいにはなっておきたいものだ。


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