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第8話

「クエスト報酬はどうやら全員に配られたらしいから、再分配はしなくていいか?もしなんだったら、イヴの分を増やしてもいいが......」

「お気になさらず、てか、このクエストやる連中は金とか一般素材なんかで満足する奴はいないでしょ?」

「それもそうだな.....おっと忘れてた、ほい」


シュウが笑いながら、こちらにフレンド申請を送ってくる。

特に断る必要もないので、了承すると、


「まあ、もし困ってたらメールをくれ、俺が出来る範囲で手伝おう」

「なら、大いに期待しとくよ?」

「あまり、過剰に期待するなよ......」


苦笑いで返事をしてきた。やはり、根がいい人なのだろうなと、なんとなしに考える。

すると、突然、


「にゃはー!まさかイヴちゃんが『紫電』だったとは!!」

「ちょっ!ネコちゃん!私今、足ないんだから、そんな急に抱きつかれると......わきゃ!?」


背後からネコ娘に抱きつかれて、砂漠の砂へと顔を突っ込む羽目になった。

実は彼女は一回pvp対戦で出会った時に、仲良くなったため、フレンド登録した結構長い付き合いのネット上の友人なのだ。

ちなみに、課金アイテムでアバターにあえてネコ耳を生やすという完璧なロールプレイ主義者でもある。

まあ、それはともかくとして、ネコ娘は砂に顔を埋めた私の背中の上に乗って背中を叩きながら、


「もー、『紫電』だなんてかっこいい名前で呼ばれちゃってー!どうして私に教えてくれにゃいのさー!」

「ぶはっ!絶対あなたからかうでしょ!」

「もちのろーん!」


と言ってくる。恐らく、情報発信源はアリアだなと思って彼女を睨みつけると、ヒラヒラと手を振って楽しそうに笑ってる。

そして、彼女はさらにイヴを煽るように、リリィの方に向き直ると、二人で会話を始めた。


「いやー、また『紫電』の噂が広がっちゃったね!私たち、ズッ友として、もっと広めなきゃ!」

「そうだね!」


瞬間、アリアとリリィの間に爆発音と共に砂の柱が立ち上る。


「へっ?」


アリアがおそるおそるイヴの方を見てみれば、ネコ娘は既にエインとの会話に移っており、こちらに『ヴァルファーレオーディン』を向けたイヴの姿が見える。


「あっれー?おかしいな?アリアの頭直撃で狙ったんだけど.......あ、そっか.....耐久が半分切ってるからか.......ま、数撃てば当たるよね?」


イヴがなにやらボソボソと不穏な空気を身にまとい、呟いている。

アリアはゴクリと喉を鳴らして、リリィに向き直ると、提案する。




「リリィ......」

「わかってます......」


「「逃げよう!!」」


二人の息がぴったりと合って、走り出す。

イヴはスコープを向けると、


「まてやこら!絶対ぶっ○してやる!」

「ちょっと!キャラ変わってない!?もっと女の子はお淑やかに生きないと!」

「あわわわわわっ!!!これ絶対まずいですよ!てか、アリアさん足早くないですか!?」

「そうだ、リリィ!囮作戦をしよう!」

「足早いアリアさんが囮なら乗ってあげますよ!」


走り回る二人の背後で轟音と共に爆発音がきこえて、砂が捲き上る。

この地獄のような的当てゲームは二人が3キロ先まで逃げるまで続いた。





「あのー?イヴさん?なんか、いいドロップありましたか?新装備の設計図とか」


アリアがやたらと丁寧な口調で質問するが、


ガシャコンッ!


「ひっ!?」


イヴは全く聞かずにそれどころか街中のオープンエリアにも、関わらず『ヴァルファーレオーディン』をしまわない。

お陰で、イヴたちの席の周りだけ、異常に重たい空気が居座っていた。

しかし、先に折れたのはイヴであった。

ため息を一つ吐き、『ヴァルファーレオーディン』をしまうと、


「まだ見てないからわかんない......」

「イヴー!ごめんねー!」

「すいませんですー!」


不貞腐れたように呟くと、アリアとリリィがイヴに抱きついた。


「もうしない?」

「それは保証できないけど」

「こ、こいつ.....」


どうやら、またやるつもりはあるらしいが、もうこのノリにも慣れたために、もう一度ため息をするだけにとどめる。

そして、さっきの話を思い出して、ストレージを開いてみると、クエスト報酬と『ダーク・オーファルス』のドロップ品の一番下に、『サイレントヴァルキリー設計図』という文字が見える。どうやら、私は当たったらしい、と思って、イヴはアリアたちにそのことを伝えると、


「うっそ!羨ましいな!じゃあ、早速作ろうよ!」

「そうしましょう!」


二人は興奮した様子で聞いてくる。けれど、


「あれ?まだ開けない.....これ、未鑑定品だ.....」

「え.....」

「まじですか?」


未鑑定品、高レアリティの武器の設計図や、素材の原石などに付属している状態、これは『鑑定』スキルや、武器師などに見せると解除される。

つまり、未鑑定品ということは、


「これ、まさかのガチで大当たりパターン?」

「だよね」

「ですね」


ほぼ100%、レアリティの高い武器であるということだ。


「まあ、ちょうど『ヴァルファーレオーディン』も耐久値戻してもらうために、メンテ必要だし、そのついでに未鑑定品を見てもらおうかな」

「ま、その前に今日はもうお休みですけどね」

「え、うそ?」


リリィに指摘されて、イヴが時間を確認してみると、既に夜中の2時を、回っている。


「じゃあ、また明日。午前11時くらいにここに集合でいい?」


イヴが提案すると、二人も了承してくれたため、そのままログアウト。

イヴ、本名、四ノ宮 美咲は、自分のベッドの上で、興奮冷めやらぬまま、眠りについた。


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