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第7話

イヴの全力、『ヴァルファーレオーディン』で同時起動可能な魔法数を全て使って放つ最強の一撃、『イグニッション・オーバーロード』は圧倒的な威力を誇るが、二つの欠点のせいでイヴは狙撃ではこれを使うことが出来ない。


一つ目は射程。

この世界では律儀に空気抵抗、重力など様々な要素が全て現実と同様に作用する。

そこで問題となってくるのが弾丸の耐久力である。イヴが普段使う弾は、『ヴァルファーレオーディン』のスペック上の射程3.5キロまでしっかりと届くものだが、これをもし、同経口でより耐久性の低いものにした場合、発射時の衝撃と空気抵抗により弾丸の耐久力を全損して、弾が途中で消える。

そして、イヴの弾丸の耐久値は500ほどあるのだが、『イグニッション・オーバーロード』は発射時の衝撃で耐久値を497消費する。

さらに、空気抵抗は10メートル進むごとに耐久値を1消費させるため、この一撃は30メートルまでしか当てることが出来ない。

狙撃としてはあまりに短い距離だ。


そして、二つ目は『ヴァルファーレオーディン』の耐久値の問題。

『ヴァルファーレオーディン』の耐久値は100500、この数字はかなり優秀で他の対物ライフルは大体50000を越えればかなりいい武器と言われるのだから、その破格さが伺える。

しかし、『イグニッション・オーバーロード』は使用するだけで30000以上耐久値を使う。

つまり、理論上はメンテナンス無しでは3発しか撃てない上に、4発目は発射と同時に壊れてしまう。

さらに銃全体の特徴として、耐久値が5割を切った場合、射程、命中精度が悪くなるというデバフがつくため、実質的には1発撃ったら、もうほとんど打ち止めのような状態なのだ。



そして現在、イヴは長い滞空時間を経て、地面へと着地すると同時に銃の耐久値を確認。

『イグニッション・オーバーロード』と元々の使用量のせいで耐久が既に70000を切っている。

恐らく、今ので敵のHPは半分を切っただろうが、流石にもう一発で倒せると思えるほどに楽観視は出来ない。

さらに敵のHPが半分を切ったということはまた攻撃パターンが切り替わるということ、敵から距離を取るために、走り出す。

すると、背後から地響きが聞こえる。敵が起き上がったようだ。そして、それと同時に銃声も鳴り響く。味方が追いついたなと判断して、振り返り、銃を構える。距離は多少離したが、この距離でうつ伏せで構えることは出来ない。

命中精度は落ちるが、その場で立って構える。

恐らく、この辺が正念場だろうと、考えてイヴは気合を入れ直した。




一方、追いついたアリア達は『ダーク・オーファルス』を取り囲み、一斉放射。

先程と同様のパターンで敵にダメージを与えていた。しかし、先程とは違い敵が妙な動作を始めた。

まず、半壊した左腕を緩慢な動作で持ち上げたかと思うと、背後の装甲がパージして飛び回りながら左腕に集まる。

まさか、回復かと全員の間に緊張が走るが、どうやら違うらしく、その装甲はヒュンヒュンと風切り音を立てながら、左腕の周りをクルクルと回るだけだ。

全員が警戒しつつも、一旦リロードのために魔法で高速移動をしながら、距離を取る。

そして、一体敵は何をしているのか、その答えは即座に全員が理解した。

一人のプレイヤーに敵が左腕を向けた瞬間、回転する4つの装甲の先端部から、ガトリングのように光線が放たれて、彼のHPが全損させられたことによって。

やられた瞬間、シュウが叫ぶ。


「新しい攻撃パターンだ!左腕の動きに注意しろ!一箇所に絶対に止まるな!」


誰も声を出さずに頷く。

右手は高速で飛んでくる剣、左手は射程の長い射撃系武器、しかもどちらも一撃死確実ときている。

全員の思考は、一致していた。


(((なんだこの無理ゲー!!!)))


だが、その程度でリタイアするようならネットゲームなどというマゾゲーなど到底プレイできるはずもない。

なんとか、左腕の動きを見つつ、相手にダメージを蓄積させる。

とはいえ、流石に完璧に避けれる者は少なく、スナイパー部隊からの援護もあるが確実に数が減っていく。


現在、補給部隊4人、狙撃部隊5人、前衛10人、既に14のプレイヤーが脱落していた。


そして、少しずつではあるが敵のHPを減らしていくと、敵も最後の攻撃パターンへと攻撃パターンを切り替えた。

半壊した左腕をまるで支えるかのように、装甲が合体したかと思うと、イヴが左腕ごと吹き飛ばしてやったはずの剣がどこからか現れ、左腕に握られる。

ここまでなら、最初の姿に戻っただけだが、敵がイヴの方へ向けて、明らかに届くはずのない剣を振り下ろした瞬間、嫌な予感に駆られて、イヴは左方向へと跳躍、それと同時にイヴの元いた場所を斬撃が走り抜けていった。


「まさかの遠近両用武装か.....」


イヴは呟き、ここがラストスパートのようだなと判断。

ここまで来たのなら、『イグニッション・オーバーロード』でも一撃で倒せると判断して、アリアへと通信魔法をつなげた。




「これは.....っ!!」

「きついですね......」


『ダーク・オーファルス』の最後の攻撃パターンは、高速で剣を振りまくる、ただそれだけだ。

銃を扱うこの世界においては非常に楽に倒せるはずの相手だ......一振り一振り全てに飛ぶ斬撃が付いて来なければの話だが.......

当たれば必殺、射程は長大、感覚は短い。唯一の救いは命中精度の悪さだけだが、飛んでくる数が数だけに、非常にまずい。

残ったプレイヤーは最早6人、イヴ、アリア、リリィ、シュウ、エイン、そして、『猫愛好家の方々』のネコ娘のみである。

アリアとリリィ、エインに関してはイヴが狙撃で優先的に守っていたのもあるが、残りの二人は純粋に高いプレイヤースキルで生き残る猛者達だ。

そして、アリアに通信魔法がつながる。


「アリア!聞こえる?」

「なに!?今は、ちょっと余裕無いんだけど!」

「後は、私が決める!シュウさんとリリィとエイン、後ネコ娘ちゃんに、援護よろしくって伝えて!あとアリアにも任せるから!」


そこまで聞いて、イヴの意図を理解。そして、


「りょーかい!決めてよね!イヴ!」

「もち!」


了承の返事を返してから、声を張り上げて叫ぶ。


「全員!イヴがさっきの左腕を吹き飛ばした攻撃使うから、イヴを援護して!あの攻撃は射程が大体30mしかないから、近距離でしか当てられないの!」

「りょーかーいでーす」

「おっけー!」

「わかった!」

「まかせるにゃ!」


全員が即座に承諾、まずはリリィが斬撃に誘爆されないように地面スレスレでC4を投擲、それと同時にエインがサブ武器のロケットランチャーの弾頭に『電磁パルス弾』をセットして発射。斬撃に撃ち落とされるが、『電磁パルス弾』はプレイヤーへのダメージが一切ない代わりに、半径50メートルを飲み込む微弱な電気を発する。

電気を食らった『ダーク・オーファルス』はほんの一瞬動きを止めて、即座に動き出そうとするが、シュウがロケットランチャーを発射して、ノックバックを発生させる。さらにネコ娘がリリィの投げたC4をハンドガンで狙い撃ち、起爆。ノックバック状態をスタン状態に変えた。

そして、ラストはアリアがそのAGI極振り型のステータスを生かし、敵の膝裏、関節部に直接『電磁グレネード』を設置、起動して、敵の脚の機能を完全に潰す。

イヴの攻撃範囲内でから逃れる為に全力で走りながら、アリアは叫んだ。


「行って!イヴ!」


私は全力で疾走する。だが、スナイパーゆえに元の位置が遠かったのと、この重すぎる武器のせいで間に合うかどうかはギリギリだ。

けれど、全員がここまでやってくれたのだ!これで応えられなかったら、『紫電』じゃない!

残り35m、しかし、無情にもここで敵のスタンと錯乱の状態以上が解ける。


そこから、振り下ろされる斬撃。

だが、極限まで研ぎ澄まされた私の集中力は紙一重、否、足を一つ犠牲にしつつも、その一撃を私に避けさせる。

そして、敵に出来たのはただの一振りのみであった。

二つ目の斬撃が私に届くよりも早く、私の射程圏内に入る。

私は足を失ったことによってバランスを崩しつつも、なんとか敵に銃口を向けてトリガーを引きしぼった。

そして、轟音と目がくらむほどの閃光、さらにいつも二本足で支えてた故に意識しなかった強烈な衝撃を感じつつも、斬撃ごと『ダーク・オーファルス』を吹き飛ばしたのをその目で見届けてから、砂漠に顔から突っ込んだ。


砂で埋まる私の視界には、クエストクリアの文字が踊り、耳にはファンファーレが鳴り響いた。










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