第4話
流線型のヘッドに赤く輝くツインアイ、両腰に吊り下げるは巨大な長剣二本、背中には羽根のような装甲が生えている。まるで天界より来た騎士と見間違わんばかりのその姿は、畏怖と恐怖を伴って、プレイヤー達の瞳に映った。
イヴがスコープ越しに覗いていると、視界の端にクエスト開始マークが現れる。
それを認識してから、トリガーを引き絞り、同時に轟音。
狙いすまして放った一撃は果たして、見えない障壁に遮られてしまう。
あれは......
「『絶対障壁』ね」
アリアが呟く、即座に全員が行動を開始。
『絶対障壁』の突破方法は、単純明快、超火力で吹き飛ばすことである。
つまり、下に敷き詰めた爆弾による一斉攻撃。
プレイヤーの一人が地面に向かって、手榴弾を投擲、同時にサブ武器にロケットランチャーを装備してるプレイヤーが敵に向かってロケットランチャーを発射。
更に補給部隊が全員に対して、光と音に対する防護魔法を発動する。
瞬間、閃光と共に轟音が鳴り響き、巨大な砂の柱が巻き上がった。
爆炎が立ち上る。だが、これだけで死ぬほどレイドボスは甘くない。
全員が銃を構えた瞬間、爆炎を切り裂き、敵がその姿を現わした。
『絶対障壁』はすでに消えている。
マシンガンとアサルトによる弾幕の嵐の一切を無視して、剣を振り付けて来た。
全員がそれを何とか回避するが、即座に2本目の剣が降り下ろされ、砂煙が立ち上る。
「ぐっ!」
「おい!大丈夫か!」
「直撃は避けたが、こいつはやべえぞ!タンク型の俺が掠っただけでかなり持ってかれた!」
その言葉を聞いて、固まって動くことは愚策と全員が話し合うまでもなく、理解し、散開。
全方位からの銃撃でヘイトをバラしつつ、周りを囲む。
弾丸が当たることにより、全身から火花を散らしながら、『ダーク・オーファルス』がその凶刃をアリアへと振り下ろす。
が、アリアはライトマシンガン装備のAGI極振り型、その一撃を余裕を持って回避した。
そこへ更に追撃を加えるべく敵が剣を振る。
2、3、4撃までは避けることが出来るが、
「やばっ!」
高速で振るわれる巨大な攻撃、完全に避け切ることができず、ついにその一撃を食らってしまうかと思われたが、横合いから強力な衝撃が加わり、『ダーク・オーファルス』が吹き飛ばされた。
そして、アリアの耳に通信魔法で、
「惚れた?」
と、からかい気味にイヴの声が入ってくる。アリアも冗談めかして、
「元から愛してるわよ」
答えてから、吹き飛ばされた敵のヘイトをこちら側に戻すべく、追撃を始めた。
モンスター討伐での対物ライフル所有者は異常なほどに神経を使う必要がある。
というのも、他の武器に比べて威力が高すぎるために、何回も攻撃を加えると、モンスターのターゲットがスナイパー側に向き、やられてしまうからだ。
故に、対物ライフル使いは、戦況を常に冷静に見渡し、いつ撃てばいいかを見極める必要がある。
イヴは仮想世界故に流れないが、現実の自分の背中には冷や汗が浮かんでるだろうと思いながら、『ヴァルファーレオーディン』を構えていた。
ここまでは順調、しかし敵のHPが一定値を切った場合ほぼ確実に攻撃パターンが変化するために、油断は出来ない。
そして、その瞬間は唐突に訪れた。
『ダーク・オーファルス』が左手の剣を腰に戻して、鞘ごと腰から引き抜くと、それを左腕へと装着。
あれは.......
敵がこちらに倍ほどに太くなった左腕を向けた瞬間、イヴの視界が真っ白に染まった。