第20話
お父さんから転送魔法で私のアイテムボックスに新たな武器が送られた。
名前は、『アークディフィジョン』。
それをオブジェクト化して、私の手元に出現させる。
瞬間、私は言葉を失ってしまった。
ライフルとしては、標準的な大きさ。しかし、その存在感は私の『ヴァルファーレオーディン』の数倍はある。
データの密度が違うとでも言えばいいのだろうか、たったのこれだけの大きさの中に『ヴァルファーレオーディン』の数倍の能力を詰め込んでるかのような、いや、実際にそうなのだろう。
私が、目を取られていると、お父さんの声により現実、いや仮想世界に意識を引き戻される。
「それは、俺の、つまりスーパーアカウント用に用意してある武器だ。つまり、俺のステータスで扱えるようになってる。この意味がわかるか?」
「つまり、私のステータスじゃ扱いきれないってこと?」
「ああ、お前の筋力は今いくつくらいだ?」
「えーと、520ジャスト」
「それだと、多分700mくらいまでしか、精密な狙撃が出来ない。いけるか?」
私は暫く考える、そして、
「いける」
冷静な計算から、結論を弾き出した。
けれど、
「あ、ちょっと待て、実はだな、『ドラグーン・ハート』には、もう一つ機能がある。危険察知つってな、あれを一撃でぶち壊すような攻撃を相手が構えた瞬間、アラートで相手の位置を教えてくれるっていう」
「え、それスナイパーじゃ勝てないんじゃ....」
「ガンバ!」
どうやら、そこまで楽にはやらせてくれないらしい。
とりあえず、通信を切って、シオンに通信を繋げる。
「ん?お姉ちゃん?どうにかなりそう?」
「一応、攻撃手段は手に入ったけど、実は....」
大まかに説明をすると、
「なら、私が囮役をやって、お姉ちゃんが決めるしかないね」
「そうだね、ごめん。任せてもいい?」
「もっちろんだよ!」
シオンは、明るい声と共に、この難しい役割を引き受けてくれた。
「やるよ、いい?」
「おっけ、じゃあシオン、よろしく」
「うん!」
シオンが駆け出して、敵へと向かっていく。
それと同時に私は弾丸は入れずに、遮光スコープを覗き込む。
相手にギリギリまで気づかせないための作戦だ。
さらに、作戦上の都合で光から目を守ってくれる遮光スコープを使う。
私の視界の先で、戦闘が始まった。いや、戦闘とは言えない、一方的な蹂躙だが、シオンは身のこなしと、あらゆる道具を使い、なんとかその攻撃を凌ぐ。
私は、必殺の一撃を決めるべく、弾丸を装填した。
「おらおら、かかってきておいて逃げてんじゃねえよ!」
敵が破壊の嵐を撒き散らしながら、私へと迫ってくる。
それをありとあらゆるものを利用して回避するが、それでも開始20秒でもうライフが半分を、切っている。
「ちょっと、これは厳しいかな」
小声で弱音を吐く。けれど、そろそろだ。
シオンは、自分の姉を信じて、今の敵に唯一効果が見込める武器、閃光弾を投擲する。
瞬間、閃光が走り、その場を光が埋め尽くした。
しかし、
「ガハッ」
「へっ、その手は読んでたからな、オプション装備でこの遮光レンズをつけといたんだよ。」
光を防ぐために、自分も目を閉じたせいで敵の腕を避けることができずに鷲づかみにされてしまう。
そして、敵の握る力が、強くなり、シオンのライフが消し飛ぶかと思った瞬間、敵が即座に顔を横に向ける。それと同時に目の前に破壊の鉄槌が振り下ろされた。




