第17話
翌日午前7時、メンテナンスが終わると同時に、私たちはログインした。
昨日の内にアカウント調整は終わっている。
私のアカウントは殆ど変わりないが、紫織はinnocenceの方からのコンバートだ。
「お姉ちゃん、いつもここでプレイしてたんだ」
へー、ほー、と随分と物珍しそうに見ている。
だが、本題を忘れたわけではない。しっかりとプレイヤー一人一人を見ていた。
私達のアカウントには、基数コードを使ったプレイヤーを見分ける目と、アイテム数固定化が付与されている。
更に、オープンエリア、つまり攻撃不可能領域において、相手に攻撃を当てることが出来るという、能力もだ。
この能力と、もう一つ、当てることでサーバーとプレイヤーに直接のパスを繋げる弾丸を使って、基数コードの所有権を元のサーバーに戻す。
それが私達の目的だ。
その為に、今日はアリア達と遊べないと伝えておいた。
怪しまれないように、妹もゲームを始めて、説明をするからと伝えてあるので完璧だ。
だが、まずはプレイヤーがログインしないと話にならな.....
「いた!お姉ちゃん!」
「えっ.....」
私が見ると、プレイヤーから青いオーラのようなものが出ている。
ビンゴだ!お父さんから教えてもらった識別方法と一致している。
私達は、すぐに物陰に隠れて、課金アイテム光学迷彩マントを装備。
これでオープンエリアで私たちが攻撃したって情報は残らない。
ゆっくりと背後に迫る。
後ろから見たチートプレイヤーは、普通の高校生のようだが、お父さんの言う通りなら、高度なコンピューター技術を持った人の筈だ。
油断は出来ない。
そして、残り5m、この距離なら外しようがない。
照準を合わせて、トリガー引く。
サイレンサーの魔法を4つかけて発射時の音を全て消した『サイレントヴァルキリー』が無音の弾丸を放った。
しかし、
バチィ!
「なっ.....」
「ッ!?」
私と相手がお互いに困惑の声を上げて、相手が走り出す。
私も即座にその背を追いながら、さっきの事象について考える。
あれは、課金アイテム『死神の羽衣』のエフェクトだ。
能力は、一定のダメージをカットすること。
当然だが、対人戦では使用不可能な超激レアアイテムだ。
当てることだけを考えて、サイレンサーを何回も付与した状態の50口径では貫けない。
この弾丸は相手のアバター本体に当たらなければ意味が無い。
つまり、あれを貫き、一撃を当てる必要がある。
その為には、『ヴァルファーレオーディン』での狙撃が一番早いが、流石にオープンエリアであの轟音を鳴らせば、すぐに私の正体がバレる。
しかし、幸いなことに相手はフィールドへと逃げようとしてる。
これならば、フィールドに出た後に撃てば私達の勝ちだ。
そして、ワープゲートに相手が飛び込むのに続き、私たちも飛び込んだ。
このゲートは.....
光を抜けた先に広がるのは、ポツリポツリとビルが水の中から、顔を出すという奇妙な風景。
ここは、ステージの7割が水没した街、『インザウォーター』
そして、敵が周りに人がいないことを確認すると、大声で叫び出す。
「俺に復讐か!アイテム消されたくらいで怒るんじゃねえよ!俺たちの目的が為されれば、てめえら全員に超激レアアイテムだろうが、なんだって配布してやるからよ!
今は実験してんだよ!邪魔すんじゃねえよ!」
実験?目的?、一体何を言ってるのかわからないが、とりあえず撃てばこちらの目的はなされる。
敵は先程から私の姿を見れてない。
つまり光学迷彩のスキルを看破するスキルは持っていないということ、このまま撃てば当たる。
私がトリガーを引こうとした瞬間、
「出てこねえなら、こっちからやってやるよ!『リベリオン』!!!」
叫ぶと同時に敵の体のあらゆる部分に妙な機械が装着されていく。そして、最終的にはドラゴンのような形になった。
あれは一体.....
私が驚愕に目を見開いていると、
「ふん、女二人か。信じられねえって顔してやがるな?」
なっ!私達の姿が見えてる!?先程までは確実に見えてなかったのに.....
男は、こちらを見ながら、
「これはまだ未実装のボスとの戦闘時のみに着ることが出来るパワードスーツ。効果は、全スキルの無効化と、飛行。まあ、プレイヤーじゃあ、絶対に勝てねえから大人しく諦めな!」
ニヤリと笑い、その肩に装備された筒のような物から、光の奔流を放った。




