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第14話

「相手が警戒しすぎたのと、お前のリボルバーの予想外の威力の高さが合わさったことによって発生した不慮の事故だな。」

「だからって、ビルを一本倒壊は予想外すぎるけどね.....」

「やめて、いまも後悔してるから.....」



濛々と土煙を上げるビルの残骸を見るに中のプレイヤーは生き残ってはいないだろう。

しかし、今のでこちらの位置が全員に伝わった、残りのプレイヤーは、三人だが、こちらは位置を知らないのに相手は知っているということは、スナイパーに狙われた場合、手も足も出ない。


現在、全員、建物内部に隠れて、向こうの動きを探っていた。


エインの索敵魔法の範囲は200m、スナイパーの最低距離は700mといわれるため、これでは捕まえられないだろう、それに相手が探索を掻い潜るハイドモードだった場合意味を為さないが、気休めにはなる。


だが、流石にこのままではジリ貧だ。

どうにかせねばならない。私がなんとか打開策を捻り出そうと頭を抱えると、



「よし、俺に案があるんだが、乗る気はあるか?」

「話して」


ヴァインスから、提案された案を聞く。

そして、話が終わると、私とエインは、悪い笑みを浮かべながら、


「「乗った!」」


完全に同調して返事を返していた。






「おいおい、3チーム合同で当たってんのに、もう3対3まで追い込まれてんのかよ、やっぱヴァインスと、そのフレンドはつえーなぁ」


男は9対3という圧倒的に有利な立場から一転、もうここまで追い込まれていることに驚愕していた。

だが、ここまで敵が派手に動いてくれたことでこちらは完全に敵の位置を捕捉。

さらに、こちらは位置を知られていないという絶好の状況を作っている。

スナイパーがまだ残っているため、もうこちらの勝ちは確実。あとは、敵が諦めて頭を出すまで粘るのみであった。

制限時間が来た場合は、残り人数でこちらが負けてしまうが、時間はまだ、2時間近く残っているし、位置がわかっている以上、そこに向かって手榴弾などを投げてやれば、すぐに燻り出せる。


故に、男は安心して、双眼鏡から敵の隠れる建物を眺めていた。


すると、向こうである動きが見える。それは、



「スモークか.....」



スモークボムを炸裂させたのか、白煙が立ち上る。

恐らくは、この煙に乗じて移動するつもりなのだろう。

そう判断して、スナイパーに通達。

煙の中を注視するように、特に煙の動きに注意しろと、しかし、ここでイヴ達の作戦が発動した。


「きゃあ!目が!」

「なに!?閃光弾か!やられた!」



煙の中から、球体が投げられると同時に強烈な閃光を放つ。

これで唯一のスナイパーが暫く視界を使えない。


男は小さく舌打ちをして、逃がさないように双眼鏡を覗き込む。

まだ、動きが無い。

まさか、もう逃げられた?


突如、不安に駆られ、


「わり、武器借りるぞ」

「おっけー」


目を閉じたままの仲間スナイパーから、スナイパーライフルを借りて、三人目の味方に指示を出す。

そして、スコープを覗き込みながら、



「おい、潜伏はもういい。グレネードで炙り出せ」

「了解だ」



三人目の味方は敵の建物のとなりのビルでハイド状態になっている。

相手を炙り出すために潜伏させておいた切り札だが、このタイミングで使うしか無いだろう。


相手のビルで爆発が発生、それと同時に煙の中から1人の少年らしき人影が走りだす。


即座に反応、トリガーを引く。

まずは一人、そう確信した。

しかし、


「!?、ボディに、当たったか!?」



男は偏差射撃までは、なんとか行えたが、その距離によって弾道が下がることを完璧に計算しきれなかった。

重力、空気抵抗、諸々を完璧には予測しきれなかったのだ。

そして、ボディに当たったため、一撃では殺しきれなかったものの、ヒット時の衝撃から足を止めた人影を殺しきるべく、二撃目を放とうとした瞬間、雷の如き轟音と同時に目の前に死亡ログが現れる。


そして、男の脳内にある噂が思い出される。

男は、ゆっくりとビルの上で倒れこむ最中、ポツリと、呟いた。


「し、紫電.....」











「スナイパー舐めんなっての」


イヴは、武器を『ヴァルファーレオーディン』に持ち替えて700m先を見据える。





十分前、ヴァインスに伝えられた作戦は、





スモークでこちらの動向に気を引かせて、スナイパー、もしくは観測者にスコープ、双眼鏡で覗かせる。


そのタイミングで閃光弾を使い、どちらかの目を潰す。ここでスナイパーを潰せれば、最高。スナイパーじゃなくても良し。


そこで、対プレイヤー用にダメージ軽減装備と、スキルを揃えているエインが囮として走り出し、イヴにスナイパーの弾道を見させる。


弾道から位置を予測し、イヴがカウンタースナイプを行う。



これが、作戦の大筋、他にもいくつか細かい場合の対処法は決めていたが、それは置いておこう。


途中で手榴弾を投げ込まれたのは少々痛かったが、それも想定していなかったわけではない。




イヴは銃を『サイレントヴァルキリー』に持ち変えて、ヴァインスに伝える、


「残りのスナイパーを仕留めてくる!そっちはよろしく!」

「任された!」



ヴァインスは隣のビルへ、イヴは自分にありったけの速度強化魔法をかけて、敵の残るビルへと疾走した。


ぐんぐんと距離が近づく。だが、残り400m地点で、キラリと輝く銃口が向けられた。

まずい!


そう思うと同時にマズルファイアが見える。

思考するよりも早く、咄嗟に横に跳ねて、回避、即座に物陰へと身を隠す。


『ヴァルファーレオーディン』は破格の性能をしているが、通常のライフルでは音速の3倍までしか出ない。

つまり、300mも離れていれば、マズルフラッシュから、0.3秒も着弾まで時間がかかる。


そう判断して、咄嗟に回避したが、やはり難しい。

恐らく、同じことをもう一度やれと言われても3回に1回は失敗するだろう。


とりあえず、仮想の肺を落ち着かせるために深く深呼吸をする。


今の狙撃で敵の位置がマップに表示されるが、流石に残り340mを狙撃されずにダッシュで駆け抜けるのはきつい。


だが、これで諦めるくらいならば、『紫電』などとは呼ばれない。

私は、全力で考える。

340mを狙撃されずに駆け抜ける方法を、そして、



「これしかないか」



あるものを手にして、物陰から走り出す。

敵がこちらに照準を合わせようとした瞬間、手元の道具のスイッチを押して、起爆。


スナイパーなどのスコープを、覗く相手に絶対的な有利を取れる閃光弾である。


網膜を焼くかのような極光をスコープ越しに見た敵は再び、盲目状態へ、そして私は一気に距離を詰めた。

残りは120ほど、ここまでくれば当てられる。


私は雷と氷の魔法を込めて、リボルバーを前方に構える。



そして、その引き金を引き、そのランダムマッチを終わらせるラストショットを放った。



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