第13話
「多分、ヴァインスさんがこっちにいるってのがバレたせいっぽいね」
「あ、そっかー、まあ、このままいけばうちらが勝ち確だからね」
このランダムマッチは、一応階級が存在しており、一般兵から始まり、元帥まである。
実は毎日のログインボーナスが階級ごとに分けられているので、みんな出来るだけ上の階級に行きたがるのだ。
そして、戦闘では同階級の者が優先的に集められるようになっている。
ちなみに私は大佐だ。
ここで重要となって来るのが、勝利ポイントだ。
勝利ポイントは一位抜けで200、そこから順位が落ちるごとにマイナス100されるため、4位となると、マイナス200となる。
そして、負けすぎてポイントを失うと、そのうち階級を落とされる危険性もあるため、みんな出来るだけ負け筋を無くそうと努力する。
つまり、確実に一位を取りそうな組を3チームで叩き潰すのもあると言うことだ。
まあ、本当にやってくるのなんて、ほんの一握りだろうが、それに運悪く当たってしまったらしい。
だが、いつまでもショックを受けているわけにもいかない。
私たちは気をとりなおして、移動を開始する。
だが、敵が3チームで組んでる今は、先ほどのような自由行動は出来ない。
なぜなら、戦闘では1対2の1側よりも、2対10の2の方が勝つ確率はあがるためである。
単純に背後の死角を消せると言うデメリットは非常に大きい。
エインが声を張り上げた。
「敵、前方50mビル内。多分いるよ!」
「りょーかい!」
「俺がやろう」
ヴァインスがミニガンを構えて、ビルに弾丸をばら撒く。
これで敵はしばらく、ヴァインスに気を使うだろう。
そして、ヴァインスはエインが守ると思われるので心配はいらない。
私は、ビルを駆け上がるべく、走り出した。
スナイパーの一番嫌なことは足元を取られること。
それは常識だ。つまるところ、スナイパーはそこまで来られると撃てないからだ。
しかし、だからこそ、スナイパーの隠れ場所に突っ込む場合は最大の注意を払わければいけない。
足元を取られたくないと言うことは、それだけ罠を張り巡らせるということ。
対人戦でのスナイパーの隠れ家など、ほとんど地雷原だ。
しかし、ここでついに『サイレントヴァルキリー』がその真価を見せつける時がきた。
「頼むよ」
銃に語りかけてから、銃に魔法を込める。
込める魔法は、爆破系統魔法、『バーンブレイク』それを限界の4つまで付与。
「強化装填」
魔法増幅のコマンドを唱える。
そして、銃の表面にいくつかの光の線が走った。
これで強化完了。
私は走る勢いを一切止めずにリボルバーで地雷原撤去後、即座に上り詰めるつもりでその一撃を放つ。
瞬間、とんでもない轟音と共に、衝撃波が襲い掛かり、私の足を止めさせた。
一体今のは.....
突然の衝撃に驚きつつも、爆破源、つまりビルの一階部分を見ようとした私の目の前では、そびえ立つビルが倒壊して行くという信じられない現象が起こっていた。
後ろではヴァインスとエインも驚愕の表情で見ている。
とりあえず、私は、
「えっと.....てへぺろ?」
精一杯の可愛げと共に、お茶を濁そうと努力することにした。




