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一生忘れられない思い出

 次に意識が戻った時には僕は布団の上で仰向けになっていた。

手足が思ったように動かせない。声を出そうとしても、声にならない叫びになる。

恐らく自分は今まだ自立して歩くこともできない幼子なのだろう。


「わあ、かわいい~」


 ふと聞き覚えのある声がした。声のしたほうに顔を向けてみると、マノンが立っていた。

…転生前と同じ容姿で。


「これからは私が面倒みてあげますからね~」


 マノンはそう言って僕を持ち上げ抱きしめる。絵面的にはただ赤ちゃんを抱いているだけなのだが、中身は10代後半の思春期真っ只中の男の子である。当然下心がなくもないわけで…。

しかし、ここで誘惑に負けてこの状況を満喫してしまっては前世の彼女に申し訳がたたない。そう思った僕は必死に冷静さを保とうとした。


「どうしました?どこかお体に不調でもありますか?」


 当の本人は全く気にして無いようで…

勝手に一人で奮闘していた自分が馬鹿馬鹿しくなり、冷静さを取り戻す。


「あ、おしめ取り換えてほしいんですね」


 いや、違う!違うから!待って待ってちょっと待って!流石にこの歳…いや、ここでは数歳なのだろうが、精神的にはしっかりと育ってるからっ!だからそれだけはっ!


「ふんふ~ん♪」


 そんな僕の気も知らず、鼻歌混じりに僕の下着に手をかけるマノン…


「あ、ちょっと暴れないでください!」


 必死になって抵抗するも、いとも簡単に押さえつけられてしまう。そして晒される僕の秘部。

それから数分後


「はい、終わりましたよ~」


 そう言ってマノンは僕を布団の上に戻した。うぅ、もうお婿にいけない…

あれ、まさかこれがこの先数年続くの…?


 そうしてそんなことにも慣れ始め…るわけなく、幾度に渡る自分の羞恥心との闘いの末、ようやく僕は自己管理の権利を得た。

現在僕は4歳。家は別段豊かでは無いが、決して貧しくもなく、生活に困るようなことはなかった。

そして今日僕は人生初の外出をする。…ただしマノンと一緒に。

この世界ではマノンは僕の姉なのだが、僕のように赤子から育ったのではなく、僕が生まれたのと同時にここに来たのだが、神の力とやらで誰も不信感を抱かなかったらしい…便利な力だな…どうせなら僕もそうしてくれればよかったのに…


 外出の為に身なりを整えようと姿見の前に立ち、生まれて初めて自分の容姿を確認する。

鮮やかな橙色の髪に、澄んだ赤色の瞳。まだ幼児なので顔は何とも言えないが、恐らく整っているだろう…そう思いたい。


「そろそろ行きますか~」


 マノンが僕を呼ぶ声がする。

マノンは分かっているのだろうか。僕がこの世界に来て唯一すること…自殺をするために僕は外出をすることを。まあ、分かっていないならこちらとしては邪魔が入る可能性が低く、好都合なのだが。

そうしてマノンに家の玄関を開けてもらい、生まれて初めて外の景色を目にする。


「ぁ…?」


 そして僕は言葉ではない声をあげる。

僕の目に映ったのは…


 -何も無かったー


 いや、大地や草はある。しかしそれ以外、畑や森もなければ、動物や水源すらも見当たらない。ぐるっと周囲を見渡してみても、ただただ平原が広がっているだけだった。


「さて、どこに行きましょう?」


 マノンが含み笑みで問う。


 まるで最初から全て分かっていたかのように。


 いける場所、行くべき場所なんてどこにも無いじゃないか。


「どうします?」


 マノンのその変わらぬ笑みが告げている。


 最初から簡単に死なせる気など無かった。


 行くべき場所、行ける場所なんてどこにも無いと。


「……寝る…」


 僕は何も考えられなくなって…考えたくなくて、自室に戻り布団に突っ伏した。


 -コンコンー


 しばらくすると、誰かが部屋のドアをノックした。


「ここから少し遠いですが、王都の方に行けばいろいろありますよ」


 マノンは僕にそう言った。

僕にはマノンが何を考えているのか全く理解できない。


「そのうち…あなたに必要になった時に、王都に連れて行ってあげます。」


 それなのにマノンは僕のことを全て分かっているようで…


「不公平じゃないか…」


 誰に言ったわけでもなく、僕はそう呟いた。

なかなか話が進まなくてすみません…

次回には戦闘の描写を入れようと思います。

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