表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/99

96 戦い続けられる時間

本日二度目の更新です。お間違えの無いように……。

 持ち前の素早さを駆使して凄まじい速さでモンスターを倒して行き、攻撃を喰らいそうになれば体を捻って躱して、捻った体を戻す勢いで強烈な回し蹴りを叩き込み、他のモンスターと衝突させる。


 時々生理的嫌悪感を本能的に抱かせるモンスターがおり、それは分解魔法で分解したり、痛みを感じる前にガス爆発や粉塵爆発を引き起こして、消滅させる。モンスター対象に対消滅も出来るのではと思ったが、あまりにもリスクが高過ぎるので、考えただけで実行には移していない。


 それに、出来るとしても消滅させる対象と対になる反物質を作らなくてはいけない為、対象の分子構造が分からないといけない。分かったところで、危険が高過ぎるのでやるつもりはないが。質量をエネルギー変換させるのだって、この魔法があれば可能だが一歩間違えれば比喩表現なしに、世界が消える。


 守るために魔法や剣を使っているので、そんな危険がある魔法は使うつもりはない。どうしても使わないといけない状況にまで追い込まれたら、巻き込まれて自滅する覚悟で使うかもしれないが。


「五十嵐真鳴流剣術中伝―――陸牙太刀りくがたち!」


 右薙ぎ、返す刀で左薙ぎ、十字斬り、二連突き。計六つの斬撃がモンスターに襲い掛かる。一対一の時は一体に対して六つの斬撃が襲い掛かるが、多対一だと一太刀で一体ずつ倒す。この剣技が中伝の中で最高難易度である理由は、これだ。


 一回の斬撃で一人を倒すのだから、合計で六人倒すことが出来る。なので力もいるし、敵がそれぞれ違う場所にいるので、立ち位置によって動きが変わって来る。


 悠一はその剣技で六体を倒すつもりだったが、一体だけ傷が少し浅い個体がいた。そのモンスターは反撃を仕掛けるが、その前に【縮地】で背後に回り込んで頭を貫く。司令塔を破壊され、一度体をビクンとさせてから、地面に倒れる。


 倒したのを確認せず悠一は一度刀を鞘に納め、炭素繊維をたっぷり使った槍を構築し、結合させて強度を上げる。そして高速で槍を突き出し、モンスターの頭や心臓を的確に穿つ。


 剣が一番得意な武器だが、奧伝を習得するために他の武器も扱えるようにならなくてはならない。その為剣だけではなく、槍や鉄鎖術、組討術、弓術などを全て修得し、どれもが一流である。剣と比べれば、一段劣ってしまうが。


 悠一は剣の次に槍が得意で、腕はほぼ同じだ。突き出される槍は速く、凄まじい速さでモンスターが倒されて行く。槍が剣とほぼ同じくらい得意なのは、刃は小さいが柄が長く広範囲に敵を倒すことが出来るからだ。


 高い技術が必要になってくるが、必死に努力してその技術を覚え、五十嵐真鳴流槍術を全て修得した。これは一対一の技が極端に少なく、多対一の技が非常に多い。ある意味当然と言えるが。


「五十嵐真鳴流槍術中伝―――棘霧蜂きょくむばち!」


 五連突き、柄を長く持って大きく右薙ぎ、劈槍、突き。六つの突きと二つの斬撃が襲い掛かり、モンスターが倒される。右薙ぎは柄を長く持っている為、一度に数体薙ぎ倒される。


 多くのモンスターを倒した後、その槍を全力で投げ飛ばして遠くのモンスターを倒す。一本だけなので一体、運が良ければ二体だけだと思っていたが、八倍の身体強化が掛けてあるため六体を刺し貫いた。そのことに少し驚きつつ抜刀術で斬り付け、魔法で吹き飛ばす。


 後方にいるシルヴィアとユリスは、その動きを遠距離視認魔法を使ってみていた。


「やっぱりユウイチさんって、何でもありだよね」


「剣以外にも体術や槍、弓矢とか使うし。それに魔法も反則。何もかも、ああいった乱戦向きだよ」


 二人は悠一の剣術や槍術などについて、ある程度は聞かされている。多対一を想定した剣であると聞いた時は、特に驚かずそうだろうなと思っていた。動きを見れば、それだけでそうだと分かるから。驚いたのは、剣だけではなくその他の武器も一流並みに使いこなしていることだ。


 弓術だけあまり得意ではないと言っていたが、二人はそうは思わなかった。矢の数に限りがあるのが欠点だが、悠一は自身の魔力でそれを大気中の微粒子を集めて制限なしに作ることが出来るので、その欠点は補えている。


 苦手だと言っていたのは、一本ずつ撃たなければいけないし、距離が遠ければ遠いほど威力が落ちるからである。それに、当たったとしても確実に倒せるかどうか、定かではない。なので、直接司令塔である脳や最重要器官である心臓などを破壊したり出来る、近接系の武器が得意なのだ。


 そのことも聞いているが、それでもそうは思わない。前に矢を魔力を高圧縮して作った物にして、当たった瞬間に魔力爆発を起こすようにしたことがある。それを使えば、一度に多くのモンスターを倒すことが出来る。


 しかし結局弓術なので、苦手なのは変わりないが。どんな努力を重ねたらあんなに強くなるのだろうと思いながら、それぞれ得意属性の上級魔法を放つ。


 悠一は疲労を避けるために【天眼通】を使わず、自身の予測能力で次だけでなく十数手先まで予測し切り、的確に躱して斬り倒して行く。時々刀を納めて槍や組討術で倒したり、二尺三寸刀を左手に構築して二刀剣術で倒して行く。


 状況に応じて使う武器を切り替え、魔法を使い分ける。武器を作り出すという工程があるが、それがあっても非常に便利だ。分解は全く同じものでないと同時分解出来ないが、再構築はこういった乱戦に向いている。


 状況に応じて使いやすい武器を作り出せるし、武器だけではなく化学反応や物理現象で魔法を完全とはいかないが再現し、一気に吹き飛ばす。【白雷】も駆使してモンスターを焼き、刀や構築した様々な武器を飛ばしたり、自分で操ったりして首を斬り飛ばし心臓を貫き、胴体を分断する。


 何度か攻撃を喰らいそうになるがそれは魔力だけで展開する魔力障壁で防ぎ、その障壁を刃上に変形させて、それでも攻撃する。ほんの一瞬の隙すら許さないその猛攻に、モンスターや周囲の戦っている人たちは驚く。


 魔力障壁は単純に魔力だけで障壁を作る、名前の通りの初歩的な防御魔法だ。魔力量が多ければ多いほど防御力が上がる代物で、一流魔法使いでも使っている人は少なくない。しかし、それを攻撃に転換させる人は、一人としていない。


 そんな防御魔法すら攻撃に使ったので、周りの人たちは驚いていたのだ。悠一は、転生者や転移者によくある、常識をぶち破るということをほぼ無意識的に行っていた。


「しっかし、倒しても倒してもキリがないな……」


 【白雷】を体に纏って超高速で動き回り、数秒で数十体斬り伏せたところでそう呟く。元々も数が圧倒的に多いというのがあるので、当たり前なのだが。全上級冒険者が集まっているとはいえ、絶対数が圧倒的にモンスターの方が多い。


 そこにレオンハルトたちのような人外の冒険者を投入しても、結局は彼らも人間だ。彼らがいれば戦いが安定するのは事実だが、すぐに終わる訳ではない。


 事実、レオンハルトは数万のモンスターの大群を一人で倒したという経歴があるが、それは数時間掛けてやっと成し得たことだ。それが今回は、十前後だ。最悪、半日以上掛かってしまう可能性すらある。その時はその時だと、悠一は割り切っているが。


 しかし、あまり長引き過ぎると当然体力がなくなるし、それを補うために魔力を使うため、魔力も無くなる。特に後方にいる魔法使いは、攻撃手段が魔力を使った魔法攻撃しかない。悠一たちよりも消費が激しい。


 魔法使いたちが魔力切れを起こして戦えなくなれば、その分近接戦闘の冒険者たちに負担が掛かってしまう。そうなると更に消費が激しくなってしまうため、このモンスターの大群はなるべく早く倒さなければいけない。


 だからといってユリスに頼んで、戦略級魔法を使わせるわけには行かない。そんなことしたら、威力が高く広範囲を一気に殲滅するので、仲間を巻き込んでしまう危険性がある。使ったら一回で全部の魔力を持っていかれることと、仲間すら巻き込んでしまうかもしれないという二つの意味で使う訳には行かない。


「俺たち剣士タイプが、どれだけ早く倒せるかだな……!」


 そう呟いてから魔力を少し多く使って【白雷】を纏い、多く消費している分速さが上がる。魔力を消費することで発動するスキルは、魔法に似て消費する量を増やせばその分効果が上昇する。減りが速くなるので魔力切れを起こしやすくなるが、それはあまり気にしない。


 速さが更に増した悠一はモンスターに気付かれる前に刀で両断し、魔法を連発し、スキルの白い雷を絶え間なく放電し続ける。どんどん魔力が減って行くが、レベルが上昇して魔力量が増えているので八倍身体強化のことも考えると、あと一時間と少しは持つ。


 ただそれは今のペースを維持し続けたらで、更に消費速度が上がったら制限時間が短くなる。戦いは常に何が起こるか分からない場所なので、もしかしたらそうなるかもしれないということを、頭の片隅に置いておく。


「やっぱり、スキルと身体強化を掛けているとはいえ、あの速さは凄まじいな。しかも、まだ実力を隠しているかもしれない。もしかしたら、既に俺よりも強いかもしれないかもな」


 遠くで戦っているレオンハルトは、目にも留まらぬ速さでモンスターを次々と倒して行く悠一を見て、そう呟く。レオンハルト本人も、身体強化などを掛ければ悠一より速く動ける。彼の強さは、その速さから生み出される勢いの乗った斬撃だ。


 根底となる剣技も相当だが、本人は悠一よりずっと劣っていると感じている。レオンハルトが剣を習い始めたのが、冒険者になる五年前だ。そこから必死に剣を学び、そして冒険者のなって覚えた剣を戦いの中で磨いてきた。


 しかし、五年という短い期間の中で学んできた剣と、約十年という長い期間の中で学んできた剣には、明確に技量に大きな差が出てくる。レオンハルトは、目まぐるしく動き回る悠一のその剣を見て、自分よりも剣に優れていると感じていたのだ。


 ただ、そう感じたとはいえ【剣聖】を目指すことは、当然諦めていない。より強くなるために、悠一よりも多くのモンスターを狩って多くの経験値を得て、今ある実力の差を今の内にもう少しだけでも伸ばしておこうと、身体強化を掛けてモンスターに向かって駆け出していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ