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70 新種モンスター討伐

また遅れてしまい申し訳ありません! 言い訳になってしまいますが、リアルが忙しくて……。何とか元の更新ペースに戻していきたいと思います!

「おいおい……、ユリスが戦略級魔法を使ったってのに、倒せないとかどんな化け物だよ……!」


 普通であれば脱出することすら叶わないような魔法なのに、フォートレスドラゴンは凌いでいた。大分ボロボロになっているので、ダメージ自体はかなり入っている。しかし、戦略級魔法でも倒し切れなかったことに、若干絶望しかける。


 シルヴィアはまだ上級、それも氷と風と炎の三つの上級魔法しか使えないし、悠一は魔法自体は強力だがいくつか制限があり、それに主に刀で戦っている為魔法の扱いがそれほど上手くない。そうなると必然的に最も火力の高いユリスに任せるしかないのだが、彼女も戦略級魔法を一回発動させるだけで魔力の殆んどが持ってかれてしまう。


 最大の火力を持つユリスはもう戦略級魔法を使えないし、上級すら発動させるかどうかが怪しい。魔力回復薬を飲めば魔力が回復してまだ戦えるのだが、高価な物は無理矢理魔力を生成するので体への負担がある。悠一は大丈夫だが、華奢な体であるユリスには少し辛い。


 ユリスがここで戦えなくなってしまったのはかなり痛いが、それでも諦めずに二人で戦うしかない。以前ダンジョンで使っていたという、あの力が使えることが出来れば状況は大きく変わるのだが、発動方法が分からない。


 使えない物にねだっても仕方がないので刀の魔力を開放し、炎を纏わせる。そこに再構築魔法で生成した酸素を加えていき、温度を上昇させる。赤かった炎は次第に青く変色して行き、超高熱となる。


 自分の魔力を使って発動させているため熱くは無いが、これで斬られたりしたらひとたまりも無いだろう。一度上から振り下ろして炎の斬撃を放った後、すぐに【縮地】を使って背後に回り込みもう一度炎の斬撃を放つ。


 前方と背後から同時に炎の斬撃が襲い掛かり、上からはユリスの雷中級魔法の【ボルティックレイン】とシルヴィアの風上級魔法【ボレアスピアース】が、側面からは悠一がスキルで大気中の魔力を掻き集めて無数のプラズマを構築し、それら全てを更に自分の魔力で高圧縮し、回転を加えて貫通力を高めて放たれていた。


 三人の魔法が同時に襲い掛かっていたが、フォートレスドラゴンは回避しようとする素振りは無かった。ただただ口を開けて大きく息を吸い込んでいるだけだった。だがそれは、先程も使ったただの声だが凄まじい威力を持った咆哮の準備だった。


「っ! シルヴィア、ユリス! 結界を張れ!」


 悠一がそう叫ぶが、それよりも先に既に二人は結界を展開していた。二人はそれで大丈夫だが悠一はそうもいかないので、【縮地】で上に飛んで回避する。耳を塞ぎたくなるような轟音が上まで届いてきたが、ダメージ自体は無かった。仕掛けた魔法攻撃は全て、それで消し飛んだが。


 咆哮が止んでから足場を作ってそれを全力で蹴って落下していき、着地すると同時に斬り付ける。上手く傷のついているところに当たったため、ダメージが入った。ついでに分解も掛けてあるため、大きなダメージだ。


「グゥルルァァァアアアアアアアアアアア!!」


 大きなダメージが入ったため悲痛の声を上げて、剣のようになっている尻尾を振り回して攻撃してくる。スキル【天眼通】でそれを見切り、屈んで躱してあらかじめ切っ先のみに集中させていた炎を開放し、熱線を放つ。


 その熱線はフォートレスドラゴンの硬い鱗を容易く貫通し、ダメージを与える。高圧縮させた魔法であればダメージは入るようで、今度は風をプラズマが発生するまで圧縮する。そしてそれを放とうとするが、顔をグリンと向けて口を開け、そこから炎の弾を機関銃のように放って来た。


 咄嗟にサイドステップでそれを躱してから圧縮した風を放つが、体勢が崩れており胴体の肉を少し抉り飛ばしただけだった。再び機関銃のように炎の弾を吐き出してくるが、今度は躱さずに向かって行き、刀で斬り伏せていく。


 数が多く凌げない物もあったが、それは刀で防ぐのではなくただ体を捻って躱していく。次々と飛んでくる炎を斬り伏せ、体を捻って躱し続け間合いに入り込んだところで、悠一は一度刀を鞘に納めてから【縮地】で背後に回り込み構える。


「五十嵐真鳴流抜刀術中伝―――環蘭麟童かんらんりんどう!」


 鞘に引っ掛からないように抜刀し一度斬り付け、その後その勢いのまま回転して体の捻るを加えて、もう一度斬撃を叩き込む。二連の斬撃が鱗を斬り裂き、そこから血が噴出する。


 また悲痛の声を上げて尻尾を振り回してくるが、今度は躱さずにその尻尾を斬り落とす。段々と動きが鈍くなっており、フォートレスドラゴン本体の攻撃は大きく躱す必要が無くなった。


 とは言っても、モンスターは手負いの時は一番危険だ。最後の最後の足掻きとして、何をしてくるかはその時になるまでは分からない。こちらに来てまだ日は浅いがそのことはそれなりに知っている悠一は、もうすぐ倒せるとしても油断はしない。


 尻尾を斬り落とされて攻撃対象を完全に悠一だけに絞ったフォートレスドラゴンは、間合い内に近寄らせない為か口から炎の弾丸を次々と飛ばしてくる。それらは全て構築した楯で防いだり、体を捻って躱したり、刀で斬り伏せたりして凌いでいく。


 いくつか当たりそうになったりするが、それはシルヴィアの張ってくれた結界で手前で防がれる。【魔力遠隔操作】で大気中の魔力を自分の魔力で掻き集め、それを使って再構築魔法で無数に鋼の槍を作り出す。


 そしてその槍を一斉に放ち、一度そちらに意識を向ける。ほんの一瞬しかそれは叶わなかったが、それだけでも十分だ。戦いにおいて一瞬でも敵から視線を話したら、それが命取りになる。その瞬き程度の刹那の間に悠一は『修羅の境地』を使い、同時に【縮地】で距離を詰める。


 まず右の前足を斬り落としその後首に一太刀叩き込み、一度上に跳んで胴体を切って深い傷を負わせ最後に心臓があるであろう場所に一突きする。『修羅の境地』を解除すると時間が正常に動き始める。


 それと同時にフォートレスドラゴンは凄まじい量の血を傷から噴出し、少しふらついてから地面に倒れた。体がぴくぴくと小刻みに痙攣していたが、やがて動かなくなる。動かなくなってもまだ生きている可能性を考慮して警戒するが、十秒以上経っても何も起こらないので倒したのだなと判断し、刀の血を振るって落として鞘に納める。


「何とか倒せたか……」


 やっと動かなくなったフォートレスドラゴンの死体を見て、悠一は疲れた顔でそう言う。思っている以上に手強く、倒すのに時間が掛かってしまった。それよりも、ユリスの戦略級魔法が効かなかった方が驚きだった。


 このモンスターには、あり得ないほど高い再生能力が備わっている訳ではない。ただ体が以上に硬いだけ。それでも一回の発動で戦況をひっくり返してしまう程の威力を持った戦略級魔法を、ただの体の頑丈さだけで凌ぐとは、驚きだった。


「ユウイチさんが付けたように、本当に要塞のようでしたね……」


「前に戦ったグラトニアといい、今回のモンスターといい、戦略級でも倒せないなんていくらなんでもバランスがおかしすぎます……」


 討伐部位がどこなのか考え、分からないから適当に牙と鱗と爪を回収しようと決めた時、シルヴィアとユリスが隣にやって来た。シルヴィアはそうでもないが、ユリスは疲れ切った表情をしている。戦略級魔法を使ったのだ、無理はない。


「二人ともお疲れ様。サポートが無かったら、こいつは倒せなかったな」


「い、いえ! 私たちはただユウイチさんの指示に従っただけで……」


「それでもだよ。しっかりとサポートしてくれていた。何回も危ないところもあったし、本当に二人がいなかったら、こんなほぼ無傷で倒すなんてことは出来なかったよ」


 悠一はそう言いながら、両手で二人の頭を優しく撫でる。二人は顔を真っ赤に染めるが、すぐに嬉しそうな表情になる。それを見て本当に可愛いなと思い、このまま撫で続けたいと若干本気で思ったりしていた。


 流石に続けていると、やっている方も恥ずかしくなってくるので十数秒で切り上げ、フォートレスドラゴンの部位を回収して行く。討伐した証として首を斬り落として持って行こうかと考えるが、別にそこまでする必要はないと判断し止めておいた。


 粗方剥ぎ取りを終えると悠一は、分解で体を粒子レベルに分解し村に向かって歩いて行く。道中モンスターなどは出てこなかったが一応警戒し、数分後に村に着いた。



 ♢



「改めて礼を申し上げますぞ、ユウイチ様、シルヴィア様、ユリス様」


 村に戻った後村人たちは大喜びし、涙を流す人が続出した。その後全員で救ってくれたお礼として、村を上げての宴が催された。あり得ないくらいたくさんの料理が振舞われ、その全てが実に美味い。悠一たちは一つ一つに舌鼓を打っていた。


 そうしていると村の村長がやって来て、深々と頭を下げて礼を述べた。この村の村長は典型的な立派な髭のある人ではなく、六十代程度の人だ。


「いえ、俺たちは当たり前のことをしたまでですから」


「ですがそれでも、この村をお救いになったことには変わりまりません。本当にありがとうございます」


 村長はそう言うと、もう一度頭を下げて礼を述べる。少し照れくさくなるが、素直にその礼を受け取る。ちなみに報酬についてだが、それは既に話し合い済みで次の街までの食料とある程度のある程度の資金だけである。


 正式な依頼という訳でもないというのもあるが、元々当たり前なことをして大きな報酬を受け取るのは気が引けてしまうのだ。それはシルヴィアとユリスも同じのようで、悠一の考えに同意している。


 村人たちはどうしてもと必死に食い下がったが、シルヴィアがかなり高い話術を備えていたため、それであれこれ納得のいくような理由を付けて何とかその程度だけで済んだ。もし悠一だけだったら、若干押しに弱いので押し切られて大きな報酬を受け取ってしまっていただろう。


 言い方があれになってしまうが、シルヴィアがいてくれて助かったと悠一は思っている。ちらりと二人を見てみると、手にはお酒の入ったコップが握られており顔がほんのりと赤い。何度見ても大丈夫なのだろうかという気持ちが湧いてくるが、この世界では十五歳で成人だ。


 つまり、悠一たちがお酒を飲んでも全く問題はない。以前少し興味があったからつい頼んでしまったが、やはり現代日本に住んでいたためどうしても法律が頭に浮かんでしまい、それ以来本気で二人に勧められるまでお酒は飲まないことにした。


 今回はフルーツジュースを飲むつもりだったのだが、シルヴィアとユリスに少々押され気味に勧められ、度数の低い葡萄ワインを飲んでいる。美味いには美味いのだが、本当にいいのだろうかという気持ちがどうしても出てきてしまう。大分慣れて来たと思っていたのだが、こうしたところで大分違ってくるので慣れていないところも多そうだ。


 その後宴でワイワイと騒いで楽しんだ後お開きとなり、解散する。悠一たちは宿屋に戻り、風呂に入ってから一度悠一の部屋に集合し、明日の予定を話し合ってから解散した。


 ロスギデオンではシルヴィアとユリスが同じ部屋にいたため中々すぐに寝付けなかったが、今日は一人だ。意識する必要が無い為目を閉じ嗚呼とすぐに眠気が襲い掛かって来て、その後意識を失うように眠った。

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