68 新種のモンスターとの戦闘
更新遅れてしまい、申し訳ございません! 少々リアルの方が忙しくなってしまっておりました! もしかしたら更新するまでに日が空いてしまうことがあるかもしれませんが、そんなに長くしないつもりでいます。
「ほ、本当ですか!?」
悠一が依頼を受けると言うと、皆が嬉しそうな表情になる。
「はい。怯えている人たちを放っておくなんてことは出来ませんし。二人もそれでいいよね?」
「嫌だと言ってもユウイチさんは残るんですよね? まあ、私も断るつもりはありませんけど」
「ボクも断りません。ボクもそのモンスターのことは見過ごせませんから」
シルヴィアとユリスもその依頼を受けることになり、悠一は微笑を浮かべながら小さく頷く。周囲にいる村人たちは、助けが来てくれたと大いに喜び中にはもう抱き合って泣いている人もいる。だが中には、本当に悠一たちに任せて大丈夫なのかと、疑問に思っている人もいる。
確かに三人は成人したばかりの、若い少年少女たちだ。腕のいい冒険者とは言っても、まだ若いのでい命の危険が迫ったらそこで逃げだすのではないかと、不安に思っているのだ。人間というのは、本気で命の危険が迫ると、どんな強い人でも逃げだしたくなってしまうのだ。
そうならないのは、そうなるほど燃える戦闘狂な、ただただ自分の命に頓着が無い人だけだろう。悠一たちは自分の命に頓着が無い訳ではないが、既に覚悟を決めている。全力で戦って、それでも勝てないのであれば死を受け入れるつもりだ。些か心残りがあるのは否めないのだが。
「あの怪物を倒してくださったら、私たちの全財産をあなたたちに差し上げます。なので、どうか―――」
「あーっと……、俺たちは正式な依頼を受けている訳ではないので、そこまでの報酬はいらないですよ。旅をするのにそれほど困らない程度の物でいいですから」
そもそも悠一たちは海洋都市に向かう途中なのだ。クエストなんて受けていられない。なので、報酬無というのは流石になしにするが、それでもそんなに多く貰うつもりはない。悠一にとっては、当たり前なことをしたまでなのだから。
とりあえず村からの依頼を受けた悠一たちは、そのまま放置されている馬車と持っている荷物を宿に置きたいので、村にある宿まで移動する。宿代はいいと言われたが、流石にそれは悪いと食い下がり何とか三割引き程度の金額で収まった。
もちろん部屋は悠一は一人で、シルヴィアとユリスは同じ部屋だ。興味がない訳ではないのだが、一緒になると意識してしまい眠れなくなってしまう。そうなると寝不足になって、最悪明日に支障が生じてしまうかもしれない。
そうなったら一大事なので、別々の部屋なのだ。それ以前に、男女が同じ部屋というのは色々とマズい気がする。二人が着替えているところを覗いてしまったという過去があるので、一緒になるとどれだけ危険なのかは身を以って知っている。
そう思うと、ロスギデオンではよくもクエストの時にあまり支障が出なかったなと、悠一は自分自身に感心した。少し危ないところもあったのは、事実だが。
適当に荷物を置いた三人は、一度宿屋の一階に降りてそこで軽食を取ることにした。
「新種のモンスター、ですか」
「ん? どうしたんだ?」
軽食を食べ終え紅茶を飲んでいると、不意にユリスがそう呟いた。
「いえ、ただ最近図鑑にすら乗っていないような、新しいモンスターが多いなーって思っただけです」
「冒険者になったばかりだからよく分からないけど、やっぱり多いのか?」
「はい。そもそも新種のモンスターが発見されること自体がおかしいんです。今はモンスターが突然変異したという事例はありますけど、それでも結局根本的なところは同じなんです。なので、変異したモンスターは新種というよりも、そこから派生したモンスターと数えられているんです。その証拠に、図鑑は最新版ってなっていますけど、載っているモンスターの数は数十年前から変わっていないそうですよ」
「なるほどね。つまり、こんな短い期間で新しいモンスターが複数体発見されることが異常だって言いたいわけね」
この世界に来て一月程度しか経っていないが、言われてみれば確かに数十年間増えていなかったモンスターがこの短い期間で増えるのはおかしい。もしかしたら何かがあるのかもしれないと、悠一は直感する。
だが、これに関してはただ偶然そうなっただけなのかもしれないので、考えても仕方がない。この問題については、おいおい考えることにした。
紅茶を飲んだ後宿屋から出て広い広場で軽くストレッチをし、悠一は足場を作って上に移動する。そこから眺める森の景色は中々に絶景だったが、所々木々が消し飛んでいる場所があった。集中してみるが、魔力の反応は無かった。時間が経過してしまっているからだろう。
そこから三百六十度遠距離視認魔法を使って見回してみたが、特にモンスターの姿は見られなかった。一瞬だけ嘘なのではないかと思ってしまったが、建物があれだけボロボロになっていたし村人たちも本気で怯えていたので、流石にそれはないと否定する。
一通り見回した後悠一は階段状に足場を作り、それを下って行く。
「どうでしたか?」
下に降りると、シルヴィアが早速聞いてきた。
「視認は出来なかったけど、森の所々が消し飛んでいたよ。魔力の反応は無かったけど、きっと話にあったモンスターの仕業だと思う」
「そうですか。私たちも最大範囲で索敵魔法を使っていたのですが、反応は無かったです」
「多分、ボクたちの使う索敵魔法の範囲よりも外に生息しているんでしょうね。地面の中っていうのもあり得ますけど」
索敵魔法は優秀な魔法だが、決して万能ではない。地上に生息している生命や大気中にある魔力の恩恵を受けている物であれば探知は出来るが、地中だと感知は出来ない。理由としては、遮蔽物百パーセントだからだ。
当たり前だが、地面には隙間が全くと言っていいほどない。ほんの少し、それこそ数メートル程度であれば感知出来るが、十数メートル単位となると何も分からなくなる。なので、話にあったモンスターが索敵できないのは、範囲よりも遠くにいるか地面の中に潜っている可能性がある。
前者であれば走り回っていればいずれ範囲内に入り込むが、後者だとどうしようもない。一応話で、毎日日が暮れて月が昇った時に現れると言うので、その時になるまで待つしかない。
悠一たちもそのモンスターが、自分からやってくるまで待つつもりでいる。自分たちで探しに行った時に、行違えてしまったら被害が出てしまう。それだけは避けたいので、そのモンスターが来るまで待機する。
その時間になるまでやってこないと言っているが、もしもの可能性もある為警戒はずっと怠らない。村を見回るつもりでいるが、索敵魔法を常に全開にしておくつもりだ。
「まだ時間はたくさんある。一応姿が分かっている訳だし、そこから予想出来る範囲でいいから作戦を立てておくか」
「そうですね。それでは、作戦会議です」
広場のベンチに腰を掛けて、三人は姿が分かっているだけのモンスターの攻撃パターンなどを、その姿から予想出来る範囲でだが想定してその対処法や、戦い方などを話し合い始める。
♢
村にやって来てからしばらくしてから、太陽が西に傾き日が暮れた。そろそろモンスターが襲撃を仕掛けてくる時間帯だ。作戦を立て続けていた三人は途中で会議を中断し、決めきれなかったことはもうぶっつけ本番で行くことにした。
大分無謀なことだが、実は意外と上手く行くことが多い。それはひとえに、三人がお互いを信頼し合い高い連携能力があるからである。とは言っても、今まで上手く行っていたとしても今回もまた、上手く行くとは限らない。
なので作戦を考えていたのだが、その作戦が使い物にならないと判断したらいつも通りの戦い方になる。
「……索敵には反応が無いな」
「不思議なくらい静かですね……」
待ち始めてから少しして、索敵を発動させた悠一がそうぼそっと呟き、シルヴィアがそれに続いて口にする。確かに、不思議なくらい静かだ。
本当であれば森から梟の鳴き声や、虫の合奏が聞こえてくるはずなのに、今は全く聞こえてこない。これも恐らく、そのモンスターの影響なのだろう。不気味に思いながら警戒し、悠一は瞬爛の柄に右手を掛けシルヴィアとユリスは杖をぎゅっと握り直す。
悠一は目を閉じて神経を研ぎ澄ませ、耳を澄ませる。涼しい夜の風が吹き抜けていき、草花が揺れる音が聞こえる。とても心が落ち着くような音ではあるが、よくよく聞いてみると何かが迫っている音が聞こえて来た。
その音を聞いた瞬間に目を開いて索敵魔法を広げると、そこには反応があった。シルヴィアとユリスも同じのようで、真剣で緊張した表情になる。三人はアイコンタクトを取ると同時に小さく頷き、身体強化を掛けて門の方に走って行く。
門に着くと開くのを待たずに飛び越えて、反応のあった方に向かって疾走する。ユリスの【エクエスベネディクトス】も掛かっている為、森の木々が流れるように過ぎ去っていく。数十秒走っていると、まだ先だがモンスターの姿が見えた。
話に聞いていた通りの姿をしており、まんま翼の無い竜だ。
「目標確認。まずは様子見だ」
「「了解!」」
悠一がそう言うとシルヴィアとユリスはその場で急停止して魔力を集中させ、悠一は瞬爛の柄に手を掛けてそのまま走って行く。存在に気付いたモンスターは血のように紅い目をギョロリと向けると、口を大きく開けて早速炎の塊を吐いてきた。
「いきなりかよ!?」
【縮地】で上に跳んで躱し、そこから鋼の槍を数十本構築して全て放つ。放たれた槍は違わず命中するが、流石はドラゴンと言うべきか。硬い鱗で身を守っている為、全く刃が通っていない。
地面に着地して刀を振るうが、やはり同じだ。だが、ここまでは予想通りだ。鋭い爪の生えた右の前足を振り上げて、勢いよく振り下ろしてくるが紙一重で躱して連続して斬撃を叩き込む。高い鱗で防がれるが、かなり強く叩き込んだため鱗には小さな傷が付いている。
その傷が再生しない辺り暴食のグラトニアよりはマシの様だが、倒すのにはかなり時間が掛かりそうだ。そう分析しながら噛み付きや前足の攻撃を躱し、一度距離を取る。そこにシルヴィアとユリスの魔法が叩き込まれる。
シルヴィアは杖とその素材を使っているブレスレットの両方を使って魔法を放ったようで、【フィンブルランサー】の数が非常に多くなっていた。もう既に、同じ魔法ではあるが二つの媒体で魔法を使えるようになっている。
天才なのではないかと思い苦笑を浮かべ、巨大なプラズマを上に発生させてそこから雨のようにレーザーを撃ち落とす。それと一緒にユリスの【シャイニングレイ】も放たれ一斉に襲い掛かるが、決定的なダメージは通っていない。
「うへぇ……、この硬さは流石に予想外だ」
「ボクの光魔法の通用しませんね……。下手すると、戦略級魔法を使わないといけなくなるかもしれません」
「使った瞬間、間違いなく森が消し飛ぶと思うけど、そうでもしないと倒せないと判断したら使っていいよ」
「分かりました。使うとしたら、氷戦略級魔法の【コキュートス】にしておきます」
「名前からしてヤバそうだけど……、まあ後で俺の分解と再構築で森を元通りにすれば大丈夫か」
ユリスが口にした戦略級魔法は、広範囲に巨大な魔法陣を広げその内部にいる物全てを絶対零度で氷結させる魔法である。この魔法を使われたら、体の全組織が氷結し最終的には塵となって消え失せる。仕様を変えれば、魔法陣から氷が出現しその中に閉じ込めるという形になる。ちなみにこの魔法から分岐している魔法に【二ヴルヘイム】という魔法がある。
これも戦略級魔法である。効果は、広範囲に広がった魔法陣の内部にいる存在全てを、氷の槍や剣といった鋭利な物で刺し貫くという魔法だ。ユリスは【ムスプルヘイム】と【コキュートス】しか使えない為、【二ヴルヘイム】は覚えていないが、使えたらかなり恐ろしい。
やはり戦略級魔法というのは、出鱈目な物が多いなと思いながら攻撃を掻い潜り、強く刀を打ち付けていく。幸いこのモンスターは動きが鈍く、攻撃が見切りやすい。悠一の持ち前である素早さがあれば、攻撃は喰らわない。
しかしいくら速いとはいえ、過信と油断はしない。何が起こるか分からないからだ。繰り出されてくる攻撃をやり過ごし、攻撃を叩き込む。時折距離を取り、圧縮したガスによる爆発を引き起こす。
多少のダメージが入ることを期待したが、少し鱗が焦げただけで全く入っていなかった。あまりの硬さに内心舌打ちをし、素早さを加速させる。早さが加算され鋭さの増した斬撃は、しかし変わらずダメージを入れることが出来ない。
以前まで使っていた名の無い刀では、もうこの時点で折れていただろう。改めて、強度上昇の魔法の掛かっているこの新しい相棒に巡り合えて、本当に良かったとエルフの里の村長であるアーネストに改めて感謝した。
今更なのですが、Twitterをやっております。@Lunatic00882652←これが私のTwitterアカウントです。よろしくお願いします!
追記:戦略級魔法の所を、変更いたしました。




