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49 スキルについて

 悠一とシルヴィアがBランクに昇格してから、三日が経過した。この三日間は、もちろんだがクエストなどに勤しんだ。受けているクエストは、BランクかAランクかのどちらかと、統一されていない。


 ランクが昇格した次の日にBランクを受けたが、思っている以上に強力なモンスターが多かった。そしてその一個上のランクであるAランククエストは、Bランクよりも圧倒的に強力なモンスターが多かった。あまりにも強く苦戦はしたが、三人の連携で何とか倒すことは出来た。


 ただ、毎回あんな強力なモンスターと戦っていては体が持たない可能性があるので、Aランククエストは週に二回だけにすることにした。ユリスも主にAランククエストを受けていたが、元々ソロ活動だったので週に三回が限界だったようだ。


「Bランクになってから、ここまで強いモンスターの討伐依頼が出てくるなんてな~」


「ダンジョンに潜った時にも何種類かと戦いましたが、あれでもまだ一部だったんですね」


「この三日間で戦ったBランクモンスターは、数十種類いる中の内のほんの一部ですけどね。ボクは全種と戦ったことはありますけど、Bランク中級の上位モンスターとは二度と戦いたくないと思いましたね……」


「ユリスにそう言わせるとか、どんだけ強いんだよ……」


 三人は朝に一つのクエストを受注してそれをこなし、今は街の中で昼食を取っている。相変わらず男性(稀に女性)からの視線が痛いが、変わったこともある。


 それは、同ランクの冒険者や上のランクの冒険者に、よく絡まれるようになったことである。実は悠一は八十七位、シルヴィアは九十位に冒険者ランクに序列入りを果たしている。


 冒険者序列というのは組合に登録している冒険者が、どれだけのクエストをどれだけの早さで達成したか、またそれ以外でもどれだけのモンスターを狩ったのかを数値化し、クエストの達成数とモンスターの討伐数で決まる物である。


 序列入りを果たしている冒険者はかなりの数を倒しているので、それに名を連ねようとしても中々出来ない。そんな序列に、新人二人が既に名を連ねている。まだ序列入りしていない冒険者や、必死になってやっと序列入りした冒険者からは、あまりよく思われていないようだ。


 あと、もちろんだが美少女二人と一緒にいるのが許せないというのもある。冒険者になって戦いの中で、ラノベであるあるな出会いを求めている男性は多いようである。悠一もまさしくそのあるあるに遭遇した結果、シルヴィアとユリスと出会った訳だが。


「この後どうしますか?」


「そうだな……、もう一回クエスト行っておく?」


「一回くらいなら、大丈夫です。ユリスは?」


「ボクも大丈夫です」


「よし、じゃあ少し休んでから組合に行くか」


 午後の予定を決めて、残った昼食を平らげる。サービスとして運ばれてきた紅茶にデザートを食べ、シルヴィアとユリスが嬉しそうに食べている時、あることを思い出す。


(そう言えば、最近あまり自分のステータスを見ていなかったな)


 今の自分がどれほど強くなったのかが気になり、ステータスを開いてみる。


 ユウイチ・イガラシ

 LV 81

 HP 1185/1285

 MP 1864/2115

 EXP 15372

 NEXT 14695

 ATK 647

 DEF 623

 AGI 807

 INT 731

 魔法:分解・再構築

 スキル:魔力遠隔操作・天眼通


 レベルは思っている以上に高くなっており、魔力量も恐ろしいことになっていた。そして何より、スキルに新しい物が追加されていた。


(この天眼通、どんな能力があるんだ?)


 どんな能力なのかが気になってしまうが、これはゲームと違ってクリックしてもその詳細が出てこないという、中々に不親切なのだ。しかし、少し考えているとそれが何なのか、なんとなくだが分かった。


 ここ最近、敵の次の動きが分かるようになったのだ。前から次を予想してそれに対処していたが、グラトニアを倒した辺りから次の動きが確実に分かるようになった。なので、新しいスキル【天眼通】は、次の動きを確実に見切るスキルだと推測する。


「なあ、ユリス。一つ聞いてもいいか?」


「何ですか?」


「君って、スキルってのを持ってる?」


「スキル、ですか? 四つほど持っていますけど」


「四つって……、まあいいや。それで、どんな能力?」


「一番最初に覚えたのは、実力に応じて魔法の詠唱を破棄するという【詠唱破棄】、一つの属性に特化させる代わりに他の属性が使えなくなる【限定属性】、一定距離を姿を眩ませて移動する【ミラージュステップ】、放たれた魔法に直接干渉して霧散させる【魔力霧散】、ですね」


「……【ミラージュステップ】と【魔力霧散】は反則じゃないか?」


「ユウイチさんに言われたくないです」


 ユリス自身もこれは反則スキルであることを自覚はしているが、悠一は魔法の特性上魔法を分解することも出来るし、【縮地】で超高速移動を行える。【ミラージュステップ】はあくまで姿を眩ませた状態で一定距離進むだけなので、その間だけ無敵という訳ではない。


 その時に広範囲の魔法を撃ち込まれれば、もちろんダメージを受ける。それに対し悠一は、広範囲の魔法を撃ち込まれても分解して無効化出来るし、【縮地】で一気に距離を詰めたり逆に離れたりすることが可能だ。


 簡単に言うと、スキルではなくただの魔法と技術でユリスの二つのスキル以上のことが出来るのだ。


「それで、どうしてそんなことをボクに?」


「俺も実はスキルと二つ持っててさ、能力が反則だったからもしかして全部こんなものなのかが気になってさ。その通りだったけど」


「どんなスキルです?」


「一つは【魔力遠隔操作】。自分の魔力を少量使用して、大気中にある魔力を集めてそれを魔法に使うってやつだ。もう一つは【天眼通】。これは俺もよく分からないけど、多分敵の次の動きを確実に見切る為のスキルだと思う」


「ユウイチさんにはぴったり過ぎるスキルですね……」


 特に【天眼通】は剣士である悠一にとっては、圧倒的に有利になるスキルだ。次の動きが分かれば、それに対応出来る。それに速く対応出来れば、その分反撃しやすくなる。そして反撃しやすくなる分、仲間二人を危険に晒さなくても済む。


 悠一本人はそう思っている程度だが、確実に攻撃を見切るスキルとなると、それは全スキルの中で最もレアな物に含まれる、【未来予知】に匹敵するかもしれない。過去にこれを手にしたのは件の唯一のZランク冒険者だけだが、これを駆使して数多くの戦いを無傷で勝ち抜いたという伝説が今でも残っている。


「まあそれは置いといて、スキルの取得条件っていうのが何だか分かる?」


「いえ、スキルというのはランダムのような物だったはずです。後は、前衛職か後衛職かによって変わってきますね。ユウイチさんは両方やっているので、前衛と後衛のスキルを手にしたのかもしれませんね」


「なるほどね」


 剣士と魔法使いの両方をやっているからこそ、両方を手に入れた。両方をしている人間は少ないが、それでもこういうことはあるそうだ。それと、もう少し聞いたらスキルの取得には上限が無い。今現在最高ランクのSSSランクで序列一位の冒険者は、十二個ものスキルを所有している。


 そのどれもが強力な物であり、折り合いの悪い軍事国家やひたすら侵略行為をしてくる帝国との戦争になった時は、最終戦力といてカウントされている。しかし、十二個ものスキルを手にするとなると、一体どれほどの死線を潜り抜けて来たのかが気になる。


 そんなことを考えつつも今日はどんなクエストを受けようかを考え、サービスとして運ばれてきたデザートを平らげたところで、会計をして組合に向かう。昼時なので道は人でごった返しており、何回か人とぶつかってしまう。


 そうして少し時間が掛かって組合に到着し、真っ先に掲示板の所に行く。BとAの方に貼り出されているクエストはどれも討伐数こそ少ないが、難易度は高い。舐めて掛かると間違いなく返り討ちになってしまう。なので慎重にクエストを選ぶ。


 どれにしようか視線を巡らせていると、Aランククエストの方に気になるクエストがあった。


 西にあるエルフの里の防衛 Aランク 報酬/1853460ベル。


 あり得ないくらいに報酬が高いというのもあるが、最も目を惹いたのはエルフという文字だ。街ではよく弓矢を持っていたりローブを着ているのを見掛けるが、間近で見た訳ではない。これを受ければ、ファンタジーで最も有名かもしれないエルフに会える。


 ちょっとした憧れを持っているので、悠一は早速それを掲示板から剝してカウンターに持っていく。


「これの受注をお願いします」


「あ、ユウイチさん! また凄いクエストを受けましたね」


「防衛と書かれているので、無視は出来ませんよ。命優先です」


「相変わらず、素晴らしい心構えですね。少々お待ちください」


 発行書を受け取った受付嬢は判子を取り出して、発行書にぽんっと押す。


「はい、それではユウイチさん、無事に帰ってきてくださいね」


「分かりました」


 軽く言葉を交わした後、悠一たちは組合から出る。そして防衛となっているので、何かしら命にかかわることが起こるかもしれないので、身体強化を掛けて全力でエルフの里がある西門に向かって走って行く。

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