0 プロローグ
初投稿となります! 拙い文章ではありますが、楽しんでいただけたら光栄です!
「っという訳で、お前さんは死んでしまったのだ」
「その前にまずここがどこで、そしてお前が誰なのかを説明しやがれ」
どこまでも続くであろう白い空間。そこに少年、五十嵐悠一と、見た感じ明らかに年下である少女がいた。悠一は意識を取り戻した時、既にこの白い空間にいた。そして目の前には背中から翼が生えている金髪碧眼の美少女がいた。
誰なんだろうと思いながら起き上がり、座るようにと勧められた椅子に腰を掛けた途端に、いきなり死んだと聞かされた。この時悠一は、『こいつ、頭イカれているんじゃねぇの?』と非常に失礼なことを考えていた。
「そう言えば忘れていたのだ。今私と君がいる場所は天界という場所で、私は転生の女神セリスティーナなのだ。気軽にセリスと呼んでくれたまえ」
目の前にいる美少女、改め女神セリスティーナは、自慢するかのように胸を張りながら自己紹介をする。
「なるほど。で、どこまでが本気だ?」
「全て本気なのだ!」
しかし悠一はそのことを信じなかった。しかし、悠一のこの反応が一番正しいだろう。
「お前さんは間違いなく死んでしまい、その魂がここに流れ着いたのだ! これは間違いなく真実なのだ!」
「そんなこと言われても実感ないよ。もしここが本当に天界だったら、何か証拠見せろ」
「むぅ……、そこまで言うなら仕方がないのだ……」
セリスはそう言うと腰を掛けていた椅子から立ち上がり、右手を上に翳した。その直後、その右手から幾何学模様の陣が出現し、そこから普通ではありえない黒色の雷が放たれた。
一瞬CGとかではと思ったが、それにしてもあまりにもリアルだし体が若干痺れている。間違いなく地球ではありえないような物だ。
「い、今のは……?」
「これは魔法という物なのだ。君たちの住む地球の人間には使えないが、私たち天界に住む者や別世界に住む者は使えるのだ。どうだ、これでここが天界だと納得してくれたか?」
「まあ、一応」
未だ実感がないが、とりあえずここがセリスの言う天界であることを認めた。
「それで、ここが天界なら俺はどうして死んだんだ?」
「学校からの帰り道、一人で歩いている時にトラックに轢かれたのだ。打ち所が悪かったのか、即死だったようなのだ」
「マジかよ……」
悠一はよく異世界転生物の小説を読んだりするが、その多くはトラックや車などに轢かれてしまうという、所謂トラック転生である。まさか自分がそれを経験してしまうとは思っていなかった。
「実言うと、その事故は我々神の不手際による物なのだ」
「え? てことは、神のせいで俺死んだってこと?」
「そうなるのだ。実に申し訳ないのだ」
セリスはそう言うと再び椅子に腰を掛けて、頭を深々と下げる。
「故に、君には異世界に転生してもらうことにしたのだ。これはせめてもの罪滅ぼしなのだ」
「異世界転生って……、まあ別にいいけどさ」
「ちなみに転生する際、お前の望む特別な能力を授けることが出来るのだ。そうでないと、転生した後すぐに死んでしまう可能性だってあるからな」
それを聞いた悠一は、これまた定番な物だなと思った。しかし、それと同時にどんな能力を貰おうかと考え始める。
色んなファンタジー小説を読んでいるので、結構候補が挙がってくる。未来予知能力、時間操作能力、イメージした物を魔法に変換する能力等々。
他にもいろんな候補が挙がり、十分間悩んだ末、悠一はどんなものにするのかを決めた。
「じゃあ、分解と再構築能力で頼む」
「これまた反則級な能力を求めて来たな……。まあいいのだ。とりあえず転生した時にはその魔法が使えるようにしておこう。後は向こうの言語だが、話す分には問題ないのだ。問題は書く方だが……、最低限書くことの出来る知識があれば大丈夫か」
セリスはそう言いながら右手を悠一の頭に伸ばす。するとその右手にほのかな光が宿る。
一瞬何事かと驚いたが、その光は妙に心地よく感じる。悠一はその心地よさに目を細める。
「よし、まずはこれで大丈夫だろう。心の中でステータスと念じてみるのだ」
言われた通りにステータスと念じてみると、視界にゲームなどでお馴染みのステータスウィンドウが写りこんだ。
ユウイチ・イガラシ
LV 1
HP 50/50
MP 150/150
EXP 0
NEXT 15
ATK 27
DEF 9
AGI 31
INT 29
魔法:分解・再構築
ちゃんとHPやMPなどが表示されており、中々に便利だなと思う。それと同時に、MP(魔力)とAGI(素早さ)が思っていた以上に高いことに少し驚いた。MPが高いのは恐らくだが、分解と再構築の魔法を使う魔力量が多いからだろうと考える。
「ちなみにその魔法には質量変換と物質変化の能力も備わっているのだ。上手く活用すれば、恐ろしく強力な魔法なのだ。ただし、使い方を間違えないでくれたまえ」
「分かった」
悠一がそう返事をするとセリスは再び頭に右手を伸ばして、その手にほのかな光を宿した。再び心地よさに目を細めていると、唐突に意識が薄れ始めていった。
「意識が途切れて次に目を覚ました時には、既に転生を終えているのだ。場所は結構適当に選ぶから、そのことには文句を付けないでくれたまえ」
そう言われるも悠一の意識は殆ど薄れており、反応することが出来なかった。やがて、視界が真っ暗になり意識が途絶えた。