私は今日からこの大学に配属された講師の・・・
とりあえずここから始まります。
俺は、榎宮 千春
今日付けでこの大学に入学することになったピチピチの大学生だ。
正直言ってこの大学に入ったのは、まだ働きたくないってのが半分と、割のいい仕事につけたらいいなってのが半分の理由で、死ぬほど勉強して入ったんだけど。
まあ、入ったのはいいけど、やりたいこともなければ目標もないからふっつーなキャンパスライフを送って、記憶にも残らずにおさらばする予定なんだけどな。
それに少しは期待していた入学式も普通だったし、日本有数の私立大学ってわりにはパッとしない。
唯一良い所は、見渡す限り可愛い女の子がいっぱいいるってところかな。
ははっwそれにしてもなんでこんな感じで説明してるかって?それはな・・・・・・
「話し相手が居ねぇからだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
と、男子トイレ内に反響する叫び。
入学式終わりの説明会でも、アウェイ。
同じゼミになるメンバーとの顔合わせでも話しかけられず。
結局放課するまで、誰1人として名前を覚えることが出来なかった。
やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!
このままじゃ、まるで勇者でもないのにたった一人で魔王討伐に駆り出された遊び人のようなキャンパスライフになってしまう。
どうにかして友達のひとりやふたりは作らないと!
ってか、そもそもこの大学に同郷のやつなんて居ないし、会話の始め方も繋ぎ方もわからねぇ・・・
あれ?友達ってどうやって作るんだっけ。
何故か目の前がボヤけて見えるので、こんな所に長居しては目が腫れると思い、そっとトイレ内の個室のドアを開け、男子トイレから出ようとした時。
「・・・・・・あ?・・・・・・」
「・・・・・・・・・はい?」
つい何も聞かれていないのに聞き返してしまった。
そこには、男子トイレの前で大量の紙を撒き散らした状態のめちゃくちゃ美人の見た目は20代中盤になるであろう女の人がいた。
しかもこっちにお尻を向けてその散らばった大量の紙を拾う体制でだ。
相手はスーツを着ていてフレアスカートであり、運の悪いことにそれが見事にめくれていた。
まったくもう、どうしたらこんな風にめくれるのか知りたいね。
「とりあえず、そのあからさまな視線を別のところに逸らしてくれないかな?」
と、睨まれた。
「あ、はいっ!すいません!」
咄嗟に後ろを向き今の状況を頭の中で整理する。
「・・・・・・まったくもうどうしてそうあからさまに人様の臀部をジロジロと見られるんだ、恥じらいや慎みというものを知らないのか・・・・・・」
なんかぶつぶつ言われてるけど、気にしたら発泡スチロール並のハートがミキサーにかけられてしまうから、意識をそらそう。
とりあえず、俺の溜まりに溜まったストレスをトイレ内で叫ぶことにより発散させたあと、トイレから出てきたらこの女性が紙を撒き散らしてスカートめくりあげた状態でこっちにケツ見せていた、と。
・・・・・・ん?俺、誘われてる?
放課したあとの、誰もいないトイレ
スカートがめくれた美女
ここには、俺とこの人だけ・・・
「あれ?やっぱりこれって誘われてる?」
「君は何を独りでブツブツ言っているんだい?」
「すみません、その一人って言葉が俺には辛くて少し泣きそうです」
「君は大変不思議な人のようだね」
少しため息を吐いて呆れたように言う。
「それにしても、君はいつまで後ろを向いているんだい?人と話す時は目を見て話せと教わらなかったのかい?」
「理不尽だっ!」
そう叫び少し目尻を釣り上げて後ろを振り向く。
すると、黒髪ロングで銀縁のメガネをかけた目つきの鋭い女性がこちらを思いっきり睨めつけるように立っていた。
「大変申し訳ございませんでしたっ!」
俺は流れるような動きで土下座を敢行する。
「き・・・君は、何をしているんだね」
「い、いえ、私は貴女様へ対して大変失礼な行為を取ったと思い謝罪を致した所存です」
「口調が変だぞ、それにしても、さきほどはトイレの中から叫び声が聞こえてきてな。驚いて手に持っていた書類を落としてしまったんだよ、なにか身に覚えはないかい?」
あー、それかんっぜんに俺だ。俺の声だ。
「その、トイレ内から聞こえた声は俺の声だと思います」
「そうか、次から気をつけるんだぞ?」
と、注意されてしまった。
だが心の中のもやは解けない。
この人は誰だ?
「はい・・・すみません。ところで、貴女はどちら様でしょうか?」
「なんだ、知らないで話していたのか、ということは新入生かい?」
その口振りだとこの学校では相当有名らしいな。
「すみません、名前を聞いてもいいでしょうか」
すると女性は今まで俺に向けていた鋭い目つきが和らぎ、微笑みを浮かべた。そう、まるで下界に降りてきた天使のようn・・・
「さては君、入学式でちゃんと話を聞いていなかったな?」
からかうような口調で俺に話しかけてきた
そのハープのような声音とその神々しいまでの笑顔は見るものを癒し、その光が溢れんばかりのプロポーションは人の心を鷲掴みにすr・・・
「君、話を聞いているのかい?おーい、君?大丈夫かい?おーい!」
そして艶やかな髪はまるで雪解けの氷水が流れる川のよう。そしてその麗しき目はまるでゴキブリや害虫を見るような嫌悪感溢れる・・・
「はっ!!すみません!聞いていませんでした!!!」
「そ、そうか・・・生まれてこの方無視されたのは初めてだよ」
すこし拗ねたようにつぶやいた美女。
「あ、すみません。名前を聞いてもいいでしょうか」
「そうだね、私は君と同じく今日からこの大学に配属された講師の・・・」
これが俺の大学生活で、退屈という一言を忘れるような日々を送ることになった原因の『恋愛講義』とその講師との初めての出会いだった。
なおこの段階で講師の名前は決まっていない模様