弾ける口角
フィクションです(汗)
いつもよりなんだか楽しい気分。
擬音語ならきっと『ルンルン』って言葉になるかも。
仕方ないじゃん、恋したんだもん。
「なんか嬉しそうじゃん?」
そうやって聞いてくれるキミ。
毎回訊いてくるよね。
でも、それがすっごくうれしい。
「そうみえる?」
キミを試すように首を傾げてみる。
分かってほしいな~。
「なんか良いことでもあった?」
分かってくれてないな~。
なんでかな。
あたしだってなんて言えばいいかわかんないけどね。
「当ててみて!」
きっと当たらない。
だけど、当てて欲しい。
もっと当てやすくしてもいいけど、つまんない。
それで当たっても面白くなんかないよ。
だって、ヒントなしでわかってくれたらさらに好きになれそうなんだもん。
「あー……わかんねえわ……」
諦めるのはやっ。
でも、ここまできたら何か答えて欲しいかな。
「じゃあね、ヒント! いつも近くにいます」
大ヒントだよ。
ほら、答えちゃってー。
「あっ、そうか」
そうです、そういうことです。
さあ、あたしの期待に応えてください。
「お父さんの誕生日、とか?」
なんでやーい。
もー、あのさー、なんで自分のお父さんの誕生日で学校の中をはしゃぐ高校生がいるの。
別にお父さん嫌いじゃないけど、そこまでお父さんが好きってわけでもないよ……。
「違うって~!」
「あ、それともお母さん? 他には……弟もいたっけ?」
あ、だめだ。
これ泥沼化してきたね。
諦めよう。
「わかんねえわ。もう答え教えてくれよ」
「だーめ! もう時間切れです。また次回に持ち越しとなりました~」
「なんだよ、それ~」
でも、いいんです。
こうやってキミと話せたことが何より嬉しいの。
ありがとう。
この距離感がとても好き。
成立してないけど、なんとなくそれっぽい関係に見えるこの感じ。
この先に進みたいけど、ここで留まっていたいって気持ち。
中途半端でもあたしにとってははっきりしてる想い。
キミがそのうち気付いてくれたらいいな。
だけど、あたしからはぶつかりたくない。
自分勝手だけど、それが本音。
「誰かにとられちゃうかな……」
ぼそりと出た言葉。
きっとあたし……の口から勝手にこぼれちゃった。
「そんなことないだろ」
びっくりしてキミを見る。
でも、キミはあたしの横を歩きながらあたしを見てない。
まるで何も言ってないみたいに。
「どうした?」
「う、ううん……」
首を横に振る。
顔が自然と俯いちゃう。
……ずるいなあ。
「保健室行く?」
「なんで?」
「急に熱上がったみたいだけど?」
あたしは顔を隠してキミの背中を叩く。
変な気の利かせ方にちょっと笑うけど、恥ずかしさが毛穴のあちこちから噴き出しそう。
「そんなんで保健室行かないから! それより教室連れてって!」
「ん、わかった」
キミは頼んでもないのにあたしの手を引いていく。
本当にずるい。
「……大嫌い……」
「はっはっは」
精一杯の仕返しも笑い飛ばされちゃったけど、もういいや。
とりあえず教室に着くまでは落ち着いていたらいいな。
だって、きっとあたしは笑ってるから。
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