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6.悠希 〜女子校

悠希(ゆうき)! 部活は?」


慌てている俺にナオが声をかける。


中学からの親友だ。


「ごめん、言い忘れてた。 今日はパス! この間の検査結果聞きに、病院行かなきゃなんないから」


「それだけ元気なら、問題無いって」


「まあ、これも親孝行のうちってとこかな」


「悠希が、親孝行とはね」


「たまにはね。 じゃぁ、バーイ! あっ! 部長に言っといて」




鞄を持って、俺は教室を飛び出した。


「悠希さまぁ〜、バスケは?」


体育館とは反対の方向へ歩き始めた俺に、廊下でたむろっていた女子たちがキャーキャーと騒ぐ。


「またね!」


俺がウインクを投げかけると、黄色い歓声はさらに大きくなった。

これじゃ、まるでアイドルだね、俺は苦笑した。


まあ、この状況を幾分楽しんでもいるし、反面わずらわしいと思うこともある。





もともとこのお嬢様学校を選んだのは、俺の男っぽい性格を危ぶんだ両親だった。


中高一貫である女子校に入れれば、少しは女らしくなるであろうというありがた〜い親心から、俺を無理やりここに閉じ込めたのである。


もし、この様子を見たら、自分たちの選択が誤っていたのではないかと大いに悩むに違いない。



だいたい女ばかりというのは、かえって恥じらいというものを無くすみたいだ。


暑い日にはスカートの裾をバタバタさせて涼んだり、大声で彼氏とあったことを話していたり、そばにいるこっちの方がなんだか恥ずかしい。



だが、まあ初めのうちは嫌々だった女子校生活だが、今では大好きなバスケをやって、それなりに楽しんでいる。





高等部になって一年のうちからレギュラー入りを果たした俺は、時々一部の先輩から嫌がらせを受けることもあったが、大半の人は優しくしてくれるのでそれなりに居心地がよかった。



自慢じゃないが、成績も常にトップクラス。


いやー、青春を謳歌しちゃってるってわけだ。




だが、俺は、ここが本当の俺の居場所でないことを知っている。


俺には、生まれる前の記憶がある。


それは、俺の本当に入るべきだった身体に、どじなあいつが間違って入ってしまったというもの。


だから俺は、仕方なくあいつが入るべきだった身体に入った。


ようするに、本当は俺が男で、あいつが女に生まれてくるはずだったのだ。



まあ、そんな話し、誰も信じちゃくれないけどね。


たぶん、あいつも信じちゃいない。


だから、そのことは転校して以来口にしたことはない。


それでもこれは紛れもしない事実だ、変えようがない。


もしも、あいつが、あの時、間違えさえしなければって思わないこともない。



だからと言って、俺はあいつのことを恨んではいない。


なぜなら生まれる前から、俺はあいつに好意を持っていた。


どうして、生まれる前からあいつが好きなのかわからない。


人はそれを“運命の人”と呼ぶのかもしれない。


でも、俺はそんなのどうでもいい。


ただ好き


ただ、あいつと一緒にいられるなら他のことはどうでもいい。



そして、いつまでも一緒にいられると思っていた。


だけど、それは、ほんの少しの間だけで、俺たちが小学校二年に、俺の家は引っ越してしまった。



それから一度だけ、一人であいつの家に行った事があった。


それから、あいつには会っていない。


小六の時、近くに越してきたのだから会いにいけないこともなかったのだが。





俺の本当の身体を持つ、(のぞむ)


望は、今、どうしているのだろう。


今でも俺が会いに行った日のことをこだわっているのだろうか?


それとも、俺のことをすっかり忘れているのだろうか。



しばらく思い出す回数が減っていたあいつのことを、この頃頻繁に思い出すようになった。


会ってみたいなぁ。



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