2.望 〜俺という彼 1
学校の帰り道、高校の側の広い公園を、ぼくは歩いていた。
駅まで少し遠回りなこの道は、お花見の季節ならいざ知らず、普段、高校の下校時間に利用する人はまずいない。
ぼくはこの静けさが気にいっている。
桜の木の仄暗いトンネルを抜けると、ちょっとした広場があり、急に明るくなる。
なんだかその光のギャップが、まるで瞬間移動でもしたかのような錯覚を与える。
そんなところもいい。
新緑のアーチを抜けて目の前が一気にひらけた。
弱まり始めた光の中、バスケットボールを一人追っている中学生位の少年がいた。
キャップを深くかぶりカーキー色で7分丈のショートパンツに白いだぶだぶのパーカーを肘までまくっている。
砂埃を上げで走り回る彼の姿は、まるでボールと戯れているような軽やかな動きだった。
彼の背丈はぼくと同じ位、たぶん、一六〇センチ弱ってところかな。
ぼくに気付いた彼は側に来ると、上から下まで睨め回すようにぼくを見る。
彼の人を射るような目付きに、ぼくは一歩下がった。
「可愛いじゃん」
拍子抜けした。
人を睨みつけておいて言うような言葉ではないし、まして男が男に言うセリフでもない。
「きみさぁ、バスケ好き?」
彼はぼくを挑発するように、ドリブルを始めた。
普段だったら、こんな見知らぬ少年のことなど無視して通り過ぎるはずだった。
なのに、今日は違っていた。
なんだか頭と関係なく、身体がついていってしまった、まるで条件反射だ。
ぼくは、あまり運動神経がいいとは言えない。
でも、なぜか球技は好きだった。
ただ、うまいとはいえないけれど。