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14.望 2 〜ラブレター 3

ベルが鳴って電車のドアが閉まろうとしていた。


彼女はぼくの手を引いて突然ホームへ飛び降りた。


彼女の行動はいつもジェットコースターのように、目まぐるしく変わる。


ぼくはジェットコースターの縁に捕まって、振り回されているだけのようだった。


それは、昔にもあったような、懐かしい感覚だった。


そういえばぼくは、子供の頃から自分から行動を起すと言うより他の人に巻き込まれるタイプだった気がする。


「じゃあね。 ここからだったらまだ学校間に合うだろ」


彼女が側にあった階段を駆け上がる。


「まって!」


思わず声をかけた。


このまま分かれたら二度と彼女に会えない気がして。


彼女は、突然現れて唐突に姿を消す。


名前も知らなければ、ぼくからは連絡の取りようさえもない。


「明日明後日と家の近所の神社がお祭りなんだ。 一緒に行かない?」


言ってしまってから、彼女と同じ制服の女子高生たちが辺りにいることに気付いて急に恥ずかしくなった。


ここは彼女の学校の乗り換え駅だった。


彼女は踊り場から振り向きざまに声を上げた。


日枝(ひえい)神社!」


「知ってるの?」


「明日のお祭りと言ったらそこだろ。 俺、前近くに住んでた」


そうなんだ。


ぼくは声にしなかった。


恥ずかしかったから。


「なあ、これって、デートの誘い?」


「えっ、あっ……違うけど」


口ごもった言葉が、彼女のところまで届いたかはわからない。


「じゃあ、俺のしょうしん(・・・・・)デートってことで」


ショウシン? 昇進、焦心……ああ、傷心。


「明日の土曜日、鳥居の前に四時。 キャンセルはきかないよ」


ぼくは、走り去って行く彼女を見送った。



あっ、ひょっとしてぼくは、彼女をデートに誘ってしまったというわけだろうか?


でも、ぼくは、そんなつもりは毛頭なかった。


ただ、このままあえなくなるのも淋しい気がしただけで……


その時、ぼくは手の中に残っている封筒の感触を思い出した。


甘い香りのするかわいらしい封筒を見つめながら思った。


ラブレターをもらった同じ日に、別の人をデートに誘うなんて、なんてぼくは不謹慎なやつなんだろう。


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