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赤い空、赤い影④

恐怖から解放された瞬間、我に返った勇騎は乗客の冷たい目と蔑むように見ながらも避けて降りて行く乗客に耐えられなくなり、逃げるように立ち去ろうと走り出す。

だが、マンションの時と同じように前方不注意、今度も何かぶつかり、またこけてしまう。

「きゃっ」

わざとらしいキャッという声にこの感じ、ぶつかったのは女の子だ。

その女の子からカバンからぶつかった拍子に何に使うものなのか大量のビー玉が転げ出す。

勇騎は謝罪もそこそこに、なんとか、線路に落ちる前にとそのビー玉を拾い集める。

周りの人はそんな二人を避けホームは二人だけになった。

倒れていた女の子は運転席から顔を出す車掌さんに、気にせず言ってもらっていいよと言うと、慌てる事もなく、線路に落ちて行くビー玉を眺めている

「あ、あの、本当にすみません、ごめんなさい、えっと、、、すみません」

それ以上の言葉が出てこない勇騎は必死に気持ちを伝えようとし、拾い集める事のできたビー玉を彼女に渡す。彼女はかばんを開き、勇騎はその中にビー玉を入れる。

「あの、駅員さんに頼んで落ちた分は拾ってもらいます。」

「うーん別にいいよ。転がって行くの綺麗だったし、それにほら、光にあたって、綺麗に光ってる。綺麗だよね、なんだかいいよねこういうの、線路の上にも載ってないし、いいじゃないかな、このままで、でも本当に綺麗だよね。小さな夕日が沢山あるみたい。」

不思議な全身黒づくめのゴスロリチックな女の子はしばらくそれを眺めな後、

立ち上ると初めて勇騎の顔をまともに見る。意外と身長が高く、勇騎は少し驚く

「あら、、あら、あら、これは、これはまたなんとも、運命を感じずにはいられないね。」

「あ、あの何か?」

勇騎は突然自分の顔を触られそうになれ、思わず引いてしまう

「あん、逃げなくていいのに、怖いことないのに、可愛いね。」

彼女はぶつかってしまった手前逃げる事の出来ない勇騎の周りを回りながら観察する。

そして再度触ろうとすると勇騎は再び素早く触ろうとうする手を避ける

「、、なるほど、女の子に触られるのに慣れていないの、初心だね~、

でもそんなんじゃ、そうやって奥手で何もしないうちに好きなあの子はお手付きに、、」

「!!何をいって何の話ですか?」

「良くある話さ、君もそうならないといいよね」

「余計なお世話です!なんなんですかあなたは?」

こちらの心を言い当てられているようで、傷口をえぐられているようで、

勇騎は罪悪感よりも不快感が勝り言い返す。だが、彼女はそんな彼の意など解さない。

「そんなことより、さっきの日食凄かったよね。まるで世界の終り、ねぇ君も見てた?」

「僕は、、まぁ一応。」

「綺麗だったよね。ねぇ、まるで世界が終わるような感じで、で、君?何したの?」

「な、何を、って何の話ですか」

「ふーん、心当たりがないならいいんだ、そういう人もいるし、そうならそうで、何も知らないならそっちの方がいい。

知っている?量子力学の世界では観察する事で初めて物が確定する。宇宙とは認識で、不確定なものなんだって。認識する事でそれは存在できるそれは別に特別な事じゃなくて、ミクロの世界に限った事じゃない。そもそも、気付きもしないならどんな事だってないも同じだよね。飛行機も蒸気船もない時代に地球の反対側で、どんなに幸せな事が起こっても、どんなに悲しい事が起こっても関係ない、それはどちらでもいい、どちらでもない」

「??」

「ふふ、そうだよね、いきなりこんな事を言われても困るよね。だからね、僕が言いたいのはつまりね、君が僕を認識でいたっていう事は、ただの偶然だといいよねっていう事」

「??」

「そうだね、あまり君の邪魔をしてもしょうがないよね。僕の名前は赤城澪。

あぁ、名のならなくていいよ、僕みたいな不審者に身元を明かすべきじゃないよね。

そうだ、いいものを上げる。」

そういって澪は一枚の名刺を差し出す。

「NPO非法人南条町都市伝説研究所、、、通称トケン?」

突っ込みどころがいろいろある、まず名刺なのに、個人名が書いていないし、、略称も自分で書いてるし最後の?マークはなんだよ。それにNPO非法人って、、だったら書かなければいいのに、それに町なのに、都市伝説って、怪しいというよりどうすればこれで何の身分を証明できるんだ。しかもこれ、なんで手書き?」

裏をめくると大人なクラブの名刺、それの裏に手書きでこんなに怪しいものを、、

勇騎はむしろそちらの方に惹かれるような気がしなくもない。

「それはお守り代わり、君が変わりたいと望むのなら、このままこれの事を忘れればいい。でももし今のままの君でいたいなら、ここにおいでよ

タダっていう訳にはいかないけど、きっと君の力になってくれるよ」

めんどくさそうにポケットにしまう勇騎に今までのふざけた口調をやめ、

澪は真剣な顔で警告する。

「捨てちゃだめだよ、それが一線を越えた君の最後の蜘蛛と糸だよ。

これも何かの縁。普通はここまでしないんだけど、君は特別。

最後にもっと顔を見せて、、、、ありがとう。それじゃ頑張ってね。

一度だけだから僕が戻せるのは、後は君次第、何がいいか悪いか自分で考えて」

勇騎の頭を撫でると、彼女は電車にもならずにホームから降りて行った。

「何だろう、あの人は、、、あれ、空が、、」

空の色が元に戻っている青い空、気分が悪くなりそうなくらい熱く輝く太陽。

「やっぱり頭がどうかしてたんだ、、もう今日は帰ろう、、独り言、、相当キテるな僕、、そういえばあの子、ビー玉の太陽を夕日みたいだって、、ま、いいか」

戻って来れた事を喜ぶ気持ちが3割、どうかしてたんだ、人って本当におかしくなれるんだと冷静に自分に落胆する気持ちが3割、さっきの女の子、変わった子だったけど、可愛かったな、それに自分の事を僕って言ったのも可愛いな、と思う気持ちが3割。

そして異世界が本当にあって、もう全部全部本当になってむちゃくちゃになりたいと思う気持ちが1割


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