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赤い空、赤い影③

エレベーターが止まり、開いた扉から外の景色が見える。

その空は血の様に赤い。さっきまで真っ暗だったはずなのに、、本当だ。

僕は異世界に来たんだ。恐怖と、そして満足感のある不思議な感情が支配する。

怖いはずなのに、自分はとんでもない事をしてしまったのに、でもこの気持ちは何だろう。

この後どうすべきか書いてはいないそこが異世界で、それだけだ。

本当ならエレベーターを降りるべきだろう。ここは存在しない階層。

その外がどうなっているのか、このエレベーターから降りて見てみたい。

でももう一つになる事がある。それは後ろにいた女性だ。

今は背中越しにその女性の気配を感じる、距離が縮まっている気がする。

振り返ってはいけない。それが今も有効なのか。どうなのだろう、それさえも分からない。

だが、勇騎はこの時、見てみたいという衝動と、振り返るとダメだと禁忌の感情。

その天秤の狭間で揺れ動いた。

見るな、降りろ、でも、、、、そんな事を考えていると、エレベーターのドアが閉まった。

そしてその扉のガラス越しに、彼は彼女の顔を見たような気がする。

「ちょっと、大丈夫?」

次に勇騎が、気が付いたのは年のいった女性に呼びかけられて我に返った時だ。

「あ、あの、」

気が付くと勇騎は、1階で防犯の為に自動で空いたままになっているエレベーターの中にずっと立っていた。

じっと動かない勇騎を心配して玄関を掃除していたおばさんが話しかけていた。

「あ、あの、、すみません、大丈夫です。」

何がどうなっている、僕は異世界に行ったんじゃないのか、

頭の中で状況を考えていると、勇騎の顔を覗き込んだおばさんが話しかけてくる

「あなた、ここの住民さんじゃないわよね。私ずっとここの掃除やっているけどあなた見た事とないもの、どこから入ったの?ちょっと管理事務所まで来てもらえる。

屋上で皆既日食を見ようって思ったんでしょ。でも、決まりだから、それに、、」

「あ、あの、ごめんなさい。」

勇騎はおばさんの制止を振り切って走って逃げだす。全部が嘘だったのか。

去り際に勇騎は申し訳ないと後ろめたさからおばさんの方を見るとエレベーターから赤色の影が姿を現す。

それを見た瞬間、勇騎は血の気が引き、飛んだ記憶がよみがえる。

あの影はさっきの女性。それが形を失いあのような姿になったと確信した。

そして扉越し見た彼女の顔、それは僕の顔、闇で目のない、まるで血を浴びたような僕の顔。それが今は形を崩して、僕を追ってきている。

勇騎はそれから目を離せず、だが、早く逃げなければ、、結果前方不注意の勇騎は思い切り玄関横のガラスにぶち当たる。ものすごい音がするが、流石は高そうなマンションガラスはびくともしていない。勇騎自信もさほどダメージはなく、すぐに扉をあけて出ていく

「ごめんなさい!、ホントごめんなさい!!」

勇騎が、もう一度謝為にエレベーターの方を見る。が、その時、既にあの赤い影はいない。

見間違えなのか、、心のどこかで安心しようとした時、勇騎は目の前の光景にもう一度恐怖を知る。そこに広がるのは赤い空の世界。上で見た時と同じ血よりも赤い空。

ここはどこなんだ、どうなっているんだ、マンションの前には、子供連れの主婦と思しき女性たちが日食について盛り上がっている。だが、今の空の事は気にしていない。

マンションの敷地を出て、大通りに出ても、誰も空の事を気にしていない。

自分だけがおかしくなっているのか、、、訳が分からない、

これが異世界なのか、僕が精神的にやられているのか、何がどうなっている。

勇騎はとりあえず落ち着ける場所を求めて、まだ昼を回ったばかりだが、唯一の絶対の安全の居場所である。自分の部屋に戻ろうと電車に乗る。

電車の中でも空は赤く。そして誰も気にかけていない。

気持ち悪い空、、うるさいな馬鹿が静かにしろよ

勇騎は不安から横でいちゃついているカップルをにらみつけるように見るがそれ以上何もできない。だが、勇騎はそのカップルの後ろ、車両の間の連結部分を見て思わず大声を上げ、周りの注目を一手に引き受け、カップルの会話の中断にも成功するが、今はそんな事はどうでもいい。連結部分にいる。あの赤い影だ。目もない、顔もないだが、それでもそれは自分を見ていると理解できる。

その悲鳴をきっかけにその赤い影が近づいてくる。勇騎は逃げようとするが、既にここは最前列の車両これ以上前にも逃げる事は出来ない。周りの人は皆、注目は彼だけで、あれには気づいてさえいない。自分にしか見えない何かが着実に近寄ってくる。

「来るな!来るな!あっちに行ってよ!!!ごめんなさいごめんなさい」

恐怖で足が動かず、逃げ場もなく、這うように電車の隅により、理由もなく、反射的に何度も謝る。その時だ、電車のアナウンスで次の停車駅を知らせるアナウンス。

勇騎は必死に自動ドアまで這うようにして移動する。

周りの人はそんな勇騎を恐怖し、避けるが今はそんな事はどうでもいい。

停車し、自動ドアが開くと、勇騎は転げ落ちるように電車を出る。

するとすぐそこまで迫り、手のような触手のようなものを伸ばしていた赤い影は視界を外に向けて外した一瞬にまた消えてしまっている。


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