振りほどかれる希望
「りりかちゃん!」
「きらら!」
「うん、わかっている!」
勇騎にはすでに見えくなった、りりかを勇騎が追いかけようと烈火が動き出す
「待ちなさい!一人でどこに行くつもり!」
「決まっている、りりかを見つけて取り戻す。」
「だったらみんなで探すべきでしょ!」
「あの状況だ。場合によっては社と同じ道。流石に二度目、しかも今回はりりかだ。五代さん達は耐えられないだろ。やるなら俺一人でやる、それだけの事だ。」
「烈火先輩、どうしてりりかちゃんに本当の事を話さないんですか!社先輩の事は、、」
「りりかにとって社は本当の家族だ。信頼でき頼りになるちと親だ。そんな男の理想像そのものを壊すようなまねをして、りりかの心が無事だとも思えない。それに社を助けられなかったのは事実で、彼女の涙は本物だ。せめて一人くらい、社は社のままでいさせてあげでもいいだろ。」
「しかし、、、」
なんだんだよ、コレ、それにあの他人みたいな言い方、、
勇騎は行き場のない自分自身への怒りをぶつけるように思いっきり烈火を殴りかかるが、烈火は一瞥もなく、勇騎の拳を掴んだ。
「人を殴るにはちゃんと腰を入れろ、お前、人を殴ったことないだろ、邪魔するな、もうお前には関係のない話だ。お前はもうこっちの世界には関係ない。灯、そいつは任せた、ガキに構ってる暇はないんだよ。俺は一人で行く」
「待て!」
勇騎が無視しようとする烈火を触れようとしたが、烈火の体をすり抜け、さきほどのりりか同様に完全に見えなくなった。
「消えた、」
「消えたんじゃないよ、勇騎君から見えなくなっただけの事さ。烈火先輩が見えなくなったという事は、完全に君の世界はこちら側に固定されただけの事」
灯の後ろでは五代が何もない所に向って話しかけている。
あそこにいるのだ。いるのに、何も見えない、感じない
「よかったじゃないか、勇騎君。君は、救われたんだ。」
良かった?救われた?
「偶然りりかちゃんと知り合ったみたいだけど、君の為にも忘れた方がいい。」
「ふざけんな、何がよかっただよ!元に戻せ!りりかを助けなくちゃいけないんだよ!」
「、、、これは予想外だな、あぁ、任せてくれたまえ、男子三日会わざれば括目してみよ、ともいうしね、うむ、どうやら私たちの知っている彼ではないようだ。
でも、大した問題じゃないさ、別に子供が大人になったわけでもない。
りりかちゃんはそんなに簡単に心も体も許すような軽い女じゃないからね。」
灯はまるで頭を小突かれたように頭を傾ける。
「暴力反対だな。烈火先輩。女性に暴力はいけないな、それに別に悪くは言っていないだろう。、、、、はいはい。分かっているよ。
彼をどうにかするのくらいなんでもないさ、
ただ、そっちの世界に適応できず、心がやさぐれ、癇癪を起して、気が立って、その上、突然、手を繋ぐような相手から一方的に突き放され、気が焦っているだけさ、
そもそも彼がそちらの世界に行ったという事は、彼は捨てたのだろう、いや捨てられたのかな、その、、なんて言ったっけ、あぁ、そうだ陽菜ちゃんだ。
その子に振られでもして、完全に乗っ取られたんだろう。
そんな彼が出会って間もないりりかちゃんの事は自分が一番わかるなんて思い上がり、
私はそういう『ガキ』の心を折るのが大好きなんだ。
、、、、、なに、今更問題ではないさ。一度完全に閉じた物は戻る事はない、今の彼には教えてあげるべきだよ、、、それは無理な注文だよ。
何故なら私はこう見えてもMでありそして意外にSなのだよ。」
目には見えないが烈火がいなくなったことを確認するように、遠くを見つめ、勇騎に目線を戻す。そしてしばらく笑うように勇騎を見つめ、勇騎の手前を指さす。
「今は、それも見えないかな?この間は見えすぎて怯えてたけど、見えなくなるとなんてことはない。
普通の人には認識できない世界、個体が見えないわけじゃない世界が見えなくなるんだ。
その世界をどう呼ぶかはさして問題ではないし、見えるという事は目をはじめとする感覚器官で感じ取り、それを脳で処理をしたものを映像化しただけの事、些末な見え方もまた問題ない。ただそれは確かにそこにある世界、それを今回は君の為に異世界というように表現しよう。」
「何の話ですか?」
「君の為のお話さ、君はどうやってもここで終わり、異世界に今後関わる事も出来ないし、りりかに再開する事も出来ない。だから君に教えてあげるのさ、私たちトケンの事、異世界の事、そしてりりかちゃんの事、そして思い知るといい、いかに自分が退屈でつまらないただの人間であるかをね。」
「ひどい言いようですね、この間お会いした時とは大違いだ。」
「状況も違うし、それはお互い様だよ。まさか君がりりかちゃんに出会えるなんて、まぁそれもまた運命。りりかちゃんは憎悪の中で私たちを拒絶した、同じ異世界の中にいてもそうなってしまえば、波長が合わずは中々出会えないそういう意味では君は十分に役に立った、だからそういう意味ではこれはお礼と言った所かな。
さて、それじゃそろそろ今回はこの灯先生の講義だ、君が今までいた異世界の話をしようか。