前置2 異端という生き方
嫌な事から逃げ出す事も、弱さを否定する事も出来なかった彼は
苦難も、弱さもすべてを受け入れ、あっさりと前に進んだ。
目の前で起こる事をすべて受け入れるという人間の怖さ。
目的の為に、自分の幸せも、他の可能性もためらわず、捨ててしまえる狂気。
思考は伴えど悩まず、
痛みは理解できても感じず、
喜怒哀楽そのすべてを他者と分かち合えず、
決して理解されようともせず、ただあるがままの自分を、
いや、理想の自分を追い求め、矛盾なくそこにひたすらに進み続ける。
理想を追い求めゆがみなく矛盾なく進み続ける彼は理想の人間?
いいや、違う、理想にあらんとすることは人として極めて正常な向上心だが、理想を、完璧に求め、貫ける事は、その理想がどんなに素晴らしかろうとそれは、人としては不完全だ。
不完全さを持たない矛盾なき生き方。それは狂気であり、毒だ。
まるで機械、溺れることなく、認められることなく、妥協する事も、絶望する事もない。
弱みを分かち合えない人間とは仲良くなれない。それが人だ。
彼は過去を振り返らず、いつだって前だけを見る。
彼の記憶のアルバムはいつも真っ白で、あっさり過去だって捨てられる。
そして彼のアルバムはこれから先もずっと真っ白、生きた過程が問題ではなく、
いまある自分がすべてだと、彼は強い人間?
いいや、彼はただ機械仕掛けの人形だ。
『長い、分かりにくい。』
ちょ、恋国、今邪魔しないでよ。
『煩い、なんで俺の説明をお前がしてんだよ。』
だって、嫌だっていったじゃん。
『あぁ、だが、長い。ダメ人間、社会不適合者、はいこれで十分。』
さっさと行くぞ、
少しは良くみられようとか思わないわけ?
そんなだから周りが気を使うんだよ、扱いにくいって、
『、、、、さっきのお前の良く思われる言い方かよ。』
あれ?間違ったことは言っていないと思うよ。
『そうかよ、それよりホント行くぞ、ったく、何の用事かと思えば、くだらない事で時間を割かせるな、まったくもって無駄そのものだ。とりあえず一発殴らせろ』
暴力反対、そういうの男女平等とか言わないから、この暴力男。これだから年寄りは。
『年寄りだと?俺の精神年齢はいつだって小学生だぞ馬鹿野郎。』
それ偉そうに言う事じゃないから、しかし君は本当に女の子にも厳しいね。
『中でも、お前は特別だ。それ以前にお前に対して、男女の概念を持ち込むのは、差し詰め、バージェス頁岩動物群の代表格であるアノマノカリスを見て、最初に門、網、目、科、属、種の全ての分類をすっとばかして、雄か雌かではなく、哺乳類にしかないX染色体かY染色体かを判断して語るようなものだ。』
いや、なんでドヤ顔なの?
馬鹿なの?
恋国、、それで頭のいい説明したつもり?
それ本気で頭悪いよ、何一つ伝わってないよ。今そういう訳のわかんない恋国の知識披露の場じゃないから。
空気読んで、はぁ、全く、こんなに可愛い女の子を相手に、恋国は全く駄目だね。
『容姿が問題ではない。いかに俺の役に立つかが問題だ。』
何、恋国今猛烈に機嫌悪いの
『俺は暇な時間はいいが、無駄な時間を使う事は気に入らない。
俺の一秒はお前の10年にも当たる貴重な時間だ無駄に使わせるな。』
はぁ、そんなんだからモテないんだよ。そんな言い方すると女の子に嫌われるよ。
『知った事かいい加減帰るぞ。それに俺はそういうものには興味がない。』
草食系男子、肉食系女子、肉食ではないけど凶暴、、君は差し詰め雑食系男子?
『その流れでそう言われると、性的思考に関してなんか危ない趣味の人のような感じがするな』
性的思考って、、、恋愛の考え方とかないんだ
『、、、もう、行くぞ。最後に一つだけ教えてやる俺を既存の概念で分類できると思うな。俺は唯一無二にして俺は俺でしか語れないそういう特別なんだよ。』
うわ、精神年齢小学生で。その上お脳を怪我してますよこの人。
なんで根暗ちゃん、はこんなのがいいんだか。まったく人の趣味嗜好は理解できないね。