闇を払うは聖なる炎、恐怖を払うは人のぬくもり
きららは伊達メガネを外し、いつもの様に、しどろもどろ喋り、素直に主導権を灯に移譲する。灯は、準備があると、いったん部屋を出て行く。
そして準備が終わると、灯が戻って間、誰も一言も喋らず、目も合わせない殺伐とした雰囲気の中、勇騎を迎えにくる。
「さて、それでは準備は万端、勇騎君、申し訳ないけど、目をつぶってくれるかな、そちらの方が効果的だ。」
勇騎が言われるがままに目をつぶると、灯がその手を握り別の部屋に案内していく。
足音を聞く限り、ほかの3人もついてきている。そして2回角を曲がると襖をあける音、そして、足の感触ではまた先ほどと同じ畳の感触。
「さて、では勇騎君、目を開けたまえ何が見える。」
「、、、うわー!!!」
勇騎は言われるがままに目を開け恐怖する、暗闇の部屋に、息をするスペースもないほどの化け物が目の前を埋め尽くしている、逃げる暇も、場所もない、
「ほら何をしてる良くみたまえ、、」
声の方を見ると鬼のようないやそれ以上に禍々しい化け物が、最初は灯の声だったが、その声は濁り淀み、地の底から響くような鈍い声になり、勇騎は恐怖のあまり、叫び怯え、会話できる状況ではない。
「生む仕方ないな。勇騎君、」
灯は指を鳴らすと、彼女の鬼の姿が煙のように消え、灯が現れる。そして彼女は突然勇気の烈火とは違い、優しく襟首をつかむと突然引き寄せ、その口の中に何かを入れる。
その何かは自分の歯の上をなめまわし、思わず開いた口のさらに奥まで入ってくる。
「さて、どうだったかな、私のキスは大人な味だったかな、っておーい、効きすぎたかな」
勇騎は膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んだ、何が起こったは理解できているが、それを頭の中で処理が追いつかない。陽菜ともしたことなんてないのに、、、
「その正体はほら、、よく見て」
勇騎が顔を上げると目の前にいた化け物たちは消え失せ、暗闇の中に煙が待っている。
「これは修験者が使う幻煙というものだ、あぁ、君の話に出てきた薬物と一緒にしないでくれよ。こちらは害がないとは、、まぁ、使い方一つでないともいえないが、私が使う場合はその可能性はない、なぜならプロだからね。勇騎君には何が見えた?
これはその人の心の中の世界を見せるもの、同時に恐怖を誘発する香木も炊いたから怖いものが見えたんじゃないかな、もしその恐怖で白髪が生えて来てもそれは勘弁してくれよ。」
「、、、キス、僕、初めてだったのに、え、あの、なんで」
「うむ、先にそっちの話か、なる程初めてだったのかそれはすまなかったね。君の思考を奪うほどショッキングな事をすれば、君の思考から恐怖が消える。
一度でもそれがなくなってしまえば幻煙の効果はなくなるからね。
あぁ、だがこれ以上は期待しないでくれよ。私は見ての通り名門のお嬢様なんだ。
婚前の貞操は守るそういう掟の中で生きている人間だからね。」
灯は大したことではないと笑っているが、勇騎にとっては未だに意識が口と唇の感触にしか行かず、少しも頭に入ってこない。
「ちょ、ちょっと、灯さん何やってるですか、あなたがそんな汚物に!!」
「麗華さん、そんな言い方はないんじゃないか。それに勇騎君の唇は悪くっ!!!!」
麗華は両手で、灯の頭を押さえると、問答無用でその唇と意識を奪う。
「消毒よ」
麗華が手を離すと灯は勇騎以上に腰から崩れ落ち、そのまま体の自由がきかないように、上半身も畳の上に投げ出される。
「勇騎君、私のキスは上手だっただろう、あれはこのように麗華さんに鍛えられているからだ。未成年の君にはあまりお勧めはしないが、残念だが、私はここまでの様だ。後は待たせたぞ、烈火先輩、、」
「きらら、あんま見ちゃだめだからな。」
烈火は呆れながらきららの目を塞ぐが、時すでに遅し、きららの中でさっきの映像が何度も再生される。
「ありえない。否定、不在の証明は、数学の世界では可能性はある。それは数字の世界は無限だが、そこに確かに神があり、間違いがないからだ。万が一、が存在しない。
故の数学だ。だが、現実ではそうはいかない。
あらゆる可能性をすべて否定いなければならないそういう物を悪魔の証明という。
君の身に起こった事が100%僕たちの専門分野である可能性がないとは言えない。
君のみの周りに起きた事が君の心が生み出したものだとしても、その中の1つくらいは実際に都市伝説と呼ばれる事象だったかもしれない。だが、そうだとそれをこちらで何とかしたとしても、君の身の回りに起きている事態を止める事は出来ない」
烈火は部屋の電気をつけ、窓を開け、煙を外に逃がすと、勇騎に手を差し出し、座り込んだ勇騎の体を力強く思いっきり引っ張り上げる。
「お前がすべき事は、次にその影を見かけたら逃げる事はせずに向き合う事だ。逃げれば逃げるほど影はお前を追い込み飲み込む、もう一人のお前もお前自身だが所詮は否定より生まれた影だ。心が生み出したもう一人、それが現れれば、拒絶し、罵声を浴びせればいい。目の前にいるのは頼るべきお前じゃない。なるべきお前だ、超えるべきお前だ。お前がしっかりしていれば意識を失う事はない。
己が己に負ける事など気に入らないだろ、己に負ける屈辱を心に持っておけば負ける事はないさ、何簡単な事だ。」
烈火はそう言い残し、倒れた灯の腰帯を掴み、軽々と持ち上げ、運んでいく。麗華は烈火の持ち方が雑だと怒鳴りながらその後を追いかけていく、残された勇騎が、この状況を、これからをどうしていいか分からず、途方に暮れていると、廊下から何度もきららがちらちら何かを言いたそうに見ているきららと目があった。
きららはその事で覚悟したのか、いつのまにか着替えていたシロクマの寝間着の帽子を深くかぶり、早歩きで近寄ってくる。
「ゆ、勇騎君、携帯。」
「携帯?僕のですか?」
勇騎がズボンのポケットから携帯を取り出すと、奪うように素早く携帯を取り、何かを入力し始めた。そして入力が終わったかと思うと、フードを取り、髪の毛の角度を調整し、
携帯のカメラで、お決まりの角度、ポーズで写真を撮り、お礼も言わずに勇騎に返す
「わ、私の電話番号と、メールアドレス入れたから、あ、あのね。もし何か困った事があったら電話して。れ、烈火君は強い人だから、一人で大丈夫だけど、普通はそうじゃないから、あの、どうしようもなくなる前に電話、あ、でも、私、喋るの苦手だから、メールの方がいいかも、で、でも、やっぱり相談とか、愚痴とかだったら電話の方が、でもでも、そうしたら私じゃなくて灯ちゃんとかの方がいいの、えっとあの、、」
「あ、ありがとうございます。頼りにさせていただきます。でも、三森さんすごいですよね。かわいいし、その若さで専門家だなんて、尊敬します。どこで勉強したんですか?」
「か、かわいいとか、私そんなの全然、全然、っ全然。」
全力で否定するが、でも、さっきの写真といい、持ち物や挙動と言い、可愛く見せようとしているわけではないのか
「そ、それに、わ、私全然すごくなんてないよ。ただ、ずっと病院から出られなかったから、そういうのばっかり見てて、詳しくなっただけ、私、怖いの苦手だけど好きだし、、、あ、あのね、私も、勇騎君の気持ちわかるから、人を好きになるっていう気持ち。
好きな人の事を考えてると苦しくて、辛かったりするよね。だから相手の事を思っていろいろ考えて、余計に自分を追いこんじゃう。あ、ごめんね、何言っている分からないよね」
「い、いえ、そんな事は、、、」
「あ、あのね、勇騎君はもっと自信持っていいと思うの、陽菜さん、最初に、勇騎君から嘘をつくように言われていたのに、皆の前で、勇騎君に助けてらったって本当のことを言ったんでしょ。それはきっと、勇騎君の事を好きだから、だよ」
「なんでそうなるんですか。」
「ま、周りの人に勇騎君との絆を印象付ける為、、わ、私でもきっとそうする。好きな人との特別な絆、危ない所を助けてもらえるなんてそうそうないから、それは特別な絆。
だからそれをいう事で周りに人は二人の関係は特別なんだって思ってくれる。そうする事できっと協力もしてくれるし、牽制にもなる。だからあえて勇騎君の指示に逆らってそうしたんだと思う。それくらい陽菜さんは勇騎君の事を好き、、だと思う。」
「三森さん、、」
「きららでいい。私、あまり自分の名字好きじゃないの、いやな人たちと同じに呼ばれたくない。でもきららは好き、お爺ちゃんがくれた名前だから、」
「分かりました、きららさん。」
「、、、へへ、ありがと、、、それでね。
今回の勇騎君の受難を解決するには、勇騎君の心が大切なの。
色んな事が急におきて、めちゃくちゃになりそうな事が全部うまくいって、勇騎君がついていけていない。現実に起こっている事に、気持ちが対応しきれなくて、どうしていいか分からなくて、逃げたい。って思うの
私もネガティブ思考だからよく分かるの、そう言う時は、不安な所、悪い所ばかり見ちゃう。だからね、まずは落ち着いて、深呼吸。それで気持ちを落ち着けてから、考えるといい。私は勇騎君の味方、だよ。それに一人で考えてるだけじゃ、どんどん悪い方に考えちゃうから、悩むことがあればやっぱり、連絡して、これでも私の方がネガティブ歴長いから、大分ポジティブに考えるコツ分かっているから、そうすればきっとうまくいくから、
大丈夫だよ、勇騎君は陽菜さんから好かれているから、そこは自信を持っていいよ。
後は陽菜さんを楽しませようってばかり考えるんじゃなくて、自分も楽しもうって思う事、人を好きになる時に不釣り合いとか、そういう事ないから、相手の事ばかり考えて気を使っていると楽しくないよ。す、好きな人が楽しくないとどんな事でも楽しくなんてない。
伝わるよそういうの、相手の事を思えば思うほど、
陽菜さんといっしょにいる時間は楽しくないの?」
「正直、最近は少し苦痛と思います。」
「ひ、陽菜さんの事を嫌いになっちゃった?」
「そんな、まさか、好きですよ。僕が理想に描いていた陽菜さんとは少し、いや、かなり違っていますけど、好きです。、、、」
「だったら、考え方一つだよ。好きな人と一緒にいられる事はとても幸せな事だよ。頑張って、む、無責任かな、こういうの」
「いいえ、とんでもない。僕と陽菜との事、興味本位で上辺の心配をしてくれる人はいましたけど、こうして本気で応援してくれるのは初めてです。だから嬉しいです。」
「へへ、良かった。そ、それじゃ、頑張って」
きららは言いたいことだけ言い終わると、再びフードをかぶって部屋から出て行った。




