都市伝説のコワシカタ
きららはPCのモニタを閉じ、プロジェクターをオフにする。
そして障子をあけ、廊下のガラス戸も明ける。そこには灯一つない庭が広がっている。
「さ、勇騎君。ここの庭には危険な虫も、危ない動物も何もいない。
ここにサンダルがあるからこれを履いてここの庭を1周してみて」
本当に何も見えない、まだそれほどの時間じゃないはずなのに、、
「念のために言っておくけど、何か暗闇の中で目印になるようなものはないわ、手を前に出して、歩いて行って、そうするとうっすらと見えるものよ。例えば、あそこよーく見て。」
きららは勇騎の手を取り、特定の方へ動かし、暗闇の中で見るべき方向を伝える。
勇騎がその方向を良くみていると、外の方が明るく、目が慣れるとだんだん、何か人影のようなものが見える。それは目だ。目がじっと自分を見ている。勇騎は思わず体がビクッとなってしまう。
きららはそれを確認すると、携帯のライトを使って、その方向を見せる。そこにあったのは小人の置物、可愛くはないが、怖がるような代物ではない。
きららはガラス戸を閉め、勇騎の為に部屋の電気を半部だけつけ話を続ける。
「ここの庭は草木が多くて、光が入りにくいから少し怖いでしょ。私たちはここの昼間の姿も知っているから、それほど怖くはないけど、勇騎君は夕方の薄明かりの中でしか知らないし、なれていないから不気味に感じたはずよ。それがこの暗闇の中でさらに恐怖を増す。さっき何も見えなかったでしょ。どこに何があるのか、だからそこにはなんでもいる。
だからこそよ。同じ恐怖でも名前でも、姿でも、どういうものかでも、何らかの理由が欲しいの、人は怖いと恐れながらも、それを求めるもの。
だから人は都市伝説を求め、自分の恐怖を重ねるもの。」
「私の専門の妖怪退治、妖怪ではないけど、勇騎君も地元に伝わる妖怪の話とかいくつか知らないかい。もし、地元が山なら、山にまつわる者、海が近いなら海にまつわる者、洞窟や崖が近くにあるならそこに住み着いている妖怪の話」
唐突に少し大きな声で、灯が話しかけてきたため、思わず、先ほどの様に体がビクッとなってしまう。勇騎が振り返ると、灯は自分の顔に携帯のライトを当てて驚かせる。
「昔はそういうものは地元に伝わる怖い話としてお婆ちゃんとかから聞く物さ、
でもそういう物と、都市伝説の違いは昔のそういう類物は教訓だという事さ。
危険な場所に近づけないために、悪い事をしないようにする為に教える為の教訓さ。
恐怖は人には必要な物、恐れを知らない人は長生きできないし、恐怖を知らない人間は、人の痛みが分からなくなる事だってある。あるいは恐怖そのものとなる
だからそういう場所は危ないんだ、危険なんだという事を教える為に姿形のある妖怪たちは何より有効だったんだよ。でも、そういう妖怪には必ず、教訓がついていた。
何もしなければ、妖怪は悪戯程度しかしない。または、そういう危険な目にあった時どうすればいいって必ず解決、出会わないため忌避策があった。それがあるから安心できる。
だからこそ危ない事には近づかないという教訓として成立する。
恐怖は人を遠ざけ、人の注意を引く。意識してその恐怖の本質を経験していく事で妖怪は本来の災害や、危険に置き換わっていくそれが大人になるっていう事さ。
まぁ、それをちゃんと教わってきてない、自然への敬意の足りない人は得てして自然を甘く見て大人になって事故にあったたりするんだけどね。」
「でも、都市伝説はそういう教訓じゃない。根本的な解決策なんてない。恐怖が大切なの、だから未知は未知のまま、人の力の及ばない、絶対性を持ったものとして成立しているものある。時として本当にそうやって形作られた、悪意が形を成し本物になる事がある。」
「本物になる、、」
「あ、あぁ、ここでいう本物っていうのはそういう都市伝説が逆に人を危険にひきつけるという事さ、なぁ、きらら。」
「え、えぇ、そう。例えば廃病院だとか廃村だとか、普通だったら入ろうとも思わない所にネットで広まった事で、逆に度胸試しで人がやってくる。結果そこで事故にある事だってある。だって元々危ない場所に、恐怖を味わいに来るか、怖くないと証明するために、なめてかかってしまうから、それが心の油断を生み、知らない場所での事故を生む。」
「なるほど確かに、、」
勇騎は急につくられた嘘に納得する。悪意が形をなし、本物になる。それはそのままの意味、具体的な対処法のない新しい化け物を生み出すことがある。それに対応するためのトケン、そして代々続く士条家であり、五代が本職で属する政府の機関がある。
だが、それは今回の勇騎には関係のない事、それを教えてしまっては、勇騎の身に起こっている事の解決が難しくなってしまう。
認識する事でより、それは確かな存在となり、より確かな形で彼を捕えてしまう。
「それじゃ、ここからは実際の勇騎君の体験した異世界への行き方を分析してみましょう。」




