5-1=トケンは今日も平常運転
「あぁ、上がらせてもらっているよ、二堂先輩、それは誰かな、新しいペットくんかな。」
着物を着たか明るい茶髪の勇騎よりわずかに年上と思われる女性が明るく語りかけてくる。
「灯、そういう初対面にはマジともとられかねない冗談はやめて、、五代さんも一緒に、」
「男、烈火どういうつもりですか汚らわしい。あなた、あなたはあそこに、いい事私たちの5m以内には近づかないで、近づいたら殺しますわよ。気持ち悪い。」
手に綿手袋をし、口にハンカチを当て、敵意むき出しで勇騎に座る位置を指定する。
「勇騎君。気にしなくていいよ。五代さんは、異常なまでの潔癖症で、病的なまでの男嫌いだ。誰に対してもあんな感じだ、寧ろ、初対面で、出て行けと言われなかっただけ、かなりましだよ。、、、、あぁ、悪い。勇騎君いったん部屋を出ようか?」
勇騎は訳の分からないまま部屋を出る。
「あの、やっぱり、、」
「あぁ、彼女の事なら気にしなくていい。それより問題なのは二人の間にもう一人いただろ、あの子が極端に人見知りをする子でね。いきなり入ってしまったから、少し動揺しているからな。そのための一時退室だ」
そんな子いたかと記憶をたどるが心当たりがない
「二堂先輩、もう大丈夫だそうだ。」
「良いのか?まだ部屋にいるだろう?」
「あぁ、彼は依頼者なのだろう、何となく意志の弱そうな感じと言い、どちらかと言えば彼女の専門の可能性が高いだろうからいる、との事だ。」
2人が、部屋に戻ると、五代の横に大きなぬいぐるみが座っている。いや違うシロクマの寝間着に身を包んだ女の子が顔を隠して座っている。
そしてさっき以上に五代が勇騎の事を睨みつけてくる。
「二堂先輩、お茶はださなくていいかな」
「お願いしたら出してくれるのか?」
「まさか、私を使うと高いぞ」
「うん、わかってる、」
二堂はちらっと勇騎の方を見ると、勇騎は必要ありませんと、首を横に振る。
すると彼らは、本当にお茶も用意せずに、長いテーブルの端に勇気を座らせ、対面に女性陣3人が、その中間に二堂が座った。
勇騎はなんだか、裁判所の被告席にでも立たされているかのように凄まじい威圧を感じる。
「あの、、ここは都市伝説に関する事を研究している都市伝説研究所、で間違いないんですよね。いや、色々雰囲気が研究所っぽくなくて。」
「あぁ、そうだ。別に科学的な研究をやっているわけじゃないから、寧ろ大学の文学研究所に近い所はあるな。特に都市伝説なんて近代に生まれた物を主に扱ううえではあまり昔の文献も必要なしな。っとそこら辺は僕よりも、彼女たちの方が詳しい。
先に、簡単に彼女たちの事を説明しておこうか、
まずは、着物を着た彼女が士条灯。京都の名門の陰陽師の御令嬢で、
異常と言われるほどの稀代の天才陰陽師だ。
彼女は都市伝説の中でも妖怪や、鬼など古くからの本物の化け物の専門家だが、原則何でも行ける。ただし本物のプロなので働いてもらうには明確な料金体系が存在する。」
「よろしく、勇騎君。私は高嶺の花だぞ。私を従わせようとするのなら、それなりの物を積んでもらう必要があるから高校生にはかなり厳しいと思うが、ご指名を待っているぞ。」
「あ、ははは、」
「ちょっと、あなた灯に手を出してみなさい、社会的に抹殺しますわよ。」
何の話だ、、勇騎はこのノリについて行けないというより、まだ僕が何をしに来たのかも聞いていないのにお金の話ってやっぱり怪しい所なんじゃないのか
「で、殺気十分で口を挟んで、ずっと睨みつけているのが五代麗華。
彼女は都市伝説の中でも陰謀論。怪奇現象というより、人の悪意が絡むものが専門だ。彼女はトケンのメンバーだが、主体はこっちではなく政府の方。彼女ああ見えても政府の人間、つまりは国家の犬だ。」
「訂正しなさい、私はこの国に生きる女性の味方よ。かよわき乙女を守る為の騎士よ。男や国のメンツなんて守る気なんてないわ。むしろすべて排除してやりたいくらいだわ。」
「、、、国家に仇名す不穏分子の排除が主業務だが、情報収集のためにたまに顔を出す。
こうして灯と一緒の日に来ることが多いけど、彼女は月一来ればいい方か、
まぁ、彼女の事はあまりに気にしない方がいい、口を開けばトラブルの元だ。」
「黙りなさい、社会不適合者。あなたごときの口で私を語るとは万死に値するわ。」
「、、、、あぁやって、存在しないお嬢様言葉を演じているけど、実家は普通の兼業農家で、親からは早く結婚しなさいと言われる28歳。あの性格と、趣向で彼氏がいた事がない。普通の庶民代表。好きなものは豚骨ラーメンと焼き鳥、6本300円の棒アイス。」
「あなたマジで殺しますわよ。」
「だったら、邪魔をしないでくれ、招かれざる客は君も一緒だ。
今日来るとは一言も言ってないし、そもそもここは俺の家だ。あまり好き勝手にしないでくれ。ここに入った時、隠したけど、絶対俺のアイス食っただろう。食べかすをそこのごみ箱に捨てるな」
「ふん、器量の小さい男ね。」
「男嫌いの癖にああやってすぐに男の器量だとか、男の癖にとか言う。まぁ、根は悪い人じゃないんだけど、根本的に俺が嫌われているのが、それに拍車をかけている。
そして最後、二人の間にいるのが三森きらら。彼女は少し人見知りだが、俺たちの中では一番常識人で、専門は一般的に思い描く都市伝説全般。君から話を聞いていないがおそらく君の力になれるのは彼女だ。」
勇騎が彼女を見つめると、彼女は一瞬目線を合わせ、すぐに目線をそらす
「始めました。市井勇騎って言います。きららさん、かわいらしいお名前ですね」
勇騎は作り笑顔できららに自己紹介をする。だが、どうやら懐柔には失敗したようで、完全に灯の後ろに隠れ、麗華から居間にも遅いかからそうな勢いで睨みつけられる。」
「さて以上が今のうちのメンバーだ。何か質問は?」
「あの、烈火さんの専門は?」
「俺は別に専門はない。何故なら所長だからな。」
「はぁ、、」
「烈火先輩は都市伝説のプロではないよ。トラブル対応のプロだよ。いやトラブルメーカー、、トラブルクラッシャー、デストロイヤー、、まぁ、いずれにせよプロではないな」
「はぁ、」
「つまりは野蛮人という事ですわ。事あればすぐに暴力で解決、これだから男は、、」
「五代さんは、相手が女性だったらななんであれ、言葉で解決できるし、男であればそれだけで悪。そのせいで、どれだけ危ない目にあってきた。どれだけ間違った判断をしてきた。俺はいつだって暴力に頼るわけじゃない必要な時だけだ。」
「、、、、、」
2人の間に緊張した空気が張り詰める
「ふ、二人とも、喧嘩は、、ダメ。みんな仲良くしないと、、、り、りりかちゃん、、見つけてもに戻って来いって言えない、、、喧嘩は駄目。」
初めて、きららさんが喋った、、顔に似合って可愛い声、、
「ごめん、きららの言う通りだな。勇騎君も悪かったな。」
「い、いええ僕は、断然大丈夫です。」
「ありがとう、さて、それじゃ、君がここに来た理由を話してもらえるか?」
勇騎は4人に自分の身に起きた事をありのままに話した。
異世界の扉を開いたこと、赤い空に、もう一人の自分、そして制御が聞かなくなっている事、包み隠さず、ありのままを話した。
「、、ということらしいんだが、どう思う?」
「情けない男ね。陽菜さんの為にもあなたは別れるべきですわ。自分の事ばかりで、最低。死ねクズ」
「五代さん、そういう話をしているんじゃないですから、、でも、きららちゃんの推察通り今回はやっぱりきららちゃんの範疇かな。」
「え、でも、、」
灯はきららに耳打ちをし、何かを伝える
「うん、、そういう事なら、分かった、頑張ってみる。」




