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知らない街の曲がり角

勇騎はその日いつも以上に身の入らない勉強会を終え家に帰ってくる。

普段なら、今日も陽菜との仲が自分じゃ進展出来なかったと悔いるのが日課だが、今日は、あの女の子の心配。そして彼女に言われた自分の心配が頭を悩ませる。

こちらの世界、あちらの世界。おそらく赤色の空があちら側の世界なのだろう。

あの異世界へ行く方法が夢だったという考えは既に勇騎にはない。

もう一人の自分がいる事も、異世界に行った事が原因なのは明白だ。

勇騎は頭の中であの日世界へ行った日の事を思い出し、駅で出会ったの女の子の事を思い出した勇騎はもらった名刺を机の中から取り出した。

捨てようとも思ったが捨てる事の出来なかった名刺。

「南条町、、、今からでも、」


時計は18時半。陽菜と付き合う中で、行動力の身についた勇騎は、心の中の不安を解消するため、いてもたってもいられず、今から名刺の場所に向おうと考えていた。

南条町まで電車に乗って、3駅。勇騎は携帯で名刺に書かれた住所を検索し、駅からの距離を見てみる。しかし書かれた住所はピンポイントでは存在しない。

だが、表示された地図に書かれた番地を見る限り、おおよその場所は分かる駅からはそれほど遠くはない。1時間もあれば着くはずだ。

不安からくる行動力は凄まじく、明日という選択肢はない。勇騎は自転車で駅へと向かう。南条町についた頃には日が落始め、空には星が見える。

赤くない空をこうして見上げるのは久しぶりだ。知らない場所での夏の夜。

勇騎はテンションが上がってしまい、なんだか楽しくなってしまう。

高校生にもなって、陽菜と一緒に色々な所に行くようになったのに、こんなちょっとした事で、冒険気分。自分が主体で動いている楽しさがある。

「そういえば、夜に出かけるのって久しぶりかな。前に夜に出かけたのは、、」

勇騎の中で記憶をたどると前に夜中に出かけたのは、隣町の小さな本屋に少女マンガを買いに行った時以来だ。あの時も今とは違うドキドキ感はあった。

だんだん楽しくなっていた勇騎は19時過には目的地の近くには到着していた。

だが、問題はそこから該当の番地が地図には存在していない為、探さなければいけないが、

おそらくこの辺りだろうという場所に来てもそれらしい建物は存在しない。

何度かぐるぐる回っているが、あるのは民家ばかり、やっぱりこの名刺は嘘で適当だったか、帰ろう、、そう考えた時、勇騎は急に家と家の間にある細い道ともいえない道に意識を持っていかれた。

「こんな道あったっけ、、こういう道、漫画で見た事がある。」

勇騎は気になりはしたがこんな所に入っても何にもならないそう思いもしたが、どうしても気になってしまう。結局、あたりを見回し誰もいないことを確認すると、どうせ帰るならとその道に足を踏み入れる。本当に細い路地で、体をずらさないと人がすれ違う事も出来ない幅、そんな細い路地を抜けると、今までとは違う通りに出た。

ここは普通の車が通れるような通りだが、さっきの通りと違ってまったく車がおらず静か、漫画の通りに異世界に来たような気になる。

「抜け道、なのかな、たぶん、僕以外にも通っている人がいるよね。でもどこかなここ、さっき回っている時こんな道あったっけ、、あ、ここだ。」

勇騎があたりを見回していると、電柱に張れた番地表示が目的地の番地だ。

その正面にある少し大きめの家、表札はないが、確かに少しだけ研究所っぽいような気もするが、ただの民家のような気もする。判断に困った勇騎は音を出さないように門をそっと開け、中をのぞく。広いには手入れが行き届いていないのか、草木が覆い茂っている。

勇騎がもう一歩、もう一歩とどんどん奥に入っていくと、突然背後から声がする

「この家に何か用かな?

僕は命を懸ける馬鹿は好きだが、他人に迷惑をかける馬鹿は嫌いだ。

興味本位か知らないが、勝手に人の家に入るのは感心しないね。」

黒いコート、いや、黒色の白衣?比較的年齢の近そうな男の人だけど、目力が異常に強いし、はっきりと意思の通る声、僕とは真逆の真面目さを持った人だとすぐに分かる。

「あの、すみません、迷子になってって、この家が探しているのかなと思って、勝手に入ってすみませんでした。」

「君は迷い込んだ訳ではなく、何となく、でもなく自らの意思で探していると?」

「?はい、あの、都市伝説研究所という所を探しているんですけど」

「どこでその名前を?」

「えっと、、、この名刺をもらって、困った事があればここに来るようにって、、」

勇騎はもらった名刺を探し、男に見せるが名刺をさして見ずに勇騎の顔を伺う。

「誰からだ?」

「えっと駅で偶然会った女の子で名前は。」

「アヤノ、、」

「えっと、なんかそういう名前じゃなかったような、」

「君は未成年だろう、その内からこういうお店に行くのは感心しないな。」

さっきまでまるで興味を示さなかった名刺をいつの間に勝手にとっている。

「あ!ち、違います。その裏です。裏に書いてあるのをもらったんです!」

「、、、、澪か、、、なるほど、偶然でも必然でもなく、これは押し付けられたというやつか」

男は裏に書かれた筆跡で書いた本人を特定すると大きくため息をつく。

「さ、こっちだ。君が思うようにここがその目的の場所だ。僕がこの都市伝説研究所の所長をやっている二堂烈火だ。君がここに来るという事は、それなりの困った事があるんだろう。もしくは困った事になる心当たりがあるかだろう、さ、話を聞こうか、、」

烈火の様子から察した勇騎は少し怯えながら、声なき質問に答える。

「あ、市井です。市井勇騎と言います。」

烈火の案内に導かれ、家の中に入ると、外見からは及びもつかぬほど、ものすごく綺麗で、洗練された内装が目に飛び込む。自分が入ってもいいのかと思える程に清掃が行き届き、まるで近代の大学の図書館の様に白で統一された壁一面の本棚に本が置かれ、階段の間にも本が、だが、その全てが綺麗にシリーズ、高さ、肌で綺麗に整理されており、この部屋自体が芸術作品のように感じされる。

「あ、あの、入っても?」

「?いいと言っただろう、さ、こっちだ。」

独特のエントランスを抜け、長い廊下の中ほどで、勇騎は襖をあけ居間に通される。

今は先ほどと打って変わり和室。田舎の大家族の居間の様に、そこのテーブルを囲んでいる女の子3人が一斉に勇騎の方を見る。


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