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俺はやってない

作者: リベリオン

 良かったら、見てやって下さい。

 それは突然の出来事だった。

 俺は必死になって受験勉強をして入ったのは名門大学。二年になって、家族にも色々世話をしてもらったことから公務員を目指し勉強をしているところだ。


 今日も自宅で勉強を頑張っている。俺には輝かしい未来が待っている。勉強だけじゃなくて、遊びも、恋愛も、楽しんで行くんだ。




「――なんですか!?」

 ?

 お袋の声が聞こえる。叫んでいるようだ。

 はっ! もしかして強盗か!?

 待ってろ、今行くから……!


 バタンッ!


 そう立ち上がった時、ドアが開いた。

「雪華なろおだな?――市のホームページに、犯行声明を書き込んだ疑い。威力業務妨害の疑いで連行する」


「……え?」


「さあ、きなさいっ!!」


「なろお! なろお~~っ!!」


 お袋の俺を呼ぶ声が、やけに耳に残っていた。

 それからは地獄だった。




 警察署の一室で、二人きりで延々と取り調べを受ける。

「僕はやってません!!」

「はいはい。分かったから。でもな? IPアドレスが君のPCの物なんだよ? 嘘は止めた方がいい」

「そんなの知らない! 僕はやってない!」

「ふざけんなクソがきゃああああ!! お前はあんな小さな小学生達に、大きな恐怖と不安を与えたんだっ! それをやってないだと? あ? 優しい顔してりゃあ、甘えてんじゃねえぞこの野郎!!!」


「ひっ……でで、でも」

「でもじゃねえええええ! ……なあ、君は若い。はよ認めろや? な? じゃないとどんどん罪が重くなる。それは嫌だろ? あんないい大学入って……それなのにこれじゃあ親御さんも可哀想だとは思わんか?」


 お母さん……お父さん。

 なんで。俺はやってないのに。なんで……こんなヤクザみたいな拷問を受けなくちゃいけないんだ。

 涙で目の前が滲んでくる。

「ひっ……く、くふぅっ……」

「おいおい、いい年した男が泣くなや。やりました。そう言えばいいんだよ。な?」

「ぼ……僕はやって」

「ふう……今日はこれくらいにしとくか」

 



 そういって俺は狭い牢屋のような場所に入れられた。

「俺は、やってない。俺は……」

 一人寒い床に身を伏せて、ただそれのみを呟く。

 ただそれのみを言い聞かせる……






 今日は二人……


「なあ、兄ちゃん。公務員目指してたんだって?」

「は、はい……」

「そうか~それは認めたくないよな。もうなれなくなっちゃうもんな~」

「…………」

「でもなあ……ふざけるなよっ!! お前みたいな嘘をつくようなクズが、国に奉仕できるか! 子供を殺すなんて言ってるゴミが! どっちにしろ一緒なんだよ! それどころか、このままじゃあお前は、保護観察じゃあ済まなくなるぞ? いいのか?」


「ぼ、僕は……」

 目の前がくらくらとしてくる。

 ぼーっと、警察の言うことだけが頭に入ってくる。

 そこでずっと黙っていた警察が口を挟む。

「なあ、兄ちゃん。このままだとな? 逮捕された後の罪が大きくなって、家族にも迷惑かかるんだぞ? 今なら保護観察で済むが……もしそれ以上になったら……もうあの辺には住めないだろうなあ」

「お、脅しですか?」

「いや、ただの事実だよ。なあ、君の我が儘でお母さんたちを不幸にしてもいいのか? 今日が最後だ。()()のことをいうなら勘弁してやるぞ?」


「ぼ、僕、僕は……」

「ん?」

 お母さん。お父さん……

「僕が……や、やりました……」

「そうか! よかった! 君は立派だなあ! こんな息子をもてて君のご両親は幸せだよ」

「は……はは…………ははは」


「で、その理由なんだが――」



「で、生き生きとした小学生が妬ましかったんだなあ。まあストレスもあるだろうしそうなんだろう?」

「はい……」

 もう。僕には何もできなかった。





 連行された二日後、僕は正式に逮捕された。

 簡易裁判所で保護観察となった。

 母も父も泣いていた。友達もいなくなった。いや僕が自然と離れていった。


「僕は……やってないんだ……」

 そういう俺を、父と母は優しく抱きしめてくれた。

 涙が止まらなくて。ごめんなさい。ごめんなさい。掠れても、声が出なくなってもそれしか口には出せなかった。それしか――













 あれから俺の生活は一変した。一年頑張ってきた勉強も意味がなくなり、一週間に一度ある出頭、毎日の反省日誌。


 もう、三ヶ月はたつだろうか……何もやる気が起きない。でも大学には惰性で行っている。

 でももう、やめようとも思っている。こそこそと陰口叩かれるのも疲れたし、何もやってないのに隠れなければいけないことが辛かった。




 そんなある日――

 



 自宅でテレビを見ていた。あれ以来PCは触っていない。

 ――私が犯人です。――学生の「小学生皆殺し」の書き込みも――


「――お! なろお!」

「は……はは。何だよそれ」

「私は信じてたよ、私は!」


 母さんが飛びついてくるのも、既に意識の外だった。

 俺が思っていたのは。ただ一つ。

「遅い……もう遅いよ…………、俺は、もう」

 夢も見れない――












 誤認逮捕は、なんの法律にも違反していないという。

 裁判所が疑わしいと判断し、警察が自白を引き出し逮捕する。

 無罪だとしても、その判断を下し実行した奴らには罰則も処分も無い。

 ()()()()()()()()()


 そしてメンツなのか、なんなのか。謝罪すらも。

 しない。


 ――一体どちらが公務員に相応しくなくて、どちらがクズでゴミなんだろう?











 俺はあの警察署の前に来ていた。

 秋に入るかどうかのこの季節。暑い服を着て。


「見つけた」

 視線の先には、二人の警察官。

 俺はあの二人の顔しか知らない。だからこうする。


「ああ。何か御用ですかっ……!?」

 その二人に倒れ掛かり、体に巻いた爆弾に。

 点火した――













 誤認逮捕。冤罪。ゼロにするなんて無理。しょうがない。

 それはそうです。

 しかし疑われるのが悪い。と警察官が言ったり、そのことへの謝罪も無し。本当にそれで世界有数の先進国の治安を守る組織なんでしょうか?

  


 一体一年で何人の人を誤認逮捕・冤罪で殺しているのでしょうか?

 誤認逮捕だということをしっかりと、逮捕してしまった人の周りに何度も伝え、誠意の謝罪をする。

 罰則も処罰もいりません。

 ただその人の人生を少しでも元に戻せるように。

 そして人として当たり前の謝罪をすることこそが、大事なのではないのでしょうか?



 メンツは人の一生より重いものですか?

 『化け物を狩るには、化け物にならねばならない》ある物語で言われた言葉です。


 私は問いかけたい。


 ――貴方達は、権力という人を喰らう化物ですか?

 ――それとも人として正しい行いができる、人間ですか?


 

 大分ソフトに書きました。実際の取り調べは更に過酷でエゲツないものになります。本文で書いたように、自白したのが悪いだなんて、一度でも取り調べを経験したりした人は言えないでしょう。まあヤのつく人や、良心もない人ならば耐えられるかもしれませんが。

友達で警察官になった奴が言ってました。

夢は夢なんだと。テレビでやっているんは、やらせ。もしくは数少ない良心を持った人達だと。寂しそうに言っていました。

誤認逮捕、冤罪。それぞれ一度だけ見たことがあるそうです。署の中で言っていたそうです、「やっちまったよー。てか疑われるようなことすんなよな」と。

良心があったらやっていけないのが現状の警察。

でも私は良心を持った彼等がもっと増えて欲しい。そんな矛盾したことを祈るばかりです。



もし削除した方が良ければ削除します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章がとても読みやすかったです。 展開も理解しやすいです。 [気になる点] せっかく良い作品なので誤字の訂正を! [一言] 読みやすさ、構成、どちらも尊敬します。 伝えていきたいことを物語…
[一言] 中々面白い作品でした。 ちょうど、そういう事件があったばかりなんでそういう事もあるかもなと思った。
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