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そう言ってウェイトレスは、スカートの裾を翻しながら店の奥へと走り去って行った。詩乃は、頬杖をつきながらメニューへと手を伸ばす。開いたページには、無数の写真が貼られており、そのどれもが詩乃好みの甘い洋菓子たちだった。
ページをめくる度に緩んでいく詩乃の顔は、やがて満面の笑みとかしていた。そして最後のページに差し掛かった時、詩乃の顔から表情が消えた。
「お待たせいたしました、お客様。こちらが本日の紅茶セット、ウェッジウッドのクイーンアンと四種のベリータルトになります。何かありましたらお手元のベルを鳴らしてください」
詩乃はウェイトレスの姿が見えなくなるのを確認してから、カップにてをかけた。
クイーンアン。
豊かな香とマイルドな口当たりの紅色の紅茶。イギリスとスコットランドを統治したイギリスのアン女王の名にちなんで作られた高貴な紅茶だ。