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彼は自室の208号室に着くと、羽織っていた黒のロングコートをベッドの上に乱雑に投げ捨てると、備え付けの壁掛け時計に目を移した。
午前10時35分。
早めの昼食をとるには早過ぎる時間帯なので、詩乃は暇つぶしもかねて、船内を見て回ることにした。
天井には、シャンデリア、中央には3mほどの女神像が4体背を向ける形で並んでいる。
この部屋は、中央ホール。
毎晩、ダンスパーティーの会場として使われるらしいが、その為だけに存在するには、惜しい部屋だ。
「もしかして、君も、旅行客さん?」