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「そうだろ、お前も許せないよな」
ゆったりと続いていた詩乃と雪平の会話は、唐突に割り込んできた鶴付の声で終わりを告げることとなった。その出来事に、二人は一向に反応を見せることはなく、ただただ静寂とも呼べるしらけた間が、その場を包んでいた。
誰一人として口を開く様子を見せない中、早くも耐えきれなくなった人物が口早に啖呵を切った。
「っ!なんで二人して黙るんだ。初対面の詩乃さんは良しとしても、ユキ、お前は何かしら反応をしてくれよ!俺をそんなに"仲間はずれ"にしたいのか、そんなに嫌いか雪平よぉ!」
怒鳴る。
それにとても近い行為に、詩乃は耳がキーンといたくなるような錯覚をおぼえた。
喧嘩を売られてしまった雪平の方はというと、
「鶴付、よく気付いてよ。まず、会話がそっちにいかないのは詩乃さんがマツに興味がないか、関わりたくないからだと思うんだ。だから悪いのは僕だけじゃない、そうですよね詩乃さん」
と、喧嘩を買い取りその責任を詩乃へ転嫁した。
まさか初対面の相手にそんなことをされるなど夢にも想っていなかった詩乃は、自らに向けられてしまった怒りの矛先を何とか別方向へ曲げようと、別の話題を切り出した。
それは自らについてのことで、詩乃にとっては一番話しやすい話題でもあった。
「こう見えても僕、探偵なんです」