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宛もなく歩いていると咲月と出会った中央ホールに行き着いた。当たり前なのだが、そこに立ち去っていった彼女の姿はなくその代わりと言ってはなんだが、2組のペアが立ち話をしていた。片方は老後を有意義に過ごしているであろう夫婦、もう片方は20代前半とおぼしき青年たちだった。詩乃がどちらから話しかけようか思案していると、向こうから詩乃に声をかけてきたのだ。もちろん、話しかけてきたのは青年たちのペアで、
「ね、君もお客さん?俺、神山鶴付、よろしくな。んで、こっちが俺の親友の東条雪平だ。あんたの名前は何ていうんだ?」
突然のマシンガントークに驚いて詩乃が話すという事を忘れていると、どこからか助け舟がだされた。
「答えなくていいですよ。こいつに関わるとロクなことがないんで、安全なうちに逃げてください。さあ、はやく」
そんな救済の言葉に踵を返そうとした詩乃だが、そうすることは叶わなくなってしまったのだ。
「ってめ、ユキ!お前俺のことなんだとお「もちろんトラブルメーカーだよ」
「俺の言葉を最後まで聞けよ、この腹黒野郎」
「そんなこと言っちゃうんだ、親友に向かって……とんだ悪ガキだね、マツ」
「ちょ、おま…その呼び方はやめ____」
突如開始された口論は途切れる間などなくお互いたたみ掛けるように言葉を発しており、詩乃の事が原因で始まった喧嘩なのだがその内容は日頃の不満を言い尽くしているようなものだった。
どうしようもないが、そのまま放っておくのもどこか良心が痛む詩乃としてはこの口喧嘩の収束先を作らずにはいられなかった。
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次話投稿は、11月29日。




