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訓練中断 ―カリナ、再び壁の向こう側へ―

 狐につままれたような表情のカリナが居た。


「え? 私、なんかやばいことしました?」

「そうだなやばいと言えばやばいかな」とルーカス、

「ここから先の教習内容は一度見直した方がいいね」とエレナ、

「ワンランク上の訓練を意識しないと教えきれません」

「あぁ、そうだね」


 二人で真剣な表情で話し合っていた。


「え? はい?」


 だが、戸惑うばかりのカリナは途方にくれるのだった。彼らの言葉に真意を問おうと話しかける――その時だった。ルーカスが腰に下げていたスマート端末が鳴った。

 

「はい、ルーカスです――え? カリナを? 今すぐ?――外部隔壁外の駐屯基地ですね? わかりました」


 ルーカスは端末を切りながらカリナに告げた。

 

「カリナ、今すぐ出かけるぞ。支度だ」

「え? どこに?」

「説明している暇はない!」

「は、はい」


 話すのと同時にルーカスは走り出した。そして、エレナに声をかけて装甲オフロード仕様の車両を借り出してプラズマ動力仕様のエンジンを掛ける。

 

「乗れ!」

「はい!」


 カリナは左腰に愛用のレギオンブレイドを下げて車に乗り込む。そして、彼らは一路、イスタンボールの外部へと向かったのだった。


§


 大容量のプラズマバッテリーに支えられた電気動力式の装甲オフロード車両大型は、よく晴れた空の下、一路北西を目指す。

 安定して走り始めてから、少しおいてカリナはルーカスに尋ねた。


「あの、何があったんですか?」


 シンプルなその問いかけにルーカスは答える。


「レオン隊長から連絡があった。君にどうしても来てほしいそうだ」


 レオンが呼んでいる――、その事実が複数の疑問を生み出した。

 傭兵アーセナルコマンドとしての技量を求めているなら、ヴァンガードパイロットとしての腕はまだ練習中だからありえないだろう。

 それになぜレオンが呼んでいるのだ? しかもこんなに急いで慌てて――

 カリナはとてつもなく嫌な予感を頭の中に思い描いた。


「――――!」


 だがそれを口にするのは飲み込んだ。声にして言ってはいけないような気がしたからだ。

 そうしている間にも防衛都市の外殻防壁にたどり着きゲートを通過し、その先の荒野を突き進んでいく。

 

「壁の中と外――、別世界のように違いますね」


 その言葉にルーカスが反応する。


「当然だ、壁の外は人類が生き残れるかどうかの瀬戸際の戦場だからな」

「そうですね、ここはもう戦場なんですよね」


 カリナはしみじみと語る。


「やはり戦場の風景は見慣れているのか?」

「ええ、見慣れているというより、目に焼き付いているという感じですね。失われた命の跡、倒された敵の残骸――それらが点在するかのように何もない平原の上に累々と並んでいるんです。いつになっても見慣れるということはないです」

「当然だな、ここで、見慣れたとか、見ていて楽しい――なんて言葉を漏らす奴がいたら俺はそいつを殴る」


 その言葉は案にルーカスが過酷な戦場を生きていたということを表していた。カリナも続けた。


「人間を滅ぼそうとする魔王軍、それに立ち向かう人間、私は人間たちの旗印となり100年にわたる大戦を終結に導きました。平和になった世界で生きていたけど突然こっちに飛ばされた。世界を平和にするまでの戦いは過酷だった。こう言う何もない荒れ果てた戦場は何度も見てきた」


 一呼吸おいてカリナは言う。


「この世界も、向こうの世界も、戦場が荒れ果てているという事実に変わりはないです」


 その時、ルーカスは尋ねてきた。


「カリナ、戦いは辛かったか?」

「楽しい戦いなんてどこの世界にもないです。勝利とは味方の屍を積み上げてなし得るものだから」

「そうだな」


 ルーカスはカリナを否定しなかったのだった。


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――勇者は、生まれた時から勇者だったわけではない――
これは、世界を救った勇者の物語ではない
世界を救う勇者が、生まれていくまでの物語である
少女カリナと精霊エリュシオ
二人の絆を軸に描く、本格ビルドゥングスロマン×ハイファンタジー戦記

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▼ 勇者カリナが、未来へ辿り着く直前の物語

AIと戦闘機械の未来世界へ飛ばされる、その直前――。
少女勇者カリナは、仲間たちとともに三百年の戦乱を終わらせる最後の戦いに挑んでいた。

『勇者カリナ/魔王城最終決戦録』を読む

―少女勇者カリナと仲間たちが挑んだ、魔王軍との最後の戦い―

勇者カリナ/魔王城最終決戦録 タイトル画

カリナシリーズ紹介ポータルサイト

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