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レオン再び ―戦場での禅問答―

 だが――


――ポッ――


 背後からカリナの肩を叩く者が居る。思わず振り向けば、


「えっ?!」

「どうした? 考え込んで」


 そこに佇んでいたのは誰であろうレオンだった。


「レオン隊長――」

「なにか、心に突き刺さる言葉をぶつけられた――って顔だな」

「え? ……えっと――」


 カリナは言葉に詰まった。レオンの部下の事だから言うべきか迷ったのだ。二人の様子をマイクも戸惑いながら見守っている。

 だが、レオンは組織を率いる者だ。状況を察する力に満ちている。


「うちの若いのに言われたんだろ? 〝つもりじゃ困る〟って」

「!――はい」


 一瞬驚いて、その後に素直に認める。


「戦場で戦うには〝実力が必須〟です。今の自分にそれがあるのか? と気づいてしまって」


 カリナの言葉をレオンは真剣に聞いていた。そして、カリナと正面から向き合い、言葉を投げかける。まるで師匠と弟子のように。


「カリナ――どんな世界の戦場でも、その戦場だけに存在する物がある。それはなんだと思う? 100の戦場があれば一つとして同じものは無い。それは一体何だ?」


 まるで禅問答のような言葉。カリナは言葉に詰まって声を出せなかったが、それがレオンが出した〝課題〟だと気づき必死に頭を巡らせた。

 右手を口元にそっと当てて思案すれば――


「あ!――」


 思わず声を漏らす。


「気づいたようだな?」

「はい――答えは〝戦況〟です」


 カリナの声にレオンはじっと聞き入る。


「白兵武器を持った大集団による正面からのぶつかり合いの場なら歩兵を充実させるべきですし、湿地帯を踏破するなら、水辺に適応した敵の襲撃を想定した武装が必須です。魔法によるぶつかり合いでも、敵の魔法や、その地形や天候で最適な魔法を選択しなければならない。同じ土地での戦闘でも、3日すぎればそこはもう別な戦況の戦場です。一つとして同じ戦場はどこにもないんです」

「それはお前の〝勇者〟としての経験からくる答えか?」

「はい!」


 レオンのその問いにカリナははっきりと頷いた。満足気に頷くレオンは、カリナの方を再び叩く。


「正解だ。未知の戦場、未知の敵、物資も武器も今までとはまるで違う。そこにお前が覚悟を決めて望むのであれば、その〝未知の戦況〟に適応しなければならん」

「おっしゃるとおりです」

「だからこそだ――まずは〝学べ〟、お前にはそのチャンスと場所がある。知らないことは罪だが、知ろうとすることでいくらでも挽回できる」

「えぇ、ご指導していただける環境はすでにいただきました」

「エレナ婆さんのところにいるんだろう? あの人なら何でも知ってる」

「はい! がんばります」


 元気を取り戻したカリナに、レオンはさらに告げた。


「それと、余計なことを言ったアイツには一発お見舞いしといてやるよ」


 そうニヤリと笑いながらレオンは去っていく。カリナはその背中に畏敬を込めながら頭を下げた。

 そして、冷静に遠く彼方の戦場を眺めながら、カリナはマイクに問うた。


「ねぇ、ヴァンガードが戦っている所を目視できる場所はある?」

「あるよ、帰り道少し迂回するけど」

「そこを通りたいの。この世界の現実が見てみたい」


 それまでとは違う表情にマイクも何かを感じ取った。


「分かった。トラックの中からだけど遠回りしてやるよ」

「ありがとう」


 そんなやり取りの後カリナは駐屯基地を去ったのだった。


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