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医師たち集う ―医療判斷と勇者の体―

 レントゲン、CT、MRI、遺伝子スクリーニング、血液検査も行う。さらには心電図や眼底検査も対象となる。特に細菌感染や寄生虫の可能性は一番厳密に調べられた。

 医師たちがヒルトを招いてディスカッションしている。


「すごい体だな」

「あぁ、戦闘職と聞いていたが、これで18歳? 冗談だろう?」

「医師が冗談と言うようになったらおしまいだ。これは現実だ」

「しかし、身体状況が特殊部隊の熟練兵士と変わらんぞ?」

「それは否定しない――」


 名だたる医師たちが回答に困る状況だったのである。


「当面の治療は外傷と微細な骨折の対応だな」

「クランケへの問診から異空間から転移してきたそうだ。その際に雷撃を食らったり、高いところから落下したりと過酷な状況だったようだ」


 ヒルトが補足する。


「頭部の外傷は治療をすでに始めています。指や手首に亀裂骨折が見受けられ、関節痛を訴える箇所もあります」

「そのあたりは任せよう。他に問題は?」


 すると内科医が意見する。


「幼少時において栄誉状態が劣悪だったことが推察されます。スラム街での保護児童に近い痕跡です。歯のエナメル質の形成不全。骨格の成長線の乱れ、特に鉄分欠乏による貧血は既往症だったでしょう。それが成長期に入り急激に改善された――、血液や内臓機能において今でも後遺症が隠れている可能性があります。継続治療を提案します」

「わかった、治療プログラムを作成してくれ。他には?」

「予防接種や免疫獲得は最優先でお願いします。おそらくこちらの世界とは異なる感染症体系の可能性があります。逆にこちらでは重要視される法定伝染病や特定感染症のワクチン摂取はまずされていません。社会復帰には絶対必須です」

「そこも任せよう」


 次に整形外科医からの意見だった。


「小柄な体格に対して、骨格の成長バランスがややいびつです。特に右腕と左腕で長さや筋肉がアンバランスです。やり投げやフェンシングなど、左右で機能性が異なるスポーツ選手に見られる傾向です。また、大腿部の発達具合から乗馬経験もあるでしょう。近代五種競技の選手に近いです。ただ――」


 そこで整形外科医が不安げに告げる。


「長期の戦闘経験からくる負傷や故障の蓄積は深刻ですね、右腕は細かい傷跡だらけです。左の小指に至ってはやや歪んでいます。衝撃からくる骨変形もあり、肋骨や鎖骨を骨折した痕跡もある。そうした既往症歴の蓄積から骨格が歪んでいます」

「治療は?」

「カイロプラティック療法と、関節組織の再生治療である程度は軽減可能です。左手の小指は牽引術などを併用して変形の軽減をはかります」

「傷を貯めに貯めたり――まさに勇者の体だな。よし、特に慢性症状は可能な限り対応してくれ」


 これも治療が決定した。さらに眼科医が警告した。


「眼底出血治療は必須です。頭部外傷からくる眼底出血が繰り返し発症していた可能性が高い」

「こちらの世界に来たときも落下したそうだ」

「それもありますが、左眼球は現在も微細出血が確認されます。放置すれば最低でも視野狭窄は避けられません。レーザーと網膜細胞再生で対応しましょう」


 こうして、カリナの治療に対する方針が決まった。

 負傷の蓄積、戦闘負担の蓄積、幼少時の栄養環境不良、免疫獲得不全、頭部外傷からくる眼底出血――、

 これらを総合的に治療する事が決まった。


「彼女は6歳の頃から戦闘にずっと携わってきた。本来であれば、親元で適切に養育されるべき時期に軍部に強制徴用されたという。だからこそ、我々のところに訪れた今、彼女の体を忌まわしい過去から解き放ち、健康体に帰する事が重要だと考える。各自、速やかに対応を始めてくれ」

「はい!」


 医師たちはカリナに対して真剣に向き合ったのである。


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