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幼い頃のカリナの記憶

 見知らぬ場所の施設の中、ベッドの上で眠りにつく。

 夢を見た。懐かしい記憶、忌まわしい記憶。それはカリナが平穏を奪われた記憶だった。


 カリナは孤児だった。

 両親は、襲来した魔族との戦いで命を落とした。かろうじて生き残ったカリナは国境沿いの孤児院に苦労して徒歩でたどり着いて、そこでシスターたちとひっそりと暮らしていた。

 春の暖かいある日のこと。国境を越えて軍隊がやってきた。

 カリナの生まれた国の名はルミナリア、そこと国境を接している軍政国家ネルガル、独裁制の強い国家で隣国ともたびたび問題を引き起こしているやっかいな国だ。


「何ですかあなたたちは!」

「ここはルミナリアです! ネルガルの軍隊が荒らしていい場所ではありません!」

「黙れ!」


 抵抗した孤児院のシスターの1人が問答無用で切り伏せられた。恐怖がその場を支配した。


「10歳以下の子供たちを集めろ」


 士官の命令で兵卒たちが動く。まだ幼そうな子供たちを20人ほど強制的に集めた。その中にカリナの姿もあった。兵の1人が頑丈な鉄製の箱の中に納められていた1本の剣を取り出した。黄金色に輝く聖剣で十字つばの根本には大粒の輝くクリスタルがはめ込まれている。


「1人1人順番にこの剣を握れ」


 怯えて動かない子供たちをネルガルの兵は恫喝する。


「急げ!」

「モタモタするな!」


 槍や剣を手に威嚇してくる大人たちに子供達は抵抗できなかった。子供たちの親代わりであるシスターたちも盗賊以下の凶暴性をあらわにする兵隊たちになす術もなかった。

 子供達は言われるままに1人1人順番に剣を握りしめていった。兵隊たちとは違う豪華なキャソック姿の魔導士が控えていて、彼は剣のクリスタルの反応をつぶさに観察していた。


「陰性、陰性、陰性、陽性、陰性――」


 陰性と言われた子供達は返される。陽性とされた子供達は引き離された。いよいよカリナの番だ。


「陽性・特別加算」


 兵隊たちを率いていた士官の1人がニヤリと笑う。


「上玉を引き当てたか。陽性は何人だ」

「特別加算1人に、単純陽性が3人です」

「連れて行け」

「はっ」


 兵隊たちが集まり〝陽性〟と指定された子供達を引き立てていく。


「何をするんですか!」

「やかましい!」


 子供達を取り返そうとするシスターを兵は槍の竿で殴打した。士官の一人が金貨の詰まった袋を投げ捨てる。


「ガキどもの代金だ」


 有無を言わさぬ態度だった。何か叫びをあげれば攻撃を加えられるのは間違いないだろう。


「先生! 助けて!」


 連れ去られる4人の子供たちの1人が耐え切れずに救いを求めた。


「うるさい」


 兵は容赦なくその子供を殴りつける。そこに一切の優しさも慈悲もない。

 カリナはただ、罠に捕まった子ウサギのように怯えるしかできなかったのだ。それはあまりに辛い地獄の日々の始まりの記憶だった。カリナは夢を見ていたのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


本日分の更新はここまでとなります。


今回は、カリナの幼少期に刻まれた重い記憶に触れる回となりました。

彼女が背負ってきた過去と、それでも人を救おうとする理由を、これから少しずつ描いていきます。


明日以降も『聖剣機兵カリナ』をよろしくお願いいたします。

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