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水没ディストピアの百合娘たち──海棲異能が滅びの真実を暴く  作者: 縦凸誤史
第1話『私たちは、地球に引きこもっている』
2/2

シャチ娘、ギャルの下着盗撮の疑いで身柄確保!?

 敵地へ急ごうと泳ぐシャチ娘の前に、八つ目のウナギ──の力を宿した少女が立ちはだかった。


 抵抗する間もなく、シャチ娘はその腕にがっちりと捕まる。

 元々パワー型のヤツメウナギが人間サイズになり、手足まで得たのだ。まともに勝てる相手ではない。

 彼女は水面へと引きずり上げられ、派手な水しぶきとともに顔を出した。


「おいコラ変態シャチ娘! 今、あぁしのパンツ盗撮しようとしただろ!」


 ヤツメ娘が勢いよく怒鳴る。海中の超音波ではなく、素の声だ。


「そんなつもりないよ。私はここに用事があって──」


 必死の弁明も、相手の怒りには届かない。


「あー最悪。用事って盗撮のこと? 〈アレさえ撮れれば〉って言ってたの、聞こえてんだよ!」


「違う! それはそこのマン──」


 タワーマンションを指そうとして、シャチ娘は慌てて口をつぐむ。

 “マン”で言葉を切ったのは最悪だった。


「あ? そこのマンって何だよ!? あぁしのカラダがそんなに恋しいわけ?」


 確かに、ヤツメ娘は目を引く存在だった。

 ギャルらしい派手なメイク、銀色のツインテール、ミニスカート。

 黒のセーラー服とグレーのセーターは、まるでヤツメウナギの配色そのもの。

 そして、左右に七つずつ並んだ髪飾りが、不思議なほど自然に馴染んでいた。


 ヤツメ娘はシャチ娘のスマホを奪い取り、画面を突きつける。


「ほら見ろよ! バッチリ撮れてんじゃん!」


 映っていたのは、黄色い三角形にビックリマーク──標識のような模様。


「あれ? 標識……?」


「あーめんどくさ。これ、あぁしのパンツの柄!」


「へぇ、変わったデザイン」


 シャチ娘は状況を忘れたように感想を漏らす。

 ヤツメ娘はそのペースに飲まれかけ──


「でしょ……って、話逸らしてんじゃねぇ!」


 寸前でノリツッコミに切り替えた。


「とにかく、私は盗撮なんてしてない。帰って」


「あんたみたいな“女の敵”を野放しにできるかよ。せっかく女だけの世界になったのに、なんでこんな目に遭わなきゃなんねぇんだ」


 その言葉に、シャチ娘の表情が陰る。


「私は……そういう“敵”と戦うために来たの。今だって──」


 言いかけて、飲み込む。

 ここで明かすには重すぎる真実だった。


「意味わかんねーし」


 ヤツメ娘はそっぽを向く。


「ねえ、話だけでも聞いて──」


 その瞬間、シャチ娘は忘れていた。

 ここが“敵地”であることを。


 太陽の光がふっと遮られ、ヤツメ娘の顔色が変わる。


「ちょっ……なんでオトコが生き残ってんだよ!?」


 彼女の視線の先には、ありえない存在──

 滅んだはずの“旧人類の男”。


 男はシャチ娘の背後に影のように迫り、低く濁った声を漏らした。


「……見ぃつけた」


 その声は、海底の泥を思わせる不気味さだった。

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