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僕はスライムとラブラブなハーレム生活を送れるかもしれない。  作者: 最条真
二章

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33 星屑なりの意地



――星狩りよ、駆け巡れ。




 

 空を見上げれば、流星のごとく降り注ぐ異星体。文字通り、『流星』――卵のような隕石が空から次々に降り注ぎ、地上に飛来した瞬間、爆発音とともにクレーターを形成し、そこから、たった今孵った異星体が歩き出す。森は星に襲われ、瞬く間に異星の住処となる。


 僕たちが目視したのは、”宙を泳ぐ魚”。

 胴体にまで複数の目がある、黒い異形のサンマを想像してもらえればいい。

光学迷彩(カメレオン)》のスキルが手伝い、目標はこちらの存在を視認できていない。不可視の触手で包まれた僕たちは、透明人間の内臓に収められたみたいに外側からは存在を視認できない。そのくせ、外の存在をガラス越しのように”視認”することができる。便利な触手は、三ツ星になって更に汎用性を増していた。


 と言う訳で、先行はこちらから。



「――ありゃ、一ツ星の雑魚さんですね」


 愛理が、にぃ、と獲物を見つけた猫みたいに笑った。

 その声に合わせるように、桃色の髪がふわりと揺れる。次の瞬間、彼女の右手は迷いなく太もものホルダーへ落ちていた。

 引き抜かれる。

 金属音すら重い。小学生の細腕には不釣り合いな、黒鉄の塊。

 星砕重撃銃アルデバラン――デザートイーグルをベースにした、馬鹿げた威力の特注拳銃だ。


 ごつり、と掌の中で質量が鳴る。通常の拳銃ならあり得ない暴力的な存在感。それを愛理は、玩具でも弄るみたいな気軽さで両手に収めてみせた。

 銃口が持ち上がる。

 不可視の触手に穴が開く。弾を通すための穴だ。

 宙を泳ぐ黒い魚の異星体へ、まっすぐ照準が吸い込まれていく。



 ――さすがに気付かれる。


 

 自分の命を脅かす凶弾の存在に、胴の目玉がぎょろりと蠢く。



 しかし、遅い。

 愛理の笑みは崩れない。



「――《流星の貫徹》」



 轟音。

 小学生が撃ったとは到底思えない、暴力そのものみたいな発砲音がこだました。

 マズルフラッシュが夜の切れ端みたいに弾け、銃口から、スキルの補正を受けた銀色の弾丸が射出される。


 この銃も例にもれず《シルバーバレット》の一つ。

 中でもこれは――異星体を確実に一撃で葬り去るための固定砲だ。


 愛理の《流星の貫徹》を乗せたそれは、空気抵抗すら無視して、まるで一条の白線みたいに森を裂く。

 異星体は胴の目玉を一斉に見開き、身を捩って回避を図る。


 だが遅い。


 弾丸は進路上の枝葉も、夜気も、存在そのものも置き去りにして、黒い魚体の中央へと突き刺さった。



 一拍遅れて、果実が破裂するみたいな音がした。



 胴体が内側から膨れ、次の瞬間には弾け飛ぶ。無数の目玉ごと肉片と黒い体液が宙に散り、残った尾が痙攣するように二、三度はねた。

 それきりだった。

 異星体は断末魔すら上げられず、星屑みたいに崩れ落ちた。それから、しばらくして――宙へと還っていく。十数秒の神秘、それを見届けた後にスマートウォッチを見る。一ポイントが加算されたことを確認して、纏っていた触手を解く。



「触手の中、息苦しかったのです!」

「それが唯一の欠点かもな」

「あと初くんと密着するのもごめんこうむるのです!」

「それは悪いと思ってる」

「でもそれはスキルの制限上仕方ないと、愛理はプリン一つで理解してあげるのです」

「駄賃を取るのかよ」

「小学生の柔肌に触れた代金なのです」

「はいはい」


 僕が頷くと、愛理は異星体を倒した時以上にガッツポーズを取った。


「やったぁ!」


 心底嬉しそうなのは目の保養に大変よろしいのだが、今が交流戦の最中であることは忘れないでもらいたい。背後を振り返ると、既に、次の異星体がいる場所へと続く”氷の舗装路”は完成していた。



「じゃ、行きも帰りもよろしくお願いするのです、王子様♪」


 言うが早いか、愛理はぴょんと一歩だけ踏み出して、両手をこちらへ伸ばした。抱け、という意味である。なんて傲岸不遜な小学生だ。


「はいはい、お姫様」


 呆れ半分で腰を落とすと、愛理は満足げに平たい胸を張り、当然の権利みたいな顔で僕の腕の中へ収まった。軽い。拍子抜けするほどに。あれだ、ウサギを抱っこした時と似てる。絶対に落としてはいけないくせに重みを感じない、小動物の命だ。

 戦場で.50口径じみた怪物拳銃をぶっ放していた張本人とは思えない柔らかさと細さが、制服越しに伝わってくる。

「ふっふっふ、王子様に抱っこされて移動とは、愛理もついに高貴な身分になったのです」

「高貴な身分はプリンを要求しないと思うけどな」

「それは偏見なのです。貴族ほど甘味を食べる生き物なのです。だって貴族って大体太ってるイメージがあるのです」

 訳の分からない理屈をこねながら、愛理は僕の首に腕を回した。近い。桃の匂いがした。本当に軽くって、変に緊張する。


「その理屈だと、愛理も太るんじゃないか?」

「愛理はいい子だから大丈夫なのです」

「なんだその理屈は……」


 あまりにも自信満々に言うもんだから、こっちから幻想を壊すわけにもいかないよなぁ。というか小学生の目の輝きが尊い。守ってやれなければ……。


「あ、落とさないでくださいよ?」

「お前が暴れなきゃな」

「愛理はか弱いお姫様なので暴れません」

「か弱いお姫様ほど暴れるんじゃないか?」

「弱い犬ほどよく吠えるというやつですね。残念ながら愛理は弱くもないしワンちゃんでもないのでおとなしくしています」

「さすがだぜお姫様」

「えっへん、なのです」


 再び、愛理は胸を張った。張るほどのものはないのに、その仕草だけは一丁前に威風堂々としているのが面白い。得意げに細められた目が『もっと褒めてもいいのですよ』と雄弁に語っていた。腕の中に収まっているくせに、まるで玉座にでも座っている気分なのだろう。小さな顎がつんと上を向く。可愛い。腹が立つくらい可愛い。守ってやらないといけない生き物が、どうしてこんなにも偉そうなんだろう。まるで猫だな。お猫様だ。


 僕は改めて、決して落とさないように愛理を抱え直し、結姫乃が敷いた氷の舗装路へと踏み込んだ。靴裏が吸いつくみたいに噛み合い、次の一歩が異様に軽い。

 冷たいはずなのに滑らない。むしろ、地面を蹴った力が減衰せず、そのまま前方への推進力に変わっていく。舗装路は森の起伏も、木の根も、ぬかるみもまとめて無視して一直線に伸びていた。これが便利なのは、単に移動が速いからじゃない。悪路に足を取られないことで余計な体力を使わずに済み、安全な道が事前に保証される点にある。奇襲のための進軍路であり、狙撃位置に付くための土台であり、負傷時の搬送路でもある。


 つまり、白雪結姫乃の氷は攻撃手段である前に、画期的な移動手段にもなりうる。

初期半径五百メートルの戦場は、一時間ごとに百メートルずつ削られていく。

 なら、移動の速さはそのまま生存率だ。

 そこに僕の『三ツ星相当』の身体能力が合わされば、この森はもう広くない。

 

 僕は雪の恩恵を全身で受けながら、森を切り裂くみたいに次の異星体へ駆けた。





「なんでボクが月野と同じチームじゃないのさ……」



 チーム決めが決まった当初、ミヤは不服そうに頬を膨らませていた。最終的な民意に従う程度の行儀のよさは備えているが、自分が休んでいる間に”仮決め”されていたチームに不満を持ったらしい。自分の知らないところで話が決まっていることに対する苛立ちは分かる――が、今、この『議論タイム』では、時間を少しでも有効に使わないといけない。チーム決めで揉めるなんてのはもっての他だ。


 と言う訳で、戦術の指揮を取る結姫乃に視線を向けると、彼女は頷き、ホワイトボードの前に立って説明を続ける。


「まず聞きたいのだけど。ミヤ。あなたと初くんが『交流戦』の意義って何だと思う?」



 ミヤは文句を言いたげに片眉を上げ、ふっと口を閉じた。知性を持つ青色の瞳が、ホワイトボードの端に貼られた簡易マップへ流れる。交流戦の縮小ルール――得点計算――異星体の討伐――他星団との衝突。視線が泳いでいるようで、実際は一つずつ条件を拾っている。ミヤの頭の中ではたぶん、僕たちが置かれている状況が、要点だけ抜き出されて並び替えられていた。だが、僕が理解しているように、そのどれもが、僕と宇都宮の分断に関係がないと理解したのだろう。やがて、諦めたように肩を竦める。


「ボクと月野が『星座』に相応しい格があると、”上”の連中に教えること、でしょ」


 結姫乃が満足な回答を得た教師のように頷く。


「ええ、本来、事はもっと単純だったのよ。『宇都宮有』一人が星座として認定されるなら、あなたと初くんが《融和》して、あなた自身の有用性を示すだけでよかった。だけど――」

「僕が《星座審査》に行くって言っちゃった?」

「その通りよ初くん反省しなさい」


 厳しい目を結姫乃に向けられた。この件については清算したとばかり思っていたが、まだ尾を引くのか。申し訳ない。……愛理がプリンで買収できるように、こいつも何かで買収できないかな、というか結姫乃の好物って知らねぇなとか考えているうちに話は進む。



「初くん自身が星座会議にかけられるなんてアクシデントさえなければ、あなたとミヤが組むことは確定事項だった。いい? あなた自身が星座審査にかけられる以上、ミヤに頼らない自身の力で、価値があると証明しなければいけない。何かに依存した力じゃない。”あなた自身の力”が必要なのよ、分かる?」

「それを、交流戦で証明しろってことだろ?」

「ええ。……というか、本当にあなたたちの生き死にがかかってると思いなさいよ。交流戦で人死にが出ることはあり得ないけれど、そのあとは知らないわ。――所長。今回の交流戦は”来る”んですよね?」


 結姫乃が、ホワイトボードの前でぴたりと口を閉ざしたまま、ソファに深く腰掛けている渡辺さんへ視線を向ける。場の温度が、ほんの少しだけ下がった気がした。さっきまでの講義めいた空気とは違う。確認じゃない。確信を得るための問いだった。

 渡辺さんは組んでいた脚をゆっくりほどき、肘掛けに預けた指先でとんとんと二度だけ叩く。それから、赤い瞳を細めた。


「……ああ。来る。大規模星団【智慧の醜態】の面々がな」

「ちえのしゅうたい……?」


 愛理がよく分からないのです、と言わんばかりにその単語を繰り返した。渡辺さんは膝の上で捕えている愛理の頭を撫でまわしながら続ける。


「【東京大停電】を防げなかった恥晒しを自称している連中さ」

「前は【智慧の大衆】って名前だった、のは業界では有名な話だよ」


 渡辺さんに、付け加えるように五十鈴先輩が続けた。

 大衆から醜態へ。東京大停電を防げなかった恥晒し――その癖に――大規模星団。


 星団には『規模』がある、と言うのは有名な話だ。

 星団の格付けは、主に所有している戦力によって決められる。

 


『小規模星団』

:条件・総合戦力《★★★》…日本に73星団


『中規模星団』

:条件・総合戦力《★★★★》…日本に30星団


『大規模星団』

:条件・総合戦力《★★★★★》…日本に5星団



 つまり、大規模星団と言うだけで、星団の中でTOP5、五ツ星相当の戦力を有している最高峰の存在なのである。


「大規模星団って、すげーつえー方々の集まり、なのですよね? そんな戦力を、『交流戦』なんかで遊ばせてる暇はあるのです? というか、何故見に来るんです? そもそも、栃木って、粒揃いとは聞きますけれど、東京と比べたら――」

「愛理。奴らは別に交流戦に興味があるから来るんじゃない。《審査》を万が一にも違えないように来るだけだ。目的は観察だよ。月野と宇都宮のな」


 渡辺さんは、交互に僕たちを指さして言った。


「あそこの老人は頑固だが公平でね。ボケちゃいるし盲目だが、まるっきりクズってわけでもない。ただ――自分の正義を妄信している。単なる癌とも言いづれぇ……いろいろ複雑なんだよなぁ……」


 そこで、渡辺さんは説明を諦めたように天を仰いだ。



「――スパルタなのは重々承知だが、二人とも、結果を出せなきゃ死ぬと思え。老人は成果しか見ねぇ」





 氷の道は次の異星体まで一直線だ。探す、見つける、寄る、隠れる、撃つ、倒す。その手順が馬鹿みたいな速度で回る。ピエロのジャグリングよりもずっと早く、僕たちはそのサイクルを回し続ける。他の星団の連中に見つかる時もあったが、今回の交流戦は”積極的に敵対する理由”がない。こちらが引けば相手も引いた。


 五十分で、二十四ポイント。『一時間ごとに逐次更新される』らしい得点票を見ない限り何とも言えないが、僕手には好感触だ。悪くない――むしろ良い。


「初くん、五十分なのです」


 腕の中の愛理が知らせてくれる。同時に僕は小高い丘から森を見回す。


 それははっきり見えた。森の向こう、木々の海を突き破るように、青白い氷柱が一本、真っ直ぐ空へ伸びている。陽を受けて淡く光るその柱は、遠目にも異様なほど目立っていた。散っていた味方を呼び戻すには、十分な狼煙。あれは目印だ。僕たちが再び集合するための、目印。


 物質を創造することができる結姫乃の特権であり、こういったチーム戦での大きな強み――集合地点を自由に決められる。万が一、あの氷のもとに敵が集ったとしても、そこには僕たちが揃っているわけで――圧倒的有利には変わりない。


「行くぞ」

「わかったのです♪」


 僕は愛理を抱え直し、結姫乃が敷いた氷の舗装路へと踏み込んだ。


 靴裏が吸い付く。滑るように走っているのに、一歩ごとの踏み込みは妙に確かで、加速するたび景色が横へ流れていく。木の根も倒木もぬかるみも、全部置き去りだ。森を駆けるというより、森の上を一直線に進んでいる感覚に近い。腕の中の愛理がきゃっきゃと楽しそうに笑う。スケート感覚を味わっているのだろう。僕も同じ気持ちだった。

 氷柱は近づくたびに大きくなり、その根元に立つ人影も、やがてはっきり輪郭を持った。こちらの目視と同時、氷の柱は先端から溶けていく。


「遅いよ、月野っ!」


 悪い悪い、とハグを要求してきた宇都宮を適当に受け流しつつ、残りの面々を見る。

 五十鈴先輩――ミヤビ――結姫乃。よし、全員揃っている。


「――全員、揃ったわね」


 結姫乃が笑った。

 予定調和を意味するような笑みだった。





 三人一組のチーム戦。ただし、二チームに分けられる。転送地点はチームごとにバラバラ。

 さて、その時に優先すべきこととは何だろうか。


 白雪結姫乃はこう結論付けた。

 全隊の合流。また、能力の相性が良いもの同士で再びチームを組み直し、二人一組・三チームの人海戦術――”数”で試合を支配する。


 試合開始直後、結姫乃が所属するチームは即座に目印となる氷柱を形成した。流石に他の星団は近寄ってこない。わざとらしすぎて、逆に罠かと警戒したのだ。しかも序盤も序盤――リスクを取るような場面じゃない。そんな理性的な判断が、渡辺探偵事務所の面々の早期合流につながった。


 探査は五十鈴・ミヤビに任せ、結姫乃は道づくりに専念。

 宇都宮は安全に結姫乃がいる地点から”分身”を派遣し、次々と雑魚を撃破。

 分身では倒せるか怪しいと判断したものについては、月野と愛理で対処。


 ――ここまでは順調。序盤は比較的楽に討伐可能な『一ツ星』の異星体が各地に大量に湧くのではないか、という推論も予想通り。結姫乃の能力が、本来”補助”に向いていることもあって、序盤~第一縮小が終了するまでのリードは確保できた。


 得点票の表示。二時時点で二位と四位を渡辺探偵事務所のチームが抑えていた。


 ――悪くない。


 が、良くもない。



「……一位じゃない?」



 一位の名前には、当然と言わんばかりに”スタープロモーションBチーム”と記されていた。





 三人一組のチーム戦。ただし、二チームに分けられる。転送地点はチームごとにバラバラ。

 さて、その時に優先すべきこととは何だろうか。


 緋川遊乃(ひかわゆの)はこう結論付けた。

 全隊員の拡散。実力に優れた彼らは集合する必要すらなく、単独で狩りを行える。群れなどは必要ない。本物王者は単独で事を成す。孤高にして最強がモットー。


 数多くの星団が、わざわざリスクを取ってまで《三ツ星》と戦う危険を冒さない。数こそ少ないが、序盤でも三体は存在したそれらを――虚木響介が二体、他のメンバーが一体討伐に成功していた。


 個々人が最強格。シンプルであるがゆえに、語るまでもない戦略。


『お前ら、自由に動け』


 その言葉が聞いたのか何なのか、いつも通りの戦果を挙げ続けている。

 

 得点票の表示。唯一の司令塔である緋川は目を通す。

 一位は当然、Bチーム。


 だが、Aチームの順位は、こともあろうか五位だ。

 八星団しか参加していない中で、この体たらくはなんだ。


 そう言いたいところだが、相手が相手か。


 ――今回の相手方には、たった一ヶ月で《オーバーロード》を経験した化け物がいる。


 

 ああ――嗚呼! 妬ましく、疎ましく、忌々しくも輝かしい才能の原石!

 二つ星(私たち)の事なんか捨て去って、遥か先で輝き続ける遠い彼方の一番星! 私たちは路傍の石か? 畜生の糞以下か? 光どもめ、若すぎる宝石どもめ――今に見てろよ。


輝跡捕捉(サザンクロス)


 緋川は”目の前”で十字を切ることで――世界と調和し、世界と俯瞰し、世界に接続し――”天の目”を得る。

 

  

 彼女についている星座は――南十字座。南天に灯る、小さな導きの星座だ。

 夜の海で進路を示すように、戦場の無数の情報の中から“見るべき光”だけを拾い上げることに特化した星。


 後見星は、《ギナン》。南十字を形作る第五の星――主たる四星ほど名を知られず、ともすれば見過ごされる補助の光。だが、その加護は未来を暴くことにも、世界を透かし見ることにも向いていない代わりに、誰も気に留めない痕跡、掻き消えかけた敵意、擬態の綻び、埋もれた殺意――そういう“弱い光”を見つけることにだけは、異様なまでに長けていた。


 主役ではない。だからこそ、主役の光を見失わない。


 緋川遊乃の《輝跡捕捉(サザンクロス)》は執念深く――盤上にコマを並べるように、主要な全てを把握できる。



 ――自由に動け。



 ――私の自由に動け。



 ――勝利と栄光と輝きを約束する。



 

 そして、星屑なりの輝きを見せてやろう。

 

 

 ――限りない極光を妬む、星屑なりの意地を見せつけてやるんだ。







 




























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