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僕はスライムとラブラブなハーレム生活を送れるかもしれない。  作者: 最条真
二章

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25 接敵


 白雪家のリムジンが滑り込んだ先は、海沿いに建つ巨大な貸し切りコテージだった。

「……コテージってレベルじゃなくないか、これ」

 車を降りて見上げた木造三階建ての豪奢な本館は、周囲の自然と調和しつつも、どこか要塞のような威圧感を放っている。

 外壁には潮風を防ぐ強固な加工が施され、広大なウッドデッキの先には手入れの行き届いたプライベートビーチが広がっていた。

 一見してただの超高級リゾート施設だ。

 これが星団が所有してるって、マジか。


「複数の星団が集まるんだから、これくらいは当然よ。ここが私たちの拠点になる宿泊とミーティング用のメイン棟。南側には星へアピールするためのプライベートビーチやBBQ場があって、少し離れた東の岩礁地帯には、最終日・交流戦の本戦で使う『戦闘区域』の『森』が用意されているわ」

「森で戦うのか?」

「えぇ。あとで星団でまとまって偵察に行くわよ。毎回『罠』や『地形』が変わっていたりして大変なの」

 車から降りた結姫乃がキャリーケースを引きながら、淡々と施設の説明をしてくれる。遊びと殺し合いの設備が隣接しているというのも、いかにも《星狩り》のイベントらしい環境だ。

「部屋割りは当然、男女別だからね。エッチなこと考えてない?」

「考えてねぇよ」

「あと、ミヤを内に抱えておくのもやめておきなさい。同室に『格上』の人間がいる事実を鑑みると、危険よ」

「……じゃあどうしろと。放牧でもしておけばいいのか?」

「え~。出来なくはないけどさぁ、どうせならコテージを満喫したいなぁ……」

 うなじから生えた触手から非難の声が上がる。

「私にミヤを移せばいいでしょう」

「……同室の人間にバレるリスクがあるんじゃないか、どっちにしろ」

「私には『個室』が用意されてるから問題ないわ」

「何故」

「白雪家が所有している物件だもの」

「……はぁ?」

 思わず間抜けな声が漏れた。星団の施設の所有権が結姫乃の家にあるとは。

 見上げるような三階建ての巨大要塞コテージに、広大なプライベートビーチ。

 これらすべてが、個人の持ち物だと?

「お前、マジで令嬢なんだな……」

「だから、結婚すればリムジン乗り放題って言ったじゃない」

 どこまでも平然としている結姫乃に、僕は盛大にため息をついた。

 ん、てか……。


「……お前の『家』が、《星狩り》に協力してるのか?」


 僕の質問に、結姫乃は当然と言わんばかりに頷いた。

 個人じゃなくて、『家』単位で……?

 

「まぁ、被災者で、かつ『権力』のある家に《異星体》の真実が伝えられるのは珍しい話じゃないわ。そうして、《異星体》を駆逐するために支援を要請されるのも、ね」

「……そうか」

「辛気臭い顔してるんじゃないわよ」

 蹴られた。

 脛を思いっきり、手加減なく。

 結姫乃なりの檄なのだろうが、それはそれとして痛い……。

「早くミヤを私に移しなさい。……出来るわよね?」

「だってよ。出来るか、宇都宮?」

「まぁ、ボクはいいけどさ。結姫乃はいいの? ボクを取り込んだら、ボクに身体を乗っ取られても不思議じゃないんだよ?」

「? そんなことしないでしょう? ミヤはいい子だもの」

 結姫乃は涼しい顔で断言した。

「ふぅん」

 少し声色が高くなった宇都宮が、僕のうなじから抜け出て球場にまとまっていく。つい先日、結姫乃に飲ませたような飴のような形状で、結姫乃の掌に向かい、彼女は受け取ったそれを、ほとんどノータイムで飲んだ。

「躊躇とかしねぇの?」

 苦笑しながら聞いてみる。

「は? 安全なものを飲むだけでしょう?」

「なんでそんな自信満々なんだよ」

「私は今無敵なのよ」

 そう言って、結姫乃はどこか嬉しそうに僕のことを見た。

「今の私にはあなたがついているからね」

 本当にうれしそうな微笑を浮かべられて、照れる。可愛いな、こいつ、とつい思ってしまった。

「浮気はダメだからねー」

 結姫乃のうなじから現れた水色の触手――当然宇都宮――は、告げる。

「わかってるっつーの。つーか、結姫乃だと水色になるんだな、お前」

「ん、まぁ、宿主が持つ色素に影響されるからね」

「『能力』も変わったりするのかしら?」

「あー、たぶん? というか、ボクたちの被創目的が『宿主』に適応して強化することだからねー。ボクを宿していると強くなるのはもちろん、宿主に適応した能力を持つ……んじゃないかな。試したことないからわかんないけど」

「……『被創目的』……」

 結姫乃が呟く。

「あなたの話が聞けたら、《宇宙神話》の解明が進みそうね」

「そんな昔話聞いて何になるのさ?」

「星と星の関係が分かるようになるわ。新たな《星》を見つけることにも役立つし……異星体からの直接の情報提供は貴重なのよ」

「なぁ、《宇宙神話》ってのは……」

「別に話してもいいけれど、――ついたわよ」

 歩きながらしゃべっているうちに、駐車場から遠くに見えていたコテージにたどり着いていた。

「ここからミヤは私の中に引っ込んでなさい」

「はーい」

 そう言って、ミヤは従順にも結姫乃の中に沈んでいった。

 

「じゃあ、初くん。――ご武運を」


 なんでそんなことを祈られるのか――僕は疑問だった。


 結姫乃と別れ、僕は一人でエントランスを抜けた。

 涼しい空調が効いたメインコテージの内装は、外観の威圧感とは打って変わり、リゾートホテル顔負けの洗練された空間だった。

 すげぇな結姫乃家は。マジで結婚したら玉の輿じゃねぇか。

 そんなことを考えながら歩く。

 吹き抜けの広大なリビングには、無駄に座り心地の良さそうな革張りのソファが並び、間接照明が落ち着いた影を落としている。

 そのリビングの中央、大きなコルクボードに今回の『部屋割り表』が張り出されていた。

「えーっと、……二階の204号室、か」

 相部屋であることはすでに聞かされている。

 ふかふかの絨毯が敷かれた階段を上り、二階の静かな廊下を進む。建物の防音性が高すぎるせいで、かえって自分の足音だけがやけに響いて聞こえた。


 コツ、コツ、コツ。


 やがて、目的の『204』のプレートが掲げられた重厚な木製のドアの前に辿り着く。

 ――『じゃあ、初くん。ご武運を』


 別れ際の結姫乃の、妙に含みのある言葉が脳裏をよぎる。

 ただの相部屋に入るだけだというのに、まさか、すでに中にヤバい奴がいるんじゃないだろうな……。

 僕は小さく息を吐き、警戒しつつドアノブに手を掛けた。

 重厚な木製のドアノブを回すと、カチャリと滑らかな音を立てて扉が開いた。

 隙間から漏れ出す冷えた空調の風を浴びながら、僕は204号室の中に足を踏み入れる。


 木のいいにおいがする。


「……相部屋っていうか、普通にスイートルームの寝室だな」

 室内は想像以上に広く、壁沿いに高級そうな木製のベッドが四つ、等間隔に並べられていた。床には毛足の長い絨毯が敷き詰められ、奥の大きな窓からは、ブラインド越しに夏の強烈な日差しが幾筋も差し込んでいる。

 すでにベッドの脇には、見知らぬボストンバッグや荷物が無造作に転がっていた。他の星団の連中も到着しているらしい。

 手前側の空いているベッドに自分の荷物を置こうとした、その時だった。

 微かな衣擦れの音が、静まり返った部屋に響いた。

 反射的に視線を奥へ向ける。

 一番窓際、ブラインドの影が落ちるベッドの上。そこに、仰向けに寝転がりながら、退屈そうにスマホをいじっている男の姿があった。ヘッドホンをして、おそらくは音ゲーに熱中している、オレンジ髪の男だ。

 荷物を置いてから、まぁ、挨拶だけはするかと思い、肩にちょんと触れた。

 すると――

 

「どわぁぁぁぁっ――!?」


 素っ頓狂な声を上げて、男は思いっきりひっくり返った。

 冗談だろって勢い。まるで猫のように、跳ね、回り、空中で一回転してから床に着地した。当然、その勢いでヘッドホンは外れていた。

「あ、悪い。驚かせるつもりはなかったんだが……」

「――男!?」

「は?」

「男かキミは」

「僕が女に見えますか」

「マジで、マジでマジでマジで!?」

 やけにテンションの高い男は、そのまま僕に歩み寄ると、思いっきり肩を揺らしてくる。ぶんぶんと、瞳を輝かせながら肩を揺らす姿は、なんだか大型犬を想起させた。

「珍しいどころの騒ぎじゃねぇ! 朝桐クンに続き栃木で三人目! 進歩だ! 人類の!人類の進歩じゃねぇか!」

「テンション高いなお前……!」

「あーつーかそうか。新人なら知らないか? この業界の男女比について」

「男女比? ……悪い、僕自分以外の星団のこと知らなくて」

「いやいや大丈夫大丈夫。『先輩』であるオレが全て手取り足取り教えてやるよ」

「……先輩?」

 先輩……先輩か、たぶん。

「すいませんタメ口使っちゃって……」

「いやいや大丈夫問題ない。フランクな感じで接してくれる後輩が欲しかったんだよ! まぁまぁとりあえず男女比の話だよな? お前、聞いて驚けよ? ――百人に一人だ」

「はい?」

「女が九十九人いたら、男が一人しかいねぇんだよこの界隈!」

「えぇ……?」

 なんだそれは。

 なんで星狩りの界隈でだけ男女比が逆転を起こしてるんだ????

「まぁ、冷静に考えりゃわかるだろうが。……配信者とかと同じ理屈だよ。男より女の方が有利なんだわ。有名vtuberの男女比とかも似たような感じだろ?」

「まぁわからんでもないんですけど……マジで?」

「マジマジ。やっぱりどの界隈も美少女が強いんだわ。あ、あとこの界隈顔整ったやつしかいねぇだろ。なんでだと思う?」

「まぁ、《星》が顔がいい人間を選んでるからですよね?」

「そうそう。だから女が多いし、美男美女の割合も高い。二年位前までは素晴らしいことだと思ってたんだがな、いざね、男がオレくらいってなると、寂しいのよ。朝桐クンにはちょっと避けられってしっさぁ。ボッチなのよボッチ。オレってボッチなの。そこに現れた救世主が君ね!」

「お、おう……」

 テンション高いなこの人……。

 いや、別に苦手とかじゃないけど、シンプルに面食らう。

 他の星団のやつって、こんな明るいのかよ……。

「そういやキミ、名前は?」

月野初(つきのはじめ)です」

「おぉ! キミが月野か! あれだろ、一か月で《二ツ星》になった『スピードスター』」

「あぁ、巷じゃそう呼ばれてるらしいですね……」

 

 星はどうやら、《称号》と言う要素も好きらしく、何か、『星の関心を引くような人間』には、その人間に因んだ《称号》を付けるようだ。

 星座の《意志》を受信するらしい《星触者》様から伝達された僕の称号は、『スピードスター』。スピードスター・月野初である。ちょっとカッコいいんじゃないかと、ひそかに僕は思っていた。


「《称号》持ちの二つ星、しかもルーキーで男。最高だな」


 目の前の男、黒ぶち眼鏡をかけた、やけに冷徹な青い瞳が特徴的な男は三日月のように笑って、名乗る。


「オレは《猟犬》の虚木響介。こんなんでも《三ツ星》だ。これからよろしく、月野クン」


 そう言って、差し出された手を、僕は握った。

 

 ――虚木響介。


 僕が、『交流戦』で倒さなければいけない相手。

 そのファーストコンタクトだった。


 

 

虚木との初エンカウント。


『称号』は、実は持ってるだけでバフ効果があります。


スピードスターは経験値効率が上がったり、『敏捷』『器用』などの能力が上がり、全体的な作業効率や速度にまつわるステータス上昇がある。経験値ブーストってだけで人権やがな。


ちなみに習得条件は一か月以内に一つ星から二つ星に昇格すること。

(難易度:★★★★)

実はマジで難しい。月野くんは無意識にやっちゃってる。



猟犬は、追跡効果や手負いの敵に対する攻撃力が上がるよ! 怖い。


これは普通に『狩猟座』に属してある程度の実力を認められるだけで手に入る称号なので習得自体は簡単――と見せかけて、狩猟座が人を気に入ることがめったにないので、習得難易度は★★★くらい。


ここでも勝ってるぞ月野くん!

もしかして余裕でぶっ殺せるんじゃないか!?!?




ちなみに結姫乃ちゃんは愛の力で結構な無敵状態です。

ミヤを取り込んだ今なら三つ星相当の実力があります。強い。

(ポチは兵士を強化するために作られたんだぜ……星にもいろいろな事情がある)



ちなみにミヤは結姫乃の能力をラーニングして帰ってくるぞ。お前メタモンかよ。


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