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僕はスライムとラブラブなハーレム生活を送れるかもしれない。  作者: 最条真
二章

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21 世界を終わらせる程度の能力


「おかえりっ、月野っ!」

「だだいま」

 新人歓迎会という半ば強制的かつ気遣いであるが故に拒否が難しいイベントに、半ば・無理やり・参加させられ――解放されると、僕の足は一直線・光線の如きスピードで宇都宮の家へと向かっていた。

 心の奥底では、今日の一連全てが、クソどうでもいいし疲れる恒例行事だな、と校長の長話を聞き流す斜に構えた自分がいた。《四ツ星》を間近で見れたのはいい経験になったしケーキはおいしかったけれど、何かとかこつけて物事を発展させていく発展性だけは僕の中では不評。ケーキを食べ終えた時点で、正直僕は帰りたかった。



 ……まぁ帰らなかったわけだが。誰が悪いという話ではなく、これは単純に僕が恵まれすぎているのが悪い。

 僕には最愛の彼女が二人もいるわけで、仲間の交流やらなんやらよりもその時間で彼女たちを抱きしめていた方が有意義と言える。まぁ、僕は理性的な人間なわけで、職場の人間環境を悪化させるような選択をするわけがないのだが。僕ってば賢い。


 さて、模範や道徳や倫理を重視せざるを得ない他人の群れからはぐれおおせた僕は、ウルフカットの美少女――『宇都宮(うとみや)』を思いっきり抱きしめる。僕の胸に頭を抱き寄せると、そいつの耳が赤くなったのが見えた、可愛い。


「どっ、どうしたの、月野……? ボクを恥ずか死させるつもり……?」


 基礎の肉体スペックはまだこいつの方が上なので余裕で抵抗でできるはずが、全く抵抗の気配を感じない。とっくの昔に懐柔済みで、頭を撫でると猫のように喉を鳴らした。


 青みがかった黒髪。以前はただの黒髪だったのだが――『宇都宮』は、男の姿とは一線を画するように――ここ一か月で本格的に女性化が進んでいた。貧乳であることを我慢できなかったのか、いつの間にか胸には巨大な果実が二つ実っていたし、女性らしい曲線美や、太ももや尻にむっちり感が出るようになっていた。そして、本体・『有』との差別ポイントとして意識しているらしいのが、身長:151センチ。


 かなり小柄であるというのにも関わらず、女性らしさが存分に詰まった至高の肉体。こんなの愛おしすぎるので、僕はこいつが出迎えに来るたびに抱きしめることにしている。


 スン、と宇都宮が鼻を鳴らす。


「ん、すごい汗の匂い……」

「悪い、臭かったか?」

「ううん。ボクたちに早く会うために走ってくれたんでしょ? 月野の努力の勲章だよ、これは。全然臭くない。ふふ、もっとずーっと嗅いでいたいくらい……♡」


 彼女は上目遣いで僕を見上げると、妖艶にほほ笑んだ。


「でもこれ以上クンクンしてたらユウに怒られそ~」

「そんなにオレの心は狭くないっつーの」


 奥から、金髪の美少女・『有』が姿を現した。


「……ま、言い合いは後だろ。おかえり、月野」


 満面の笑みを浮かべる有に対しても、僕は、だたいまと言った。




 宇都宮/有は、それぞれ一個体として完全に単独で存在しており、独立した思考回路・意識・記憶を持っている。大本の種族や『僕』のことが大好きなのは共通しているが、それぞれ別個の存在として自我を確立していた。


「……そういえば、最近頻出している『お前を付け狙う命知らずども(異星体)』についてたが、オレの方である程度の調査と、見解をまとめ終えた」


 夜ご飯を食べ終わり、(『宇都宮』は有との相違点を作るために料理も頑張っているのだ、おいしい!)宇都宮が皿洗いを終え僕の膝の上に満面の笑みで座ったところで――有から話を切り出された。

 僕は宇都宮を抱き枕代わりにしながら、ベッドに腰掛ける有を、地べたから見上げた。


「それで、どうだった?」

「結論から言うと、福島の方から大量に逃げおおせた《異星体》がここにも流れ込んできたせいだ」

「……郡山のボスは、倒されたわけじゃないんだよな?」

「ああ、……だが、《三ツ星》相手に重傷を負わせられたらしい。ボスの威信にかけて《星狩り》どもを撤退させたらしいが――今回の件で、『郡山』の統治はだいぶ揺れた。福島の中枢都市を統べるボス、それも《四ツ星》が深手を負わせられたんだから、その庇護下にある《異星体》どもは心配になるよな」

「四ツ星が、三ツ星相手に?」


 僕が疑問を呈すると、極上の背もたれに頭を預けた宇都宮の上目遣いと目が合った。


「――それはよくある話だよ、月野。二ツ星と三ツ星の間に《絶対的な格差》はあるけれど、三ツ星と四ツ星の間にはそれがない。当然四つ星の方が基礎スペックは高いけれど、相性や戦術次第で勝利することは可能なんだ。君が結姫乃相手に勝利したときみたいにね♪」

「なるほどな……」

 

 僕はそこで有に視線を戻す。


「話を続けるぞ。今回の件で、郡山――ひいては福島全体から大量の《異星体》が氾濫した。近隣地域……北の宮城・仙台や西の新潟へ散った奴らもいるだろうが、一番多いのは南下ルートだ。県境を越えて栃木の県北――那須塩原あたりを抜けて、この宇都宮にも難民みたいに流れ込んできてるってわけだな」

「なぁ、難民だっていうなら、もう少しおとなしくしてるもんじゃないか? ここ数週間、僕を襲ってきたやつらは『好戦的』だったように思うんだが……」

「そりゃ、月野が《星狩り》として活動してるからだろ」

「ああ、なるほど――」

「そして《星狩り》の首を地域を統べるボスに上納して自分も庇護下に入れてもらおうと必死なのさ。ま、月野の首を持ってこられた日には、生まれたことを後悔するくらい痛めつけてから殺すけど」


 ダークサイドの片鱗が見える……。

 

「まぁでも、複雑っちゃ複雑なんだが……」


 有は後ろ手で頭を搔きながら続ける。


「ちょうどいいレベル帯の敵とやりあうことで、月野は成長してるもんな……?」

「その通りだ」


 計7回の戦闘――結姫乃ほどの死闘を繰り広げることはついになかったが、一戦を終えるたびに空の《星々》が歓声を上げ、僕に力を注いでくれているのが伝わった。



 異例の速度と、よく言われる。

 五回の戦闘を終えた時点で、僕は一ツ星から――《二ツ星》へのクラスアップを果たしていた。



「さすがに三週間で《二ツ星》って早いんだよな?」

「そこは、さすが『ボクたちの旦那様♡』って感じだよね♡」

「まぁ、星たちが虜になる理由もわかるよ。月野はカッコいいからな……」

「褒めても何も出ないぞ」

「ふふふ、今日もたくさん『出して』もらうけどね……♡」


 眼下の宇都宮は、サキュバスのような笑みを浮かべていた。それから、小鳥のように首筋に唇を落とすと、にへへ、と微笑む。


「今日も二人まとめてたくさん可愛がってくれるんでしょ?」


 よくこんな恥ずかしいことを満面の笑みで言うのが宇都宮って女だ。


 こいつは正式に生誕して一か月ということもあり、本来人間が持つ機微に疎く、罪悪感や倫理観・単純な羞恥心に至るまでも未発達なのだ。だからこんなに純粋な言葉を紡げる。実直で素直で大胆。『無垢』を体現したかのような少女が、宇都宮――愛しい最愛の彼女である。


「オレも可愛がられたいところなんだが……今後の月野の安全性と成長性を鑑みて、一つ、提案をさせてほしい」

 

 それから、有は言った。



「月野、『ママ』に会ってみないか?」






 

 深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている。

 異星体の瞳の奥には、その存在とゆかりのある存在が棲んでいることがある。

 空を眺めるまでもなく。


 ――地を歩く者の瞳に《星》は宿っている。


 さて、話は変わるが。

 星とは本質的に《闇》である。



 星は光り輝いているように見えるが、その本質は途方もない質量の塊だ。自ら光を放つ恒星(星)が輝く理由は、その中心部で絶え間なく発生している『核融合反応』。

 星を構成する巨大な質量の『重力』が、内側へ内側へと収縮しようとする力になり、星の中心部は想像を絶する超高温・超高圧の世界で――中でも特大の質量を持った星は、自らの重力で極限まで圧縮され、やがて光すらも逃がさない絶対的な暗黒――ブラックホールへと至る。


 普通の星は自身の終わりに爆発を起こしただ燃え尽きるだけ――だが、圧倒的で規格外の質量をもった特別な星だけが、そこに至る。


 質量を揶揄して、『巨星』と呼ばれている。

 終末を揶揄して、『深淵』と呼ばれている。


 

 彼らが自分の存在に宿しているのは、『世界の終わり』。

 


 ――五ツ星とは皆一様に、《世界を終わらせる程度の能力》を持つ化け物揃い。




「よく来ましたね、我が息子よ」



 有の瞳を通して訪れた不思議な世界。

 深淵に引きずり込まれた僕は、初めて『ママ』と対面する。








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