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僕はスライムとラブラブなハーレム生活を送れるかもしれない。  作者: 最条真
一章

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13/45

EX 虚木響介の仕事風景



 ――結論から言えば、宇都宮の推測は、完全に当たっていた。


《特待生》は、《星狩り》の集団だ。それも、高度に訓練され、組織に属している――本物の星狩り。

 そして、現場に出向いた九名の特待生は適切にチーム分けされ、ボスが不在の福島にいる《異星体》を、奇襲で、蹂躙する手はずだった。それは、人間の尊厳を取り戻すための戦いである。

 決して《異星》の侵略行為を認めるわけにはいかない。当然の防衛反応だ。ボスが不在の福島――その地域の《異星体》の殲滅を、このメンバーなら行えると上層部が判断したので、あてがわれている。そもそも、福島は郡山に住むボスのワンマンチームだ。楽に奪還できる可能性があるならここ、と事前に目星をつけられていた。そして、隙が少しでも生まれるようなら――すべてを終わらせに行く。今日が、その日だった。



「じゃ、響介。アンタ一人ね。アンタならどうせ一人で余裕でしょ」


 

 ――指揮を担当する人間にそう言われて、響介は泣く泣くそれに従った。





「なぁ、俺ぼっちなんだぜ? 可哀そうだと思わねぇ?」


 

 オレンジ色の髪にパーカー。明らかに軽薄そうな顔立ちの男が立っている。顔は整っているのだが、一目見て詐欺をしていそうだと思わせられる、そんなうさん臭さが漂っている。

 黒縁眼鏡をかけているものの、実はそれは伊達で、気分だからと付けている適当さ。

 

 ――適当、軽薄、冷酷、その三拍子。


 虚木響介(うつろぎきょうすけ)は死骸に向かって話しかける。こんなのは独り言だ。分かっている。だが答えてくれないかと期待していた。結果は無言。つまらないものだった。

 

 虚木響介(うつろぎきょうすけ)は、今しがた殺したばかりの《二ツ星》が消滅する様子を見て、嘆息する。今しがた火を放ったばかりの相棒・シルバーバレットは未だに銀色の硝煙を上げている。不意打ちの二発で沈むなんて、楽な仕事だった。《異星体》は、基本的に保有する星の数に応じて、銀の弾丸を耐えられるが変わってくる。 


 一ツ星なら一発、二ツ星なら二発……という具合に。根性がある奴は少し耐えてくるが、どちらにせよ致命傷であることには変わりない。

 シルバーバレットとは《異星体》に対する特効薬である。


 さて、ここで紛らわしい話なのだが、シルバーバレットとは銃の名称で、銀の弾丸がシルバーバレットから放たれる弾丸の総称だ。

 本来なら、銀の弾丸をシルバーバレットとして、銃の名称を変えるべきなのだが、もう決まってしまったものは仕方がない。今手に握っているこれはシルバーバレットで、放たれた凶弾は銀の弾丸だ。そう定義されているので、虚木はもう、これ以上この件について議論するつもりはない。

 虚木が問題にしているのは、一人で仕事をしているという部分だった。女の子とキャッキャしながら《異星体》を狩り殺す仕事がしたかったのだ。


 だって虚木は高校三年生。高校生だ、高校三年生とはいえ、青春を謳歌してしかるべき人間なのである。なのに、何故ぼっち。why? 世に問いかけてやろうか。何故俺は一人なのか、と。


 いや、虚木だって本当は分かっている。自分はチームを組む必要性がない、ということくらい。


 宇都宮星団高校《特待生》の枠で、唯一の三ツ星。そう、三ツ星……一ツ星や二ツ星の連中とは、訳が違うのである。二ツ星と三ツ星の間には、明確な隔たりがある。《上位者の壁》とでも呼称するべきものだろうか。


 二ツ星シェフと三ツ星シェフの店が並んでいるとして、どちらに入店するだろうか。それはもちろん、後者だろう。前者より質が担保されているわけだし、そもそも見栄えが違う。二つ星があるより、三つの星がある方が、調和がとれている。調和。そう、調和だ。二ツ星が三ツ星に昇格した際に得られる報酬。


 一つの星座の完成・大三角の形成。それは不思議なことに――本当に理論はないのだが、所有者に多大な力を与える。やはり《星》たちが、心地いいと感じるのだろうか――と、虚木は路地裏から夜空に想いを馳せる。星は輝いていた。まるで自分に力を与えるように、『頑張れ』と激励を送るように。


「分かってるよ、姉さん」


 そう言うと、返事をするようにまた星が一層輝いた。扱いやすい姉だ。いや、これは自分の掌で転がしている、という意味ではなく、虚木にとっての好感である。感情が豊かな人間が大好きだ。分かりやすい人間が大好きだ。嘘を吐かない人間が大好きだ。


 それは、虚ろな自分にないものだった。

 虚木は感情は豊かな方ではない。淡々と物事を処理してしまうタイプ。虚木は分かりづらい人間だ。何を考えているのか、何が好きなのか、自分の中ですら曖昧なのだから、他者に伝えられるわけもない。そして虚木は――



「姉さん、大好きだよ」



 ――よく嘘を吐く。


 星がまたより一層輝く。『わたしも!』と主張するようでもあった。今虚木が行ったのは、欺瞞だ。別に、自分の《後見星》について、好き以上の感情を抱いたことはない。大好きなんてことは、ない。虚木はただ、『好き』と言うべきだった。なぜ好きの前に大をつけたのだろうか。それは《星の寵愛》を最大限まで引き出すためだ。星々は、気に入った人間に加護を授ける。


 有名な配信者を想像してみてほしい。奴らはこぞって、星に愛されたかのような幸運に恵まれる。それが、星の加護だ。星とは、一定の人間を贔屓にし、幸運を授ける。

 そう、星とは身勝手なものなのだ。平等に人類を愛することはなく、ただ個人を愛する。だが、世の中にはただ幸運を授けるのに飽き足らず《星の寵愛》を授けようと動く物好きもいる。

 それは、自身の身銭を切るような行為だ。有名な動画配信サイトに例えよう。加護とは高評価で、寵愛とはスーパーチャットである。自分の生活の一部を、他者に授ける行為。それが、《星の寵愛》なのである。そして、星に気に入られない限り《星狩り》という仕事は全うできない。なので、自分のパトロンにはある程度は媚びへつらう必要がある。嫌な話だ。まぁ、《後見星》との相性が合わないというのなら、また別の星を探しに行けばいいだけの話で、虚木は、今の《後見星》に好感を持っている。だから関係は持続しているのだった。



「姉さん、次」


 そして星の導きに従い、虚木は《異星体》を発見。相手が三ツ星ということで少々危ない場面があったが、今、虚木に憑いている《後見星》は、本気で自分のことを愛してくれている。

 だから――



「――《星戦》を宣言する」



 

《星戦》という切り札を、気軽に使わせてくれるのであった。三ツ星以上なら、習得していて当然の技術。星から本気の力を授かるための結界――バトルフィールドの構築技術だ。その中では潜在能力が120%引き出されるだけではなく、結界の崩壊と引き換えに、一度きりの必殺技を使用することが出来る。


「《超新星》」


 別名:スーパーノヴァ。星の力を全て爆発させた全力の一撃を放つことから付けられた名称である。《超新星》自体に、直接命名をする者もいるらしい。

《ジャッジメント・レイ》とか、《滅びの歌》とか。別に、虚木はそれを揶揄するつもりはない。というか、星がそれを好むのであれば、そうするべきだとも思う。《星狩り》において必要なスキルは、星の機嫌を取ることだ。星を魅了したものが強くなる、というのは《星狩り》の中での常識である。

 そして戦いとは、ある意味で星との共同作業だ。無意味な戦闘はない。戦うたびに『自分の力を使ってくれている!』と星は高揚し、更に深い寵愛を与えてくれる。要は、ゲームで言う経験値の概念があるのだ。レベルアップに近い概念もある。この世界には、ゲームのような側面がある。


 ――まぁ、星たちがこの地球を《企画》したのだし、それは当然なのだけど。


 さて、一度きりの切り札《超新星》の話だった。《星戦》時のみに使用可能な、一度きりの必殺技。虚木は、それに、名前を付けることはない。超新星は超新星である。そもそも、超新星という単語自体がカッコいいし。意外と、超新星を超新星の名前のまま使っている人は業界にもいる。……少数派であることは否めないが。


 でも星たちには不評。

 だって、星たちにとって、これはどうせゲームなのだし、カッコいい叫びが聞きたいものなのだ。


「なぁ、お前はどう思う?」


 倒れ伏した《異星体》に聞いてみた。一応、人型だ。人に擬態しているタイプのやつだ。こういうの多いよなぁ、そう思いつつ、虚木は銃を構えた。


「俺の《超新星》どうだった? お前が一撃でそうなるわけだし、破壊力には自信があるんだけどネーミングがさぁ。なんかアイデアあったら欲しいんだけども」

「ぉ、o、お、おまえ、ら、は……」

「ん?」

「si、ら、ない、のか。われわれに、は、派閥がある」

「あー。《侵略》か《共生》かだろ? 知ってるよそんなの、常識だろ?」

「wa、wa、ぁ、t、あし、は、きょ、Uせぇ、い、だ……」

「うん。――で?」


 虚木は冷酷に笑った。


「お前を《星座》に迎え入れたところで、こっちに何のメリットがあんの? しかもお前、《母体》だろ? 姉さんが教えてくれた。……あのさぁ、母体のくせにそんなに弱いってさぁ、なんなの?」

「a、あ、a、A、あ、ぁ、ぁああァ、あぁ」

「《母体》って、種の代表だよな? ならさぁ、他の《異星体》に比べて、圧倒的に強くないとダメだろ。お前の強さは、アレだよ。今まで戦ってきた中で十番目くらい。弱いわけじゃないけどさ……俺も《星戦》使ったし。で、俺の《超新星》を食らってこの有り様、と。なぁ、お前ごときを《星座》に迎え入れたところで、何のメリットがあるわけ?」


 虚木は屈みこみ、その《異星体》の額に銃口を向けた。


「遺言は?」

「お、ma、え、に、ひと、の、ko、ころ、は……」

「欲しいよ」


 虚木は笑って、引き金を引いた。

 パン!

 それだけで、死んだ。

 引き金を引いたのだから当たり前なのだけど、それだけで生物を殺せる。

 これで今日は十一体目か。何の感慨もなく、虚木は二進数で指を折ってそれを確認した。

 親指と人差し指と、薬指を折ればいい。1・2・8。これで11。


 さすが、ワンマンチームを任されることだけあって、我ながら強い。

 一ツ星8、二ツ星2,三ツ星1の割合であるわけだが、なかなか仕事をしているのではないだろうか。


 三ツ星の中でも、やはり上位と下位の概念がある。

 その中でも、虚木は三ツ星上位だ、間違いない。


 俺は強い。その上で、だ。



「……つまらない」



 強さゆえの孤独、ではない。強いから孤独なのではない。違う。虚木が求めていたもの、それは青春なのだ。青臭く泥臭く、それでいて燃えるような――青春。しかし、なんだ、この、銀の硝煙にまみれた青春は。



「――普通に後輩を可愛がりたい!!」



 耐えきれず、叫び始めた。


「先輩に甘えたい! できれば巨乳でおっとりめの可愛い子!!」

 

 叫ぶ。


「そういうのでいい! いったん、そういうのでいい!!」


 叫び、叫び、叫び、疲れた。

 むしろあの激戦より叫んだ。

 感情の起伏に乏しいからこそ、憧れているのだ。ありあとあらゆる青春行為に。今思ったが、自分は感情に乏しいのだろうか? もしかしたらとんでもない激情を内に抱えているのではないか? ふとそう思った。とりあえず、いったん戦いから身を離れて、普通の高校生らしく振舞い、自分が何なのか、ということを勉強したい。


 しかし虚木は高校三年生。普通の高校三年生は勉強に駆られるのだろうが……。

 だが、今後の進路のことを思えば、勉強をする必要性もない。


 どうせこのまま《星狩り》になるのだ。

 だとしたら、もうこのタイミングでしか青春がないじゃないか!


「――とりあえず、いったん仕事終わらせるかぁ……」


 周囲に散らばった薬莢を拾いながら、虚木は一人でそうこぼす。


 


 純然なる《星座》に比べたら、《異星》は完全なる敵だ。我々の宇宙という秩序を乱す、異邦人だ。だから殺すのである。それが、《星狩り》。彼らの仕事風景、その一端であった。

 

 彼らは特待生。――特別対戦生徒。



 ――そもそも《特別自習室》は、彼らの待機場所として用意されたものだった。















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― 新着の感想 ―
主人公強化来るかと思ったけど星の寵愛とかスパチャと考えると宇都宮が星に嫉妬しそう… 概要見て同居する粘液って成年漫画思い出したわ 続きに期待!
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