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第11話 食べられない男と食べてしまう女達

 昼休み。学園では昼食をとる方法はいくつかある。一つは食堂。食堂もバラエティ豊かな料理が食べられるいわゆる学食タイプの食堂とカフェテリアのような軽食メインの食堂。もしくは、購買部やコンビニで買ってきたり家からお弁当を持ってきて教室や学園内の思い思いの場所で食べる生徒達がいて、割合としては食堂を利用する生徒の方が多い。


 理由は単純に、親が母親だけの家庭が多い為に作る時間がないことが一番、料理の腕を磨いても食べさせる相手がいるかどうかが分からない為に作る気が起きないというのが二番になっていた。


「そ、それで、厳島君は、食堂? お弁当?」

「あ、弁当があるから、教室で食べようかと」


 一刀がそう発言した瞬間、女子生徒が教室を飛び出して行く。その勢いに圧倒される一刀。

 だが、その理由を推測し再び落ち込んでしまう。


(うわあ、俺が教室で食べるって言ったからみんな逃げるように出て行ってしまったんかなあ!?)


 肩を落とす一刀。だが、それがまた勘違いであり、何故女子が飛び出して行ったかを環奈たちは理解していた。


(あの子達、ダッシュで購買に行ったわね……)


 本来、男子生徒は教室で食事をすることはない。


 教室で食事をすれば動物園の動物が如くお食事ショーと化してしまう。なので、大体の男子は学園側が用意した男子と守護女子のみが入れるエリアでの食事が普通。


 だから一刀が普通でないことを知る前の2年9組女子たちはまさか男子が教室で食事を始めるとは思っておらず、女だけで寂しく食堂で慰め合いながら食べるものだと思っていた。だが、一刀の発言により状況は一変。


 2年9組女子は一斉に飛び出して行った。教室に戻ってくるために。


 その日の昼休みの様子を購買のおばちゃんは後に語った。


 『津波がやってきたかと思った』と。


 早歩きで購買部に迫る2年9組の女子達はとても迫力があり、もう二度としないで欲しいと藤崎が注意を受ける羽目になったことを後に一刀も知ることになる。


「まー、あの子らはほっといて、厳島が教室で食べるんならこのままでいいよね」


「あ、みんなは大丈夫? 俺、何も伝えてなかったけど」


「ああ、大丈夫。守護女子は基本的にお弁当を用意してきているから」



 そう言いながら環奈も杏理も玖須美もお弁当をバッグから取り出す。


 基本的に守護女子は学校の時間は男子を守るようになっている為、学園側から持参するように言われている上に、昼食代が給与に含まれていると説明を受ける一刀。加えて、一刀を護る守護女子達はそれぞれの理由で弁当なのだと環奈が付け加える。


「私は、修行の一環というか、家が厳しくてなんでも出来るようになりなさいって作るのが普通になってるの」


 そういう環奈のお弁当は、焼き魚と卵焼きとほうれん草のお浸しなど非常に家庭的な料理が可愛らしい桜色のお弁当箱に詰められている。


「アタシんトコは妹が多くてね、お昼は母さんとアタシでばーっと作ってばーっと詰め込んでるから……だから、あんま見ないで……」


 照れながら取り出した杏理の弁当は100均で買ったシンプルなお弁当箱に、ウィンナーと野菜炒めとお米という中身もシンプルなもの。


「わたくしは……神原さんとはまた違う修行というか花嫁修業として料理は作るようにと」


 少し言い淀みながら玖須美は高級そうなお弁当箱に彩り豊かな料理が綺麗に並べられており見たこともない料理たちに一刀は思わずあとずさった。


「す、すごい……みんな」


「い、いやいや、そんな大したことないよ。そ、それより、厳島君のお弁当はご家族の方が」


「あ、うん……お、俺も自分で作ろうとしたんだけどね。転校初日で居眠りとかしたらいけないからゆっくり寝ていくようにって従姉妹たちに言われて準備してくれたのが……」



 一刀が赤面しながら取り出したお弁当箱は機能性抜群の弁当箱で、大切に育てられた男子たちらしいお弁当箱。

 本来であれば、村のおばあちゃんたちに料理も教えられていて料理の腕もアピールするつもりだった一刀だったので、家族に作ってもらったのが恥ずかしくて仕方がなかった。それを誤魔化すように急いで開けたお弁当の中身は、


L O V E


 と大きく書かれたお米の横に、アスパラのベーコン巻や豚の生姜焼き等栄養面に配慮されたおかずが、だが、そのおかずにも細かな技術で『LOVE』や『だいすき』の文字が。


(お、お、おいぃいいいいいいいいいいいいい! 魔凛ねえちゃん、魔愛ちゃん、どういうつもりぃいい! いたずらにしても度がすぎとるよぉおおお!)


 心の中でお弁当を作ると言っていた悪戯好きの従姉妹たちの顔を思い浮かべクレームを入れる一刀。

 そして、明らかに変わる守護女子達の空気。


(ひ、ひかれてる!?)


「一刀くん」


「はい!?」



 ひどく静かな声色のせいで急な一刀呼びに気付かないまま一刀が返事をすると、環奈が、いや、環奈だけでなく、他の二人も微笑みながら一刀を見つめていた。


「ちょおっと惚れ薬とかを盛られていないか調べてもいいかなあ?」


「血とか混ぜ込んでる可能性もあるかもね」


「お弁当箱に催眠魔法が仕掛けられていないかチェックさせていただきますね」


「いやいやいやいやいや!」



 そして、一刀のお弁当の半分は我を失った守護女子達に食べられ、慌てて戻ってきた2年9組の女子達は、土下座する環奈たちを見て何事かと目を丸くした。


お読みくださりありがとうございます。

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