スノードラゴン!?
「グルル・・・」
一切の隙のない構えを取るバルドとアカネを見たドラゴンもまた構えをとる。
両者の間合いは、たとえ達人であっても立ち入ることは不可能なほどにひりついている。
それにしても本当にあいつはレッサースノードラゴンなのか?
明らかに前回会ったレッサーポイズンドラゴンと比べると雰囲気も強さも桁違いなんだが。
違和感を感じた俺はそのボスの説明を確認する。
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モンスター名:スノードラゴン
特殊ボス
HP:4995/5000
説明:龍種の中でも強い分類に入るドラゴン。その強さは下等種のレッサースノードラゴンと比べると桁違いであり、一頭でも現れれば大陸で協力して討伐に向かう。が、今まで勇者以外で討伐に成功した事例は一度もない。その素材は国宝レベルであり、現在でも過去に勇者によって討伐された素材は大国の王室に飾られている。
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は?
化け物だろ。
HP5000ってなんだよ。今の俺よりは若干少ないが、全体的なステータスを見れば明らかに俺よりも数値が高い。
今まで誰もこの説明を見なかったのか?攻略隊の奴ら全員ズボラと言うには酷すぎるだろ。
おそらく俺だけがレッサードラゴンに出会ったことがあるから違和感に気づけたが、もしそうじゃなかったらこいつらは気づいていたのか?
こんなの勝てるわけないだろ。
こんなのをフィールドボスに置くなよ。運営はバカなのか?
それともこれくらい余裕で倒せるくらいにこのゲームをインフレさせるつもりなのか?
とはいえ、見た感じ今のバルド達では勝てそうにない。
そこでバルド達にその情報を伝えようと口を開けるが、どうせここで伝えてもどうにもならないのでそっと口を閉じる。
頼むから勝ってくれ。
俺はその高次元の戦闘に入れないため、そう願いながらこの戦いを待つことしかできない。
「ふー」
その沈黙を最初に破ったのはバルド。
一息ついたかと思うと、次の瞬間にはドラゴンの目の前に移動する。
「【紫電一閃】」
そしてそのまま一気に踏み込んで上昇し、紫色に光輝く剣を持ち、ドラゴンの首に向かって振り上げる。
「【魔力上昇】【属性付与:炎】」
そしてその攻撃に合わせてアカネがバルドの剣に炎属性を付与する。
途端、バルドの剣は紫の稲妻を散らしながら、真っ赤に燃え盛る剣に早変わりする。
男子が見れば誰もが興奮しそうな見た目をした剣を持ったバルドは、目に見えない速度で剣を振り上げる。
「グガア!?」
いきなりの超加速に反応が遅れたドラゴンはその攻撃を避けることは出来なかった。
バチバチィッ!
インパクトの瞬間、ドラゴンの首元に紫色の高電圧の雷光が発生する。
「う、おおおお!!」
バルドの剣は確かにドラゴンに命中した。
が、それだけの速度を持って属性付与まで与えてもなお、ドラゴンの首を切断することは叶わなかった。食い込みはしたものの、その切り傷の深みは20cmほど。
当然、頚椎はおろか、頸動脈にすら斬撃は届いていない。
【紫電一閃】の二次効果で命中時ドラゴンの体に50cmほどの雷紋を与えたが、結局はその程度。
そのどれもが致命傷には至らない。
「グガアアア!」
自身の体に傷を与えられ、さらには肉が焼ける感覚まで味わったドラゴンは対象を『餌』ではなく『敵』として認識を改めた。
さらに先ほど攻撃を与えた敵であるバルドを近くに居させまいとドラゴンは全力の咆哮を放つ。
「ぐあっ!」
アカネとジンに関しては遠くにいたため、ギリギリ難を逃れたがそれでも耳が一定時間聞こえなくなるほど。
当然、音の発生源であるドラゴンの真下にいたバルドはそれ以上のダメージを受ける。
ドラゴンの放つ衝撃波によってバルドは闘技場の壁に叩きつけられ、さらにはあまりにも大きな音圧によって耳も聞こえなくなる。
「くっそ!」
すぐに戦線に復帰しようと立ちあがろうとするバルドだったが、平衡感覚も狂っているためかすぐに立ち上がることが出来ない。
「グルア!」
ドラゴンのヘイトは今だにバルドに向いたまま。
バルドがすぐに復帰できないのを理解したドラゴンは確実に仕留めるべく、最高威力の火力をもつブレスの溜めに入る。
「【ファイアーランス】!」
そんなことはさせじとアカネが魔法を放つが、中級魔法程度ではドラゴンの厚い鱗と皮を超えることは出来ない。
普通の魔物にとっては脅威かもしれないが、高い耐性を持つドラゴンにとっては誤差の範囲。
その程度ではヘイトを変えることは出来ない。
「ああ!くそっ!」
それを瞬時に理解したアカネは悪態をつきながら、ドラゴンに向かって走り始める。
「グルル・・・」
が、彼女は魔法職。バルドのように素早さに特化したような役職でも、忍者のように瞬間移動できるわけでもない。
彼女の大技の有効射程範囲である5m以内に入る前に、ドラゴンのブレスの溜まる時間が早い。
「っ!俺に構うな!」
それを理解したバルドは、聞こえない耳の中必死に声を上げてアカネに逃げろと伝える。
「だがっ!」
なんとなくそのことをわかっていたアカネは顔を絶望に染める。
「【挑発】」
そんな絶望的な状況の中、あるスキルを起動する声が闘技場に響き渡る。
後書き
ジン、ついに役割を果たせるのか・・・?




