ビッグ・ホワイト・ベア
あの後、特に危なげもなく攻略を進め3時間ほどでフィールドボスがいるところについた。
「よし、着いたぞ」
「うっす。ありがとう」
なお、俺の足が遅すぎるため、今も俺はバルドの背中に担がれている。
「そしてあれが中ボスだな」
バルドの背中から下りた時、アカネがボスの扉の前を指差す。
「グルル・・・」
なるほど、確かに強そうだ。
見た目は動物園などにいるシロクマそのものなのだが、とにかく大きい。
最初の草原にいた門番であるビッグベアーもそこそこに大きかったが、あれはまだ現実的な大きさだった。
が、こいつは違う。
立ち上がれば10mは越えそうな体。刀とも思えるほどの長さと鋭さを持った爪。さらには噛まれれば普通に体を貫通しそうなほどに長い牙。
まさに全身凶器。単純にフィジカルだけの勝負だったら人間に勝ち目はないだろう。
やはり、デカいは強いなのだ。体が大きいだけで大抵のことは解決する。
「あいつは正直言ってそんなに強くないからさっさと片付けるぞ」
「おう!」
とはいえ、あのクマの前にいる人間は大抵のことに含まれない。
「あ、ちょっと待ってくれ。説明を見てもいいか?」
「ん?別にいいが、何に使うんだ?魔物図鑑でも作るのか?」
「いや、普通にどれくらいの強さなのかと説明が気になるだけだ。図鑑を作ることに興味はない」
「まあいいだろ。ジン、見終わったら言ってくれ。倒すから」
バルドが自信に満ち溢れた顔でそう言う。
何それカッケー。なんでこう言う時に恥ずかしいことをこうもさらっと言えるのだろうか。
俺もこんなことを言おうとすることは何度かあったものの、毎回口ごもってしまうんだよな。
「はっはっは!私たちが弱い時でも倒せたから、今回は余裕だろうな!」
アカネもそんなことを言う。
大丈夫なのだろうか。フラグがビンビンに立っている気がするのだが。
ま、まあとりあえず確認するか。アカネが今にも戦いたくてウズウズしてるしな。
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モンスター名:ビッグ・ホワイト・ベア
HP:1500/1500
説明:雪山に生息する魔物の一種。基本的には生態系の頂点に立っていることが多いが、雪山には強い魔物が定期的に立ち寄るため、細々と暮らしている個体もいる。基本的には1匹で過ごし、繁殖期になると群れで過ごす。繁殖期に近づくと、執念深く攻撃してくるため注意が必要。
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ふむ、普通に強いな。
名前が相変わらず単調なのはもう見飽きたので何も言うまい。
・・・単語と単語の間の『・』が腹立つな。なんかいい感じにしようとしてる姑息な感じがする。
そして、その名前のセンスとは打って変わって設定はやけに凝られているんだよな。
今までの魔物もそうだったのだが、名前と説明の凝り方が違いすぎる。
やはり運営は二極化しているのだろうか。
それにしても魔物の名前と設定で別々の部署を振り分けるだろうか。
この運営のことだからやらなくもなさそうだが、普通にネーミングセンスがないだけの可能性が高そうだ。
もしそうなら申し訳ない。真面目ちゃん、応援しているからな。『うえぇぇい!』してる奴らは全然やってしまっていいからな。
と、俺がいるのかもわからない運営の良心を応援しバルド達に確認が終わったことを伝える。
「よし、終わったか。それじゃあやるぞアカネ」
見た感じ不安要素はなさそうなので、今回も俺が戦いに参加することはないだろう。
さっきのフラグに俺の【フラグ建築士】が反応しなければいいのだが・・・。
「【多重詠唱】【ファイアーボール】」
待ってましたとばかりに詠唱をスタンバしていたアカネが30個弱のファイアーボールを生み出す。
うーん、相変わらずおかしいな。トッププレイヤーは本当に理不尽なやつばかりだ。
「グルア!?」
そしてその魔力の波動を感じてようやく俺たちに気づいた巨大シロクマはすぐにその場を離れる。
流石に魔法攻撃を受け切れるほどその皮は分厚くないのか。それともびっくりして避けただけなのか。
どちらにせよ、こっちのペースになったことに変わりはない。
「【ファイアーランス】」
すかさずアカネは避けた方向に火の槍を打ち込む。
ファイアーボールは数打てる分、発射から着弾までの時間がかかるのが問題なのだが、この火の槍は相当な速度で動くためファイアーボールに慣れた敵を不意打ちで倒すのに使えるらしい。
要するにメリハリのある攻撃ができる、ということらしい。
とはいえ、今回は牽制的な使い方だろう。
結局その火の槍も無理やり加速した巨大シロクマに避けられる。
だが、
「残念、本命はそっちじゃない」
その無理やりの回避で若干体勢を崩した巨大シロクマに容赦なくバルドの剣が振り下ろされる。
さすがだな。俺も分からないうちに完璧な位置で待機していたのだから、そのスピードと技術力は素晴らしいと言わざるを得ない。
「グルアァ!」
だが、腐っても中ボス。
バルドの剣を横に飛んで致命傷を避けると、すぐに距離を飛んで血を流しながらもバルドと向き合う。
「そんなに俺ばかり見ていて大丈夫か?」
怒りに目を染めている巨大シロクマの前でバルドは不敵に微笑む。
なんであいつは普段はツンデレなのに戦闘になるとこんなにかっこよくなるんだ?ずるくね?
うーん、これでバルドの見た目がショタっ子だったらすごいいい感じのキャラだったんだろうなぁ。
ギャップ萌えもあるだろうし。勿体無い。
「【灼熱の渦】」
そんなバルドがショタならよかったのにと、腐人のようなことを思っていると、巨大シロクマの後ろにいつの間にか回り込んだアカネが魔法を放つ。
それと同時に、業火の渦が巨大シロクマを中心に発生する。
「グガアァァ!」
そして、巨大シロクマは断末魔をあげて、一瞬で炭になってしまった。
え?理不尽すぎね?
「ふぅ、こんなものか。ボス前の準備運動にぴったりだったな」
「そうだな、正直この程度じゃ満足できないな」
「えぇ・・・?」
俺は若干困惑こそするものの、まあこんなもんかと諦め次のボス戦こそは出番があればいいなと思いながら、アカネがMPを回復するのを待つのであった。
後書き
最近主人公の出番がない。バルドやらアルベリオンやらが活躍しすぎている。
主人公乗っ取りか・・・?
ジン「嫌だが?」




