雪山攻略
魔物研究員の男性にハウスセンチビートルの足を渡したら興奮し始めてしまった。
「えぇ・・・」
ルナさんも彼も第一印象はまともだったのに。
「え?ジンくんじゃない?素材見せて!」
「まじで!?新しい研究材料きちゃー!」
「なんでもいいから素材を見せてくれー!」
そしてそれを皮切りに研究室にいた人たちが全て俺を見て、俺に新素材をせびってくる。
「ちょ、ちょっと待ってください。1人ずつ順番に」
「「「えー!」」」
俺がちょっと待てと言うと、皆が皆ヤダヤダみたいな感じで駄々をこねる。良い大人がそんな子供みたいな。
「良い大人が、そんな子供みたいな・・・」
「っ!なかなか痛いところを突いてくるじゃないか。だが、研究のためなら私たちはプライドを捨てる!」
研究者の1人が代表してそんな決意を叫ぶ。そしてそれに合わせて周りの研究者もうんうんと頷く。
「えぇ・・・」
ここは変人しかいないのか。ミルさんがまだまともに見えるぞ。
「だから素材をくれ!渡さないなら、ジンくんを実験動物にするぞ!」
ひえっ、目が据わってやがる。
「ちょっ、待ってくれ。素材渡すから。頼むから、俺を担いで、その台に持っていかないでくれ」
俺はアイテムボックスから、最低限の素材を残して残りを全部放出する。
「うおー!ありがとうジンくん!」
「ありがとうねー!この恩は必ず返すから」
「やったー!」
俺を掴んでいた研究者たちはその素材たちを目をギラギラさせながら回収していく。
「よし、じゃあ俺はこれで失礼します」
それを確認した俺はそそくさと研究室を去る。
最後にちらりと見えたルナさんは今なお魔水晶を前にぶつぶつ呟いていた。
ここの人たち、怖い。
研究者の執念を見た気がする。
「あれ?素材はもう渡し終わったんすか?」
「あ、あぁ。酷い目にあった」
シーフはなんとなく分かっていたのか、若干哀れみの目を向けながら話しかけてくれる。
「まあ、ここの研究者の人たち実力は本物なんですけど、皆やる気に満ち溢れすぎてるんすよね」
「そうだな、もうあそこには近寄りたくない」
「っすね。僕もなるべく立ち寄らないようにしてるっす」
それならそうと先に言ってくれればよかったのに。
俺は若干シーフに不満を持ちながらも、なんとか実験動物になることを避けたことに対する安心感を覚える。
「はぁ、とりあえずバルドたちがログインするのを待つか」
バルドたちがログインするまでは暇なので、シーフとトランプをして待つことにした。
◇◇◇◇◇
「うわー、負けた!」
「危なかったっす。あれは運が良かったすね」
「よいしょ、ただいま」
俺がちょうどシーフに負けたタイミングでバルドがインする。
「ただいまー!疲れは回復したぞ!」
そして、それと同時にやたらとハイテンションなアカネがも入ってくる。
あれ?やっぱりあの2人って出来てるんじゃない?
出来てなかったにしても同時にログインするのってもはや運命なのでは?
「おぉ、ジン!もうログインしてたか。早いな!」
俺がアカネとバルド出来てる疑惑を本気で信じ始めた時、アカネが俺の背中を叩く。
「だから、その背中を叩くのをやめてくれって何回言ったらわかるんだ?」
「はっはっは!すまないな。癖になってしまってるんだ」
そんな反省とは到底思えない謝罪を聞いていると、バルドも話しかけてくる。
「雪山攻略行くか?さっきは酷かったけど、今度こそやるぞ」
「あ、あぁ。行くか」
俺のLUCKが原因でモンスターの出が悪かった気がしている俺は若干気まずさを感じながら、バルドとアカネと雪山を攻略しに行く。
「なんか久しぶりの感じするな。まさかイエテイにじんが吹っ飛ばされるなんて思いもしなかったわ!」
「それはそう。吹き飛びはするだろうとは思ったが、あそこまで吹き飛ぶとは思わなかった」
「やっぱそんな貧弱な体つきだからじゃないか?ジンもっと筋肉つけよう!」
「やめてくれ。俺はそんな熱血系になるつもりはないんだ。平均くらいあれば十分だろ」
「む?そうか?」
くそう、高身長の奴らによってたかっていじめられてるみたいじゃないか。
確かに俺の身長は平均よりちょい下くらいではあるのだが、周りの奴らの背が高すぎるせいでどうしても低く見えてしまう。
欲を言えば、もっと身長は欲しかったがもう成長期も終わり始めているので、これは諦めだ。
「はぁ、もうあんなことはないようにしてくれよ。一応チームメンバーなんだから」
「分かった。イエテイと戦う時は気をつける」
「はっはっは!ああ見えてバルドが一番心配していたのだぞ。ジンが吹っ飛んだ後めちゃくちゃあわあわしてたんだ」
「まじかバルド。心配をかけてしまってすまないな」
「おい、やめろ。俺のキャラが崩壊するだろ」
アカネがまさかの情報を付け加えたので、俺は内心ニヤニヤしているとバルドは顔を赤らめてそっぽを向く。
うーん、なんでバルドの方がツンデレキャラなのだろうか。普通はアカネの方がツンデレで、バルドが元気もりもりタイプのはずなんだがな。
絶妙に噛み合っていない。
正直、可愛い系の男のツンデレならまだ分かるのだが、筋肉ムキムキの男がツンデレ系なのは辛いよバルド。
まあ、見る分には面白いからいいが。これであっち系の趣味だったら、かなり大変だった。
「あ、おい。敵だぞ」
と、バルドがそっぽをむいた方向に敵がいたようで俺を含めて3人ともが臨戦体制に入る。
「今回は協力して倒すか」
「よし!行くぞ!」




