洞窟のボス2
「ジン様は放っておいて、続きをしましょうか」
「あぁ、そうだな」
ちょっ、マジで助けて。
俺が巨大ゴーレムの放った竜巻に巻き込まれたまま、アルベリオン達は助けようともせずまた戦い始める。
仮にも俺のほうがご主人様のはずなんだがな?
普通は最優先で助けるべきだと思うんだが。
「ジン様はどうせその程度じゃ死なないですよ」
三半規管が崩壊の危機を迎えつつある時、アルベリオンがそう呟く。
うっ、吐きそう。
確かに俺はこの程度の攻撃では死なないだろう。
でも三半規管のことを考えろよ!AIどもが!
くそっ、ただでさえアルベリオンの荒い運転のせいでよっていたというのに追い討ちをかけてきやがって。
許さん。
あとで覚えていろよアルベリオン。
>>アルベリオン視点
私はアルベリオン。ジン様によって作り出されたゴーレム。
私の生みの親とも取れるジン様は、今非常に情けない姿を曝け出しています。
巨大ゴーレムの放った竜巻の一つに巻き込まれて、ぐるぐると回っています。
ふふっ、面白いですね。
スクリーンショットを撮ってあとでジン様に見せつけてあげましょう。
怒られるでしょうか?楽しみです。
助けていきたいのは山々なのですが、そんな隙を晒してゴーレムに不意打ちされるなんてもってのほか。
ジン様には申し訳ないですが、ゴーレムを倒すことを最優先事項にしましょう。
ゴーレムに向かってフェイントを何重にもかけながら蹴りを放ちます。
「ふっ!」
「ぬんっ!」
「止められましたか。やっぱり反応速度はピカイチですね」
が、巨大ゴーレムはその攻撃をしっかりと見切り、手で受け止める。
「今度こそ!・・・ってあれ?」
ゴーレムはカウンターとばかりに手を振りますが、その頃にはとっくに離脱済みです。
「隙だらけですよ!」
そして、その攻撃の後隙に私が後ろから蹴りを放つ。
「ぬっ!」
これだけして攻撃を与えても、全然ゴーレムのHPは減りません。
精々1%くらいでしょうか。
確かに100発打ち込めば勝てますが、私にも魔力の上限があります。時間制限はこちらの方が早く訪れるでしょう。
明らかにあのレベルの洞窟に置いていいようなボスの強さではない気がするのですが。
「えぇい!ちょこまかと!」
ゴーレムは私を捉えられず、私はゴーレムに対する有効打がほぼない。
完全に膠着状態に入ってしまいました。
「うえ〜、気持ち悪い」
ゴーレムの連打を避けながらどうすれば良いか考えていると、私の後ろから腑抜けた声が聞こえてきます。
「ジン様、腑抜けた声を出さないでください。戦闘中ですよ」
「いやいやいや、アルベリオンが助ければそれで済んだ話だろ?」
「あれくらい自力で抜け出せるようにしてください」
「はぁ、HP極振りでどうしろっていうんだよ」
そういえばそうでした。
ジン様はHP極振りでプレイして成功している唯一のプレイヤー。
彼ではあの素早い竜巻を避ける術を作ることはほぼ不可能でしょう。
・・・まあ、それを分かって言っているのですが。
ジン様が怒っている顔をこっそりとスクリーンショットして、アルバムに保存しておきます。
このことは一生黙っておきます。ジン様にバレたら何を言われるか分かったものじゃありません。
徐々にジン様は私に逆らえなくなっている気もしますが、それはそれ、これはこれです。
黙っておいて損はないでしょう。
「おい、戦闘中によそ見か?」
おっと、危ない。
ゴーレムが考え事をしている私に大きな拳を振り下ろしてきました。
私がジン様のコレクションを増やしているうちに攻撃してくるとは、なんて卑怯なんでしょう。
そんな卑怯者は私が倒さないといけませんね。
「ふっ」
私は軽い蹴りじゃ有効打を与えられないと判断して、その場から全力で飛び上がります。
その高さは50mほど。
「ぬ?なんだ?」
ゴーレムの身長と手の長さではこの高さまで攻撃が届きません。
なので、私は安全に空中で準備を整えます。
「む!?まずい!」
ゴーレムは今更その攻撃の危険性に気付いたのか、私を撃墜しようと竜巻を飛ばしてきます。
でも、気づくのが遅かったですね。
準備が終わった私は、自由落下に従いながらその竜巻に突っ込みます。
パアァン!
私に触れた瞬間、竜巻は弾け飛びます。
「っ!」
それを見たゴーレムは一瞬目を大きく見開きますが、すぐに腕を組んで自分の身を守ります。
ドガアアァァン!
私の足がゴーレムの腕にモロに攻撃を喰らわせます。
まるで隕石が落ちたようなクレーターを作るほどの衝撃と音を発生させることが出来ました。
「うおっ、なんだこの攻撃。俺が死んだらどうするつもりだったんだ?」
この攻撃の余波は物理攻撃なので、パーティーメンバーであってもダメージを与えてしまいます。
・・・が、ジン様はマップ端でイモイモしているので、この攻撃の余波が行くことはないでしょう。
ちなみに、私が何をしたかというと、自身をとにかく重く、硬く強化して高いところから落ちただけ。
私は体の一部を硬質化し、重量を変更するスキルを最初から持っていました。
私の攻撃がなぜあれだけ重いかというと、このスキル群をインパクトの瞬間に使用しているから。
今回はそれを全身に限界までかけてみました。
かなり魔力を使ったので、相当なダメージを与えていると嬉しいのですが・・・。
「くっ、なかなかやるな」
「あの攻撃を喰らってまだ動けるんですか?」
砂埃が晴れて、ゴーレムの姿が顕になります。
両腕ともが崩れ落ち、足もあの重量を支えたためか変な方向に曲がっています。
でも、動いているのに変わりはありません。
やはりこのレベルの洞窟のボスとして君臨するには強すぎます。
「私は、まだ、やれるぞ」
「そうですか?ならやり合いましょう!」
意地で立っているようにも見えるゴーレムに私はトドメとばかりに攻撃を決めに行きます。
「っ、危ない!避けろアルベリオン!」
ジン様がそう叫んだ瞬間、私の体は高速でフィールドの壁に叩きつけられました。




